|
電解水技術を応用した「ウィルスウォッシャー機能」
|
三洋電機の空間清浄システムの売れ行きが好調だという。なかでも、公共施設や企業、病院など、多くの人が集まる場所に設置し、広い場所の空気を清浄する業務用途での導入が促進されているという。三洋電機の空間清浄システムの高い評価を支えているのは、電解水技術を活用した「ウイルスウォッシャー機能」。これによって、脱臭、除菌、ウイルス抑制で高い効果を実現しているのだ。
● 公的機関が裏付ける技術
|
三洋電機国内マーケティング本部マーケティング統括部アメニティ企画部企画二課・内山浩幸課長
|
2007年12月13日、東京都は食品営業関係団体に対して、ノロウイルス感染予防の徹底を促す注意喚起を行なった。都内では、12月中旬までに約50件のノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎の集団感染が発生。全国規模でも同様に、ノロウイルスの感染が発生している。
「三洋電機の電解水技術が、ヒトインフルエンザ、鳥インフルエンザの抑制に対して有効であることが、公的研究機関との共同研究で明らかになった。ノロウイルスについても、代用ウイルスであるネコカリシウイルスを使用して、その抑制に高い効果があることがわかっている」と、三洋電機国内マーケティング本部マーケティング統括部アメニティ企画部企画二課・内山浩幸課長は語る。
これは、群馬県衛生環境研究所との共同研究によって実証さたもの。三洋電機の電解水技術がネコカリシウイルスの感染価を99%以上も抑制した、という試験結果が出た。
また、2007年12月には、英国で健康保護を目的に設立されたHPA(Health Protection Agency)において、電解水技術を利用した同社の除菌エレメント方式が、空気中に浮遊する細菌に対し、高い除菌効果があることが証明されたという。
こうした三洋電機の技術に対する公的機関の裏付けが、同社の空間清浄システムの効果を確かなものにしている。
|
|
|
鳥取大学との共同研究により、電解水を霧状にした「除菌電解ミスト」が、鳥インフルエンザの感染を抑制する効果を証明
|
電解水がノロウィルスの代用ウイルス「ネコカリシウイルス」に対し抑制効果があることも明らかになった
|
電解水に浸したフィルターに空気を通過させる「除菌エレメント方式」。イギリスの保健機関によって空気中に浮遊する細菌の除菌に高い効果があることが検証された
|
● Think GAIAを支える中核技術「ウイルスウォッシャー」
|
三洋電機のブランドビジョン
|
三洋電機は、ブランドビジョンとして「Think GAIA」を打ち出し、環境・エナジーの先進企業を目指している。これは、佐野精一郎社長が先頃打ち出した2010年度を最終年度とするグループ中期経営戦略「チャレンジ1000」においても変更はない。
ウイルスウォッシャー機能は、このThink GAIAを支える中核技術の1つであり、「水の力で、空気を洗う」という考え方のもとに開発されたものである。
ウイルスウォッシャー機能の基本技術ともいえるのが電解水技術である。塩化物イオンを含む水道水に電気分解を施し、ウイルスを抑制する「次亜塩素酸」と「OHラジカル」という2種類の活性酸素を生成。これらがウイルスのスパイクを破壊し、浮遊菌やカビ菌、花粉やダニのフン、死骸などのアレル物質、ニオイ分子を包み込んで除菌および脱臭を行なう。
「単に、臭いを吸着させるだけでなく、酸化分解による脱臭を可能としたことで、短時間に強力な脱臭ができるのが特徴」(内山課長)という。
タバコの臭いやペットの臭いをスピード消臭。アンモニア(し尿臭)では45分間で自然減衰に比べて65%もの消臭力を達成。トリメチルアミン(魚の腐敗臭)では90%、酢酸では60%。また、アセトアルデビド(青臭い刺激臭)では、100%の差をつけ、残存率を0にしている。
さらに、浮遊菌を約99%、浮遊カビ菌では99%を抑制。さらに、花粉では95%、浮遊ウイルスでは99.5%の抑制効果があるという。
電解水を活用して、空質を高めるのは、まさに「水の力で、空気を洗う」という言い方が当てはまる。
|
|
水を電解水へと変える技術
|
電解水が精製される原理
|
|
|
電解水は花粉やダニの死骸といったアレル物質、菌やウイルスなどに効果がある
|
タバコやペットのニオイも消臭できる
|
● 「水の力で、空気を洗う」技術とは
もともと三洋電機には、電解水を家電製品や産業機器に活用してきた経緯がある。
最初は、1987年に発売したカップ式飲料水の自動販売機での採用。深夜など使用されない状態が続いたときに、ノズルや管を洗浄する機能に電解水を利用した。また、2001年に投入した洗剤を使用せずに洗濯が可能な洗濯機にも電解水を利用し、除菌力を高めることに成功している。
「薬品を利用して洗浄するのではなく、水道水という、水の力を利用するために、安全・安心な技術」(内山課長)というのが電解水の特徴だ。
こうした長年に渡る電解水への取り組みの結果、電解水に最も重要だと言われる濃度コントロールの最適化を実現。さらに、電解水を含ませたエレメントに室内の空気を強制的に通し、循環させる「除菌エレメント方式」や、電解水状態を長持ちさせるためにミストとして部屋の隅々まで届ける「除菌電解ミスト方式」、タンク内の電解水を加湿フィルターが吸い上げ、そのフィルターに空気を通過させる「除菌フィルター方式」といった、電解水をより効果的に生かす独自方式を組み合わせることで、広い部屋などでも除菌効果を高めることに成功している。
据え置きタイプのVW-VF10Bでは、学校の教室の広さとなる約60平方mの広さでは、運転開始から約50分間で、90%以上の拡散物質を除去できるという。
● 空質向上が各方面から注目される理由
|
「VW-VF10B」などの業務用空間清浄システムは、病院や高齢者施設などで導入されている
|
空質向上に対する需要は、ここにきて、急速に高まっている。
ノロウイルスなどの蔓延もあるが、公共施設やサービス業においても空質が差別化策の1つになろうとしているからだ。
例えば、映画館。シネコンの増加によって、映画館の差別化競争が激化している。実は映画館では、臭いに対するクレームが意外にも多い。お菓子の臭いなどもその1つといえよう。映画館ではクレームへの対応策として、脱臭を行なうということにも乗り出している。あるシネコンでは三洋電機の空間清浄システムを導入。子供連れの映画ファンを誘導する施策の1つとして、これを訴求しているという。
また、オフィスや病院、医院などの医療施設などのほか、高齢者施設や介護施設、さらには、スナックやバーなどの飲食業、ネイルサロンや理容室でも、空質向上に向けて空間清浄システムに対する需要が増加している。
ある高齢者施設では、体力的弱者を守る目的で同社の空間清浄システムを11台導入。除菌やウイルス抑制、脱臭での効果が上々であるほか、コールセンターでもオペレータの快適な空間を維持するためにこれを導入した例がある。
「あるコールセンターでは、ひとりが風邪を引くと、それが連鎖的に広がり、顧客対応力にも影響がでるという問題があった。当社の空間清浄システムを導入したコールセンターと、そうでないコールセンターでは、風邪で欠勤するオペレータの数に大きな差が出た」という事例もある。
実際、三洋電機でも社内に空間清浄システムを導入しているが、導入したオフィスにおいては、風邪を引く人が減るという傾向が出ているという。
「空気は目には見えないが、多くの人が体感できるものでもある。その効果が、顧客満足の向上やサービス品質向上、社員の働きやすい環境の実現につながっている」というわけだ。
● 部門を越えた設計、開発に乗り出す
三洋電機の業務用空間清浄システムにおいて、もう1つ見逃せない動きがある。
それは、三洋電機の家庭用空間清浄システムと、業務用空間清浄システムとの事業部門間の連動が始まっていることだ。これが強い製品の創出を下支えしている。
残念ながら数年前までの三洋電機では、家庭用と業務用とでは、同じ空間清浄システムといっても、まったく異なる研究開発を行なっていた。拠点も、群馬、兵庫、鳥取などに分散しており、情報共有が難しかったといっていい。これが2005年7月以降、場所は離れていても、お互いに情報共有を開始するようになり、家庭用空間清浄システム部門が持つ技術と、業務用空間清浄システムが持つ技術を相互に連携するといったことも行なわれた。さらに、人的な交流も開始され、お互いのノウハウが活用されはじめている。
実は、内山課長も、もとは家庭用の洗濯機の部門に所属していたが、人事異動によって、業務用空間清浄システム部門へと異動してきた。
「最初は、お互いが言っていることが伝わらなかった」と、内山課長は当時を振り返る。「業務用製品は、こういう枠で作るという観点で話をするのではなく、業務用にも家庭用のいいところを持ち込んでいくべきということを、ここ1~2年でお互いに理解しはじめた」
業務用システムでありがらも、無機質な形状をやめ、デザイン性に配慮した外観にしたのも、家庭用のノウハウを活用したものだ。ロビーや待合室、ラウンジ、店舗などに設置することに配慮した上でのデザインだといっていい。また、コンセントの形状をL型にしたり、エレメントの色彩にこだわったり、蓋の持ち手の部分についても、家庭用空間清浄システムで培ったノウハウを採用していった。
内山課長が異動してから、業務用空間清浄システムでは、「30か所以上の改善提案が施された」という。
● ウイルスウォッシャーがあるから空気がきれい
|
2006年2月に発売した、業務用空間清浄システムの第1世代機「VW-VF8A」
|
現行の業務用空間清浄システムは、VW-VF8Aとして2006年2月に第1世代機を発売。2006年11月には改良を加えたVW-VF10Bを発売し、これまでに累計6,000台を出荷している。
業務用では、加湿機能を搭載したものはあるが、除菌機能を搭載したものが他社にはないことから、その点が三洋電機ならではの大きな訴求ポイントとなって売れている。
「日本は、安全と空気はただと言われてきたが、安全に続き、空気もただではないという時代がやってくる。それは、日本の空気が明らかに汚れていることからもわかる。セコムがあるから安心だ、と言われるように、ウイルスウォッシャーがあるから、ここは空気がきれいだ、と言われるように、このロゴを浸透させたい」と内山課長は大きな目標を打ち出す。
あえて、ウイルスウォッシャーのロゴを用意し、これを製品に貼付しているのも、こうした狙いが背景にはありそうだ。
まだ、ウイルスウォッシャーの認知度は、残念ながら低い。空質に対する需要が増大するなかで、三洋電機が、いかにウイルスウォッシャーを戦略的に訴求できるかが注目されることになりそうだ。
■URL
三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/
virus washer機能
http://www.sanyo.co.jp/vw/
virus washer 機能搭載機種 導入事例
http://www.e-life-sanyo.com/vw/case/index.php
空気清浄機/加湿器 関連記事リンク集
http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/air.htm
■ 関連記事
・ そこが知りたい家電の新技術 三洋電機 空気清浄機「ウイルスウォッシャー ABC-VW24」(2006/10/10)
・ 三洋、水で空気を洗う空気清浄機/加湿器/ファンヒーター(2007/08/03)
・ 家電業界デザイナーインタビュー 第3回:三洋電機(2007/12/19)
・ 三洋、「virus washer」搭載の新型空気清浄機を公開(2007/08/29)
2008/01/23 00:12
- ページの先頭へ-
|