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イノヴィス V6 CPS0305
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人によっては(特に男性だと)、一生使うことがないかもしれない家電が「ミシン」。私にとってのミシンは、パソコンに例えて言うなら、タブレットのような存在です。普段なくても生活はできるけれど、必要なときにないと、とても困る……といったイメージ。
先日洋服の補修をしようと久々にミシンを使おうと思ったら、狭い家のどこにもない……。で、壊れかけだったのを捨てたことにやっと気が付きました。そのときは、どうしてもその日に作業したくなり、「1万円あれば買えるだろう」とタカをくくって、持ち帰るつもりで量販店へ行ったんですが、実際はそんな値段ではまったく買えず、種類豊富にずらりと並ぶ各社のミシンを前にどう選んだらいいかわからなくなり、その場で30分以上悩んだあげく結局買わずに帰ってきてしまいました。
家電を購入するときにいつも苦労するのが、専門的なアイテムの知識をそのたびに理解する必要があること。「面倒くさい!」と思って調べないでいると、パンフレットに書かれている専門用語の意味すらわかりません。結局、考え疲れ、歩き疲れてデザインと値段で決めてしまうのがオチだったりします。
さて、今回はこの“ミシン”で悩みました。ミシンにも大きく分けて「電動ミシン」「電子ミシン」「コンピューターミシン」と3種類あり、それぞれ以下のような特長があります。
種類 |
特徴 |
電動ミシン |
フットコントローラーなどで電気を流す強さを調整することで、縫う速さもコントロールできるシンプルなミシン。2万円以下の安いものが多い |
電子ミシン |
ミシンの回転速度を電子制御し、縫うスピードをスライダーなどで調整できる。2万円前後で購入できるものが多い |
コンピューターミシン |
縫い目の長さや縫うスピードをコンピュータで制御するため、厚物縫いも楽にできる。自動糸調子や刺繍機能付きも選べる |
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価格は、電動ミシンがいちばん安く、次に電子ミシン、いちばん高いのがコンピュータミシンです。もっとも安いもので1万円前後、高いものは数十万円まであります。電動ミシンは1年に1~2回しか使わないならいいのですが、壊れた時に修理代の方が高く付いてしまい、使い捨てになるケースも多いようです。私が前に使っていたミシンがまさにコレでした。
電子ミシンやコンピュータミシンに搭載されている、自動糸通しの機能にとても惹かれました。メーカーによっていろいろと言い方は違いますが、要はミシン針の針穴をのぞき込む必要がない、ワンタッチで糸が通せる機能です。ミシンを使ったことがある人にしかわからないと思いますが、糸通しほど面倒なものはありません。私なら「あのイライラがなくなるならもう1万円出してもいい」と即答できます。すでに店頭で自動糸通しの便利さは体験済みだったので、これを搭載しているものしか選択肢として考えられなくなっていました。
個人的に引越を控えているため、刺繍などの豪華な機能まではいらないけれど、ベッドスプレッドぐらいまではしっかり作れるような、少し長持ちするものがほしい……と思い、とりあえずこの自動糸通しができる、縫い目がキレイなコンピュータミシンという条件で製品を探しました。
その結果見つけたのが今回の、ブラザー「イノヴィス V6」。自動糸通しができる「糸カセット」という機能を搭載したコンピュータミシンです。楽天市場の「ミシン一番」で、サイドカッター、替ボビン50個、32色の小型の糸セットが付いて、29,610円でした。
ミシンの型番は、ミシンの販売店や量販店など販売ルートによって同じ機能のミシンがいろいろな型番で売られているのですが、パネルが白の「イノヴィス B55」、茶色の「イノヴィス R1」、そしてピンクの「イノヴィス V6」の3つは、すべて「CPS03シリーズ」と呼ばれる同じもの。販売店によってサイドカッターやフットコントローラーなどのオプションが付いたり、保証期間の長さに違いがあるなどの差があるだけのようです。
● 「糸カセット」をミシンにセットするだけで自動的に糸が通る
実際に使ってみた感想を一言で言えば、「糸カセット最高! 自動糸切り超便利!」です。「糸カセット」を使うには、まず専用のボックスに縫い糸を入れて糸をボックスの周りにぐるっと回しておきます。これをミシン本体に装着すると、自動的に針穴に糸が通るというしくみ。最初はボックスの周りに糸を回すのに少し迷いますが、2・3回やると本当にぐるっと回しておしまい、ぐらいの手軽さです。また、下糸は水平がまの「下糸クイック」の機能を搭載していて、台を開けて奥深くまで手探りでボビンをセットするような手間がなく、こちらも糸を溝に沿って置くだけでOK。
ミシンをたまにしか使わなくなってしまう原因の1つが、なにを置いても「糸通しがめんどう」なこと。上糸を順番にセットし、ミシン針の穴をのぞき込みながらやっとの思いで糸を通す。さらに下糸を外釜になんとかセットして、試し縫いで糸調子を確かめる……という一連の作業が本当にめんどうなのですが、この「糸カセット」と「下糸クイック」の機能があると、糸を変えるのが本当に楽です。
● ノーマークだった「自動糸切り」の便利さに感動
そしてもう1つ、使ってみたら「糸カセット」並みに便利で二度と手放せないと思った機能が「自動糸切り」。縫い終わりに「自動糸切り」のボタンを押すと、ミシンが適切な場所で糸をカットしてくれるので、ミシンから布を離すのがとても楽。縫い終わるたびにハサミに持ち替えてカットする必要がなく、作業の効率が格段に上がります。
また、コンピュータミシンは電動ミシンと違ってミシン針の止まる位置が制御されているので、どこで縫い終わっても針は下がった状態で止まります。通常、直線を1本縫って終わり、ということは少なく、たいていは布の角や折り返しでストップさせるので、そのまま布を回転させられてとてもスムーズです。
縫い終わりの時は、「針上下」スイッチを押して針を上げて「自動糸切り」スイッチを押せば、上糸と下糸が同時にカットされます。従来のように糸を長めに引き出して切ることもないので、糸も無駄になりません。
縫い始めと終了は、本体前面にある「スタート/ストップ」スイッチを使います。スピードは「ゆっくり~はやく」までのスライダーで調整。オプションでフットコントローラーも取り付けられますが、私の場合は畳+机で使っているため必要ありませんでした。フットコントローラーでの操作に慣れている場合や、キルティングやパッチワークなどで本格的に長時間使う場合は、フットコントローラーの購入がおすすめです。
● 縫い模様はボタンホールを含む12種類で必要十分
利用できる縫い模様は12種類。各種の直線縫い、伸縮ぬい、ジグザグ、たち目かがり、まつりぬい、3重ぬい、ボタン穴かがりなど実用的な12種類で必要十分です。縫い模様によって「押さえ」が違うので、縫い目マークの近くに書かれているA/G/I/J/Rの記号に合わせて添付されている5種類の押さえを差し替えます。この取り外しも「押さえホルダー」の後ろの黒いボタンを押すだけでOKと簡単なもの。
このほか、返しぬいや止めぬいが簡単にできる「返しぬい」スイッチ、筒縫いのとき便利な、取り外しできる「フラップ」、簡単に下糸巻きができる「下糸巻き装置」なども搭載。職業用ミシンなどと比べたことはないので縫い目の美しさなどは比べられませんが、返しぬいで後ろに縫うとき少し気になるぐらいで、縫い目は十分キレイ。個人的に残念に思うのは、ケースがハードタイプではなく、上からかけるカバーしかないことくらいで、この機能で3万円弱なら十分納得行く価格だなというのが正直な感想です。
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縫い目の種類は12種類。矢印でキーを合わせ、「J」や「G」など対応する押さえをチェックします
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付属する押さえは5種類。縫い目に合わせて付け替えます
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ボタンホール用の押さえを使えば、セットしたボタンの大きさに合わせて、ミシンが自動的にボタンホールの大きさを調整します
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筒物縫いの時は、手前のフラップを外してアームを延ばし、バランスを良くしてから使います
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カバーは上からかぶせる布タイプ。サイドにポケットがあるので、電源コードの収納も可能
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マニュアルのほか、基本的な使い方が解説されているビデオも付いています
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ただ、もうちょっと上のグレード……たとえば5~6万円のミシンから削られている機能ももちろんあります。たとえば、洋服を生地から仕立てたり本格的に手作りする方なら、このミシンだと「ステッチが足りない」と思うでしょうし、お子さんがいる方だと手作りバックなどに名前を入れるために「アルファベットの刺繍機能がほしい」と思うでしょう。「自動糸調子」の機能を搭載している機種なら、糸のつりも気にする必要がないですし、10万円以上する液晶モニターを搭載している機種であればナビゲーションもしてくれます。このあたりは、用途と予算に応じて選ぶことになるのだと思いますが、どれを選ぶにしても、私の場合は便利さがあまりに違うので、もう電動ミシンや電子ミシンに戻ることはないだろうなと思います。
この「イノヴィス V6」の特長は「実用的な機能を快適に使える」というところ。電動ミシンに2万円出すなら、「糸カセット」や「自動糸切り」のためにもう1万円プラスする価値は十分ありますよ。
■URL
ブラザー工業株式会社
http://www.brother.co.jp/
■URL
製品情報(PDF)
http://www.brother.co.jp/pub/j-hsm/catalog/v6.pdf
2007/03/26 00:06
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