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そこが知りたい家電の新技術
ナショナル「ななめドラム洗濯乾燥機」

~ななめドラム誕生から、ヒートポンプ搭載まで
Reported by 清水 理史

 洗濯物が取り出しやすいように、ななめに配置されたドラム、乾燥の仕上がりの良さと省電力性を兼ね備えるヒートポンプ。数々の新技術をはじめて世に送り出すことで、現在の洗濯乾燥機のトレンドを作ってきたナショナル。

 2006年9月に新型ヒートポンプを搭載したななめドラム洗濯乾燥機「NA-VR1100」を発表したが、この製品はななめドラムの洗濯乾燥機としては、初代から数えて4代目となる最新モデルだ。初代ななめドラム洗濯乾燥機を開発したきっかけやこれまでのモデルの技術的な進化の課程について、開発担当者に話を伺った。





他社にはないドラム洗濯乾燥機を作りたい

NA-VR1100
 2003年に発売され年間約20万台もの販売を記録するヒット商品となった松下電器産業の「NA-V80」。それまで縦型が当たり前だった洗濯機の世界に「ななめドラム」というスタイルを提案した画期的な洗濯乾燥機だ。

 2003年以前にも、いわゆる欧米でよく見られる横型のドラム洗濯乾燥機は存在した。ドラム型のメリットは、洗濯に利用する水が少なくて済むこと、そして乾燥の効率が良い点にある。ドラム型の場合、ドラム内で上から衣類を落としながら風を通すため、乾燥作業の効率が良い。洗濯だけでなく、乾燥まで含めて洗濯と考えた場合、ドラム型を選択するメリットが高いというわけだ。

 しかし、その一方で、ドラム型は真横から洗濯物を出し入れするため、腰を曲げて作業しなければならないという面倒さがあった。これを解消するため、2003年前後には他社からトップオープンで上から洗濯物を出し入れするタイプのドラム型洗濯乾燥機も登場したが、ナショナルが打ち出した回答はこれとは異なるものだった。

 松下電器産業 商品企画グループ ランドリーチーム主事の斎藤克哉氏は、当時を振り返りながらこう語った。「当時、ドラム型の開発を進める中で他社との差別化を図りながら、しかも洗濯物の出し入れをしやすくする必要性がありました。そこでたどり着いたのがドラムをななめに配置するという発想でした」。ななめドラムの誕生の瞬間だ。


電気洗濯機の普及と、全自動洗濯機の普及には、それぞれ20年ずつかかっている。次の20年は「ドラム式洗濯乾燥機だ」と斎藤氏は語る 洗濯乾燥機の時代を牽引役として、ななめドラムを開発したという ナショナルがななめドラムに先んじて、発売したドラム型洗濯機「NA-SK600」。市場には受け入れられなかった

ななめにドラムを配置することの難しさ

松下電器産業 商品企画グループ ランドリーチーム主事の斎藤克哉氏
 とはいえ、ドラムをななめに配置することは技術的な苦労も多かったと言う。縦型や横型ドラムと異なり、ななめドラムは当然のことながら回転軸がななめになるため、振動を抑える必要があるからだ。

 従来の横型のドラム式洗濯乾燥機は、スプリングで上からドラムをつり下げる構造を採っていたが、回転軸がななめになるななめドラムは、同じ方法は使えない。そこで、初代ななめドラムの「NA-V80」では、軽自動車に搭載してもおかしくないような高性能のダンパーとサスペンションを利用し、上だけでなく、下からもドラムをささえるような構造を採った。これに加えてドラムの脱水回転の運転制御を最適化し、振動を抑えることに成功したという。

 技術的な課題はこれだけにとどまらなかった。回転によるねじりや、洗濯物同士の摩擦で、洗濯物の汚れを落とす縦型洗濯機に対して、ドラム型は上から洗濯物を落として、叩き洗いをする。この洗濯方法の違いにより、試作段階で思ったような洗浄性能が得られないことがあったという。ドラムの角度、回転制御、洗剤溶液の濃度などを試行錯誤した。

 このほか、従来の縦型洗濯機で培ったノウハウをどのようにななめドラムに投入するかも苦労したという。たとえば、同社の製品には、縦型洗濯機の時代から、事前に洗剤を泡立てから洗濯する「泡洗浄」という技術が採用されている。事前に泡立てることによって洗浄効率を上げ、洗濯時間を短縮しようというのがその狙いだ。これをななめドラムで実現するために、ドラムの裏側にフィンを付け、その回転によって洗剤を泡立てるようにしたり、ドラムの回転を細かく制御することで洗剤をうまく泡立てることに成功したという。


アイデア自体はあったが、実現が難しかったヒートポンプ

ヒートポンプを、このスペースに入れることが大きな技術的課題だった
 初代のNA-V80の発売から1年後となる2004年後、単機種から3機種へとラインナップ化された2代目のNA-V81/V61/S61へと進化する。このモデルは、初代機からのフィードバックを元にした言わば改良版で、乾燥容量のアップを目的にドラムの容積を向上したり、メンテナンス性を向上させるために乾燥フィルターを前面から取り外せるようにするなど、基本性能の向上を図っている。

 そして、2005年に世界初となる画期的な技術「ヒートポンプ」を採用した3代目の「NA-VR1000」が登場する。ヒートポンプは、いわゆるエアコンの技術を応用したもので、湿った空気を熱交換器で急速冷却によって結露させて除湿。この除湿によって発生した熱で、除湿した空気を暖めて再び乾燥に利用するというものだ。ヒーター方式の乾燥と比較して、低い温度で乾燥できるために衣類の縮みを押さえた自然な乾燥ができること、さらに熱を循環させるその仕組みにより、省電力性が高いのが特徴だ。

 しかし、このヒートポンプのアイデア自体は、初代のななめドラム洗濯乾燥機が登場する以前からあったという。ヒートポンプは、乾燥機の技術としてななめドラムとは別のプロジェクトとして開発がすすめられていた。ほぼ同時期に開発が進められていた初代のななめドラム洗濯乾燥機には、背面のドラムの下側のスペースに余裕があったため、ここに搭載することも検討されたが、開発当初のヒートポンプユニットは、熱交換器、コンプレッサーともにサイズが大きく、無理に収めるとサイズや使い勝手が犠牲になったり、ドラムの重心が高くなって振動の吸収が難しいなどの課題があった。

 開発陣はヒートポンプの配置、配管経路を見直し、「エアコンの応用ではなく、洗濯機に最適化した」小型のヒートポンプを開発。本体の背面下にちょうど納まるサイズのユニットに仕上げた。「全社で組織改編に取り組み、事業部の壁が取り払われたことが大きい。今まででは考えられないスピードで、他の事業の技術となるヒートポンプを洗濯機に取り込めた」と斎藤氏は振り返る。


初代ななめドラム洗濯乾燥機「NA-V80」 NA-V80の内部ユニット

2代目ななめドラム洗濯乾燥機「NA-V81」 NA-V81の内部ユニット

ヒートポンプを初めて搭載した「NA-VR1000」 NA-VR1000の内部ユニット。ヒートポンプから空気を循環させるパイプが追加されている

2006年11月に発売された現行モデルとなる「NA-VR1100」 内部空路をレイアウトし直した

【動画】ヒートポンプの原理。洗濯乾燥機に入ったものは、エアコンでいうと、室内機と室外機がセットで搭載されている形になる(WMV形式, 583KB 資料提供:松下電器産業) 【動画】ヒートポンプ動作時のイメージCG(WMV形式, 2.69MB, 資料提供:松下電器産業) 【動画】ヒートポンプで除湿された水が滴る様子(WMV形式, 832KB, 資料提供:松下電器産業)

そしてヒートポンプ専用に設計されたNA-VR1100へ

左から、ヒートポンプ試作機、NA-VR1000搭載のもの、NA-VR1100搭載のもの
 このように、洗濯乾燥機として世界で初めてヒートポンプを搭載したNA-VR1000だが、それでも初期のヒートポンプには改善の余地があった。

 NA-VR1000は、その筐体をヒーター式乾燥のモデルと共有する必要があったため、ヒートポンプに適した構造とはいえなかった。たとえば、ヒートポンプユニットに空気を送り込むためのファンを背面上部に配置せざるを得ず、空気を押し込むような格好となっていた。また、エアフローの問題で熱交換器にななめに空気が当たる関係で、その分、大きな熱交換器を搭載せざるを得なかった。

 これに対して、現在、発売されている最新のヒートポンプななめドラム洗濯乾燥機「NA-VR1100」では、ヒートポンプに最適化された構造が採用されている。具体的には吸気ファンを底面の熱交換器前面へと移動し、エアフローを最適化。これによって、熱交換器の性能をフルに活かせるようになり、省エネ、静音性の向上へとつながった。

 実際、試作段階、初代のヒートポンプ(VR1000用)、最新のヒートポンプ(VR1100用)と比較してみると、かなりの大きさの違いに驚かされる。こうした心臓部の地道な改良により、NA-VR1100では乾燥時間を145分と従来モデルの190分から大幅に短縮、さらに消費電力も1,450Whと、2,000Whが一般的なこのクラスの洗濯乾燥機の中で、群を抜く省エネ性である。

 もっとも、NA-VR1100の進化ポイントはヒートポンプユニットだけではない。車でいう“エンジン”がヒートポンプだとすれば、“足回り”は、ドラムユニットなど駆動部だ。ドラムユニットをささえるダイキャストフレームを強化し、回転数を上げたほか、回転の制御も微調整し、さらに脱水効率を向上させた。“エンジン”から“足回り”までほとんどの部品が、設計し直されている。

 また、ドラムそのものも、内部表面にディンプル加工を施し、乾燥中に洗濯物がドラムに張り付かないような工夫が施されている。こうした細かい改善を重ねて、スピードアップと低消費電力につなげたというわけだ。

 洗濯機はこれまで、二槽式から、全自動と、20年周期で新技術の登場から普及へというサイクルを繰り返しているが、ドラム型洗濯乾燥機がこれからの20年を担う存在と言える。そう考えると、誕生したばかりのドラム型洗濯乾燥機が、これからどのように進化していくのかが、ますます楽しみなところだ。


左がNA-VR1000、右がNA-VR1100のドラム 細かい突起を設け、叩き洗い効果や乾燥時に濡れた洗濯物が剥がれやすくなるように改良した 駆動系の部品も仕上がりスピードの向上や低騒音化のために設計し直されている




URL
  ナショナル(松下電器産業株式会社)
  http://national.jp/
  ニュースリリース
  http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn060928-2/jn060928-2.html
  製品情報
  http://ctlg.national.jp/product/info.do?pg=04&hb=NA-VR1100

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ナショナル、ヒートポンプ式ドラム洗濯乾燥機を高速化(2006/10/02)


2007/01/10 00:00

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