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【創刊特集】白物家電業界 キーパーソンに聞く
第1回:松下電器産業 ナショナルアプライアンスマーケティング本部 本部長 高見和徳氏

Reported by 大河原 克行

 いま、白物家電が面白い。

 冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど、主要な生活家電は、高い普及率を誇り、新規の需要開拓は見込めない、いわば飽和状態となっている。だが、最先端技術を採用した高付加価値型の製品の登場によって、ここ数年、家電製品の話題性には事欠かない。そして、こうした高付加価値型製品の相次ぐ登場が、我々の生活をより豊かなものへと発展させているのは間違いない。

 では、なぜ、こうした意欲的ともいえる家電製品が、国内家電メーカーから相次いで登場しているのだろうか。家電Watchの創刊にあわせて、国内主要メーカーの家電事業トップに、各社のものづくりへの取り組み、そして各社の白物家電事業戦略を聞いた。

 第1回目として、松下電器産業のナショナルアプライアンスマーケティング本部・高見和徳本部長にご登場いただく。


「上期の出来は、上出来」

松下電器産業株式会社 ナショナルアプライアンスマーケティング本部 本部長 高見和徳氏
――今年度上期、白物家電市場全体が低迷するなか、ナショナルの好調ぶりが際立っていましたね。自己評価はどうですか。

高見 ひとことで言えば、「上出来」です(笑)。

――強気の自己評価ですね(笑)。

高見 いや、もちろん危機感はありますよ。ただ、上期という点だけで見れば、ほぼ思い通りの結果となった、という意味です。

 ポイントは、2つありました。1つはエアコン。昨年夏の猛暑でエアコンが売れた反動が見込まれ、市場全体の前年割れを想定するなかでどんな手を打つか。実は、松下電器は、量販店でのシェアが満足できるレベルにはなかった。つまり、このルートでの販売シェアを増やせば、エアコン市場全体が落ち込んでも、一定の売り上げを確保できる。ここに力を注ぎました。

 そこで、昨年秋から半年をかけて、量販店ルートにおけるエアコンの販売シェアを増やすための努力をしてきた。また、松下電工とのコラボレーションによる新たなルートの開拓、地域販売店などの専門店ルートでの販売支援などにも取り組みました。

 こうした販売店との強力な関係を築いた上で、お掃除ロボット機能を搭載した強い商品が投入できた。結果として、4~8月は、業界全体が2%減と前年割れとなっているなかで、当社は前年同期比2ケタ増という大幅な成長を遂げることができた。これが1つめの要素です。


「新・子育て家電」のキャッチフレーズでヒットした「NP-BM1」
――もう1つはなんですか。

高見 食洗機(食器洗い乾燥機)です。もともと当社が高いシェアを持っている市場ですが、当社を含めて市場全体が低迷していた。そこで、発想を変えて、女性によるプロジェクトチームを立ち上げた。マーケットリサーチから製品企画、プロモーションまで、このチームが中心になって考えた。

 その結果、辿り着いたのが「新・子育て家電」という発想です。忙しい主婦に家事の手間を少しでも減らしていただき、その分、子供と一緒にいる時間を長くしてもらいたい。食洗機は、それを実現する商品なんです。このコンセプトが、市場から高い評価を得ました。業界全体も27%増という伸びになったが、当社は71%増というさらに高い伸びを見せています。

 いずれも、昨年秋から時間をかけて、じっくりと準備をしてきたことが成果につながったと思います。


――上期は、どの分野でシェアを引き上げましたか。

高見 ざっと見たところで、冷蔵庫や洗濯機をはじめ、主要な8ジャンルではすべてシェアを引き上げています。

――成功した理由はなんですか。

高見 マーケティング上の観点からいえば、松下電器が持つ技術を活かした商品を、お客様にお伝えすることができた。昨年11月、「発明BIG3」というキャンペーンをやりました。

 冷蔵庫に搭載しているコンプレッサー、エアコンのお掃除ロボット、洗濯機のヒートポンプという技術をお見せするために、商品のスケルトンモデルを特別に作り、これを東京と大阪でそれぞれ展示しました。これが予想以上の反響を呼んだので、同様のイベントを、今年5月にも行ないました。

 松下電器には、さまざまな技術がある。それをお客様の生活のために少しでも役立たせたい。そうしたメッセージを発信できたと考えています。


5月に東京駅で行なわれたキャンペーンの模様

「ファンヒーターの事故が、会社をひとつにした」

 そして、なににも増して、強い商品が揃ってきたことが大きい。V商品をはじめとする多くの商品に、松下電器ならではのブラックボックス技術を搭載し、ユニバーサルデザイン、環境・省エネという観点からの工夫を反映した。事業部が大変な苦労をして開発した商品が、市場で競争力を発揮したといえます。

 また、昨年のFF式ファンヒーターの問題で、松下電器社内には強い危機感があり、それが、社内の一体感を生んだことも見逃せない。とくに、ナショナルブランドの商品を担当している我々にとって、致命傷ともいえる事件が発生した。どうしたら、これを挽回できるのか。その努力が、強い商品の創出につながったといえます。

――成功体験が続いたことによって、社内に安心感が蔓延したということはなかったと。

高見 社内の気が緩む原因は、トップにある。その部門の責任者が止まったり、安心した時に気が緩むんです。松下は、確かに数字の上では成功している。だが、それを見た他社は必死で挽回しようとしている。気を緩めるようなことがあっては、すぐにひっくり返されてしまう。今、それを社内に徹底しています。

――松下電工とのコラボレーションの成果はどうですか。

高見 徐々に成果があがっていますが、これだけに留まるとは考えていません。オール電化という戦略のなかで、電工とのコラボレーションの効果はまだまだ発揮できますし、家まるごとソリューションという提案も可能になる。

 現在、専門店を対象に、リフォームパートナークラブという制度を開始しています。松下電工の工事部隊と連携して、エコキュートなどの製品群を柱に、オール電化の提案を積極化している。

 松下電工には、全国70カ所のリビングショールームがあります。こうした場を活用するといったことも可能になります。松下電器グループとしての相乗効果をさらに追求していきたいですね。


「ものづくりの論議も、すべて“エコ&UD”をもとに行なう」

「使いやすさ」を最重要視して開発された新型の冷蔵庫
――いよいよ年末商戦を迎えようとしています。下期の具体的なポイントはなんですか。

高見 キーワードをあげるとすれば、「ユニバーサルデザイン(UD)」、「環境・省エネ」をベースとしたものづくりです。我々のものづくりを、もう一回、この原点に戻そうと考えています。

 これは、中村邦夫会長が常々言っていることですが、「ナショナル商品の基本は、環境・省エネの追求にある」と。

 そして、V商品の条件の1つにも含まれている「UD」の追求も大切な要素です。こうした家電商品における、ものづくりの基本に立ち返るとともに、それにあわせて、すべてのやりかたを一から考え直すつもりです。

 ものづくりの論議も、すべて「エコ&UD」をもとに行なう。マーケティング施策も、社内や販売店向けの研修会のやりかたも、「エコ&UD」で展開する。もちろん、お客様へのメッセージや、テレビCMなども「エコ&UD」で発信するというわけです。

――すべての家電商品がこの対象になるのですか。

高見 そうです。ただ、それぞれに伝えやすいものがある。例えば、エアコンは、UDとエコの両方で発信ができるが、洗濯機はエコのメッセージの方が伝えやすいだろう、冷蔵庫はUDの方がいいだろう、というように区分けができます。


「ナショナルブランドの製品は、徐々に浸透させていく」

伝統ある「エレック」ブランドを「3つ星ビストロ」へと改めた
――課題となる部分はありますか。外から見ていると、電子レンジの事業拡大は1つの課題のように見えますが。

高見 ご指摘のように電子レンジは、これまで約40年間使用した「エレック」というブランドから、「3つ星ビストロ」という新たな愛称へ変更し、新たな挑戦を開始しています。

 まず、この秋に投入した最初の製品で、家庭で本格的な料理ができるということを知ってもらうことに力を注ぎたい。それをベースに戦略を練っていく考えです。パナソニックブランドの商品が一気にブランドを立ち上げるのと違って、ナショナルブランドの商品は、徐々に浸透させていくという手法が的確です。

 本格料理を家庭で作るという新たな文化を育てながら、このブランドを市場に定着させていきたい。それと、もう1つ、私の立場からいえば、販売/マーケティングの精度をさらにあげていくことが課題です。

――販売/マーケティングの精度とは。

高見 上期を振り返ると、ほとんどの商品が上振れしたが、上振れしたからいいというものではない。適正な在庫を持ち、機会損失がないという高い精度でのマーケティングを実現しなくてはならないですね。

 在庫をさばくために販売奨励金を積んで、事業部にしわ寄せを及ぼし、商戦を乗り切るというのは決していいやりかたではありません。その点でも、販売/マーケティングの精度を高めていくことが課題です。

 それと、もう1つは、じっくりと時間をかけた準備をすることです。今年9月の段階で、すでに来年秋に投入する新製品の具体的なプランの話をはじめている。昨年までは、半年先まででしたが、今年はこれが1年先を準備する体質へと変わってきた。これだけの期間をかけて準備すれば、さまざまな手が打てる。技術、商品、マーケティングというあらゆる角度から成果を発揮できると考えています。

 ナショナルは、去年よりも今年、今年よりも来年というように、進化を遂げていきますよ。





URL
  ナショナル(松下電器産業株式会社)
  http://national.jp/


2006/10/02 00:01

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