太陽電池市場は拡大続けるも低価格化が著しい――富士経済調べ

2012年の太陽電池市場、出力ベースで21%増、金額ベースで25%減

 富士経済は、太陽電池関連の世界市場について調査を実施した。それによると、太陽電池は世界的に拡大を続けているものの、低価格化が進み金額ベースでの市場は縮小傾向にあるという。富士経済では、2030年の太陽電池市場の予測として、日照条件の良いアフリカ、中東、南米、東南アジアなどでの需要が拡大するとみている。

 2012年の太陽電池の世界市場を見てみると、出力ベースで21%増、金額ベースで25%減を見込む。

太陽電池の世界市場(モジュール出荷ベース調べ)

 マイナス要因としては、これまで太陽電池市場全体をリードしてきた欧州市場において2011年後半からFIT(固定価格買取制度)の引き下げや、公的補助金の削減が相次いだことを挙げる。

 その一方、太陽電池の優遇政策の導入を進める中国、太陽光発電システムにとって良好な条件が整っているアメリカやインド、FITが開始された日本などでの需要は拡大しており、短/中期的みると出力は順調に拡大し、2030年では128,600MWを見込む。

 金額ベースでは、在庫量の増加と原料安などの製造コスト低減による縮小を予測する。これは需要に対する供給量が多すぎるため、価格競争が激化しているもの。特に、結晶シリコン太陽電池では、生産量増加を見越してポリシリコンの生産を増強したものの、需要が思ったよりも伸びず、ポリシリコンの価格が下落。これにより、結晶シリコン太陽電池の価格が下がり、これまで価格の安さで対抗してきた薄膜シリコン太陽電池やCIGS太陽電池の価格も押し下げられる流れになっているという。

 富士経済では、2009年の太陽電池市場においても、出力ベースで拡大しているのにも関わらず、金額ベースで縮小しているという事態に見舞われたことを指摘。これはスペインでのFIT制度改正により太陽電池の価格が半値近くに下落したためだったが、この価格下落によって太陽電池の市場が高成長したという見方もあるとして、2012年度以降の太陽電池の需要喚起を期待している。

 また、これまでの市場成長はFITなどの優遇政策に支えられていたことも指摘。先進国では、優遇制度が後退しつつあるものの、太陽電池の普及が進んだことで、価格競争力も高まっている。今後は、経済的優遇措置政策に依存せずに、太陽電池の自律成長を促す方策が必要だとしている。

 2020年から2030年にかけては、経済成長や生活水準の向上による莫大なエネルギー需要の増加が予測される新興国での需要拡大を見込む。特に日照条件の良好なアフリカ、中東、南米、東南アジアでの需要を期待しており、市場見込みとしては、2012年比で2030年には出力ベースで3.2倍の128,600MW、金額ベースで51%増の4兆5,520億円を予測する。

高効率型太陽電池の市場が拡大

 太陽電池の種類別では高効率の「n型単結晶シリコン」に注目する。これは低価格が進む結晶シリコン太陽電池の一種でありながら、高効率で、高付加価値のある製品のため、多くの企業が開発に着手しているという。製造コストは従来よりも増加するものの、n型の製造には技術力が要求され、低価格化競争に苦しむ日系の企業にとっては「光明を見いだせる」分野であるとしている。特に面積制約が厳しい住宅用用途でのニーズが強く、今後は市場での比率も上昇すると予測しており、2030年予測では2012年比500%の15,000MWを見込んでいる。

高効率n型単結晶シリコン太陽電池(モジュール出荷ベース)

日本市場においても安価な海外製品が拡大

 一方、日本の太陽電池需要においては、FIT施行の恩恵により、2012年は産業用太陽電池の大幅な市場拡大を見込む。2011年のシェア上位5社は全て国内企業が占めており、シェアも全体で8割を占めるが、低価格モデルを武器にした海外企業のシェアも17%と年々増加している。

国内太陽電池市場(モジュール出荷ベース)

 これまでは、産業用の太陽電池は公共案件や電力会社の太陽光発電所案件が中心だったため、ほぼ国内企業に限られてきたものの、2012年のFIT導入により、発電電力の収益性に着目する見方が多くなり、安価なアジア製品への関心が高まっている。これにより、2012年の海外製品の構成比は24%まで上昇するとみている。






(阿部 夏子)

2012年9月18日 15:41