パナソニック、節電本部を7月1日付けで新設

~午前4時35分始業のグループ会社も

全社横断型組織として節電本部を新設

 パナソニックは、2010年度の環境活動実績、新たな環境技術などをテーマとした「エコアイディアレポート201」を発行。同社における今年度の環境および節電への取り組みを明らかにするとともに、7月1日付けで、全社横断型組織として節電本部を新設することを発表した。環境本部長である宮井真千子役員が兼務で本部長に就任する。

2010年度の環境活動実績、新たな環境技術などをテーマとした「エコアイディアレポート201」節電本部 本部長に就任した宮井真千子役員

 節電本部では、今後予想される恒常的な電力不足に対応し、省エネによる生産性向上や経営体質の強化を加速することを目指すという。東京電力および東北電力管内での15%削減を目標としているほかは、明確な目標値は設定していない。

 具体的な取り組みとしては、工場およびオフィスにおいては、自家発電の新規導入、診断チームによる震災対応の省エネ診断の実施と即日提案、PC省エネ設定プログラムの全社一斉自動配信などのほか、ショールームでは展示照明の間引き、大型映像ビジョンの消灯などを行なう。

 また、勤務形態においては、電力使用制限時間帯からの勤務時間のシフト、始業時刻の変更、フロア一斉閉鎖による在宅勤務および直行・直帰の推進、夏季休暇のシフト、土日休日振り替えなどを行なう。さらに職場や家庭においては、節電ポータルWebサイトを開設。家庭および職場で実践できる節電ノウハウの情報を提供したり、節電に関する設問を含む「環境eテスト」の実施に取り組む。節電ポータルWebサイトは英語版も用意し、全世界に発信する。

震災以降の節電意識の高まりを受け、パナソニックでは全社で節電に取り組む全社横断の節電本部設立により、ピークカットの確実な達成、経営体質の改善を全社に展開していく工場やオフィス、働き方、従業員の職場・家庭の3つで具体的な取り組みを行なう
パナソニック 役員 環境本部本部長の宮井真千子氏

 「全社での節電の取り組みを一元管理するタスクフォース組織となる。一過性のものとして捉えるのではなく、中期経営計画のGT12の最終年度となる2013年3月まで継続させる。施設、人事、労政、総務、生産革新、環境などの全社節電関連部署の実務責任者十数人で構成するもので、全社一律ではなく、地域や事業特性などの状況を鑑み、ドメインがそれぞれに具体的施策を推進し、政府要請によるピークカットを確実に達成する」(パナソニック 役員 環境本部本部長の宮井真千子氏)という。

 インダストリー営業本部では、8月6日~21日までフロアを一斉閉鎖し、在宅勤務や直行・直帰を推進。パナソニック電工の新潟工場では、午前8時50分の始業時間を午前4時35分始業あるいは午後4時始業にシフトするといった取り組みを行なう。「東京電力および東北電力管内においては7月1日から実施するものが多い」という。また、省エネ診断は、2007年度から各拠点で実施してきたが、東京電力および東北電力管内において、強化する形で再度診断を行なうという。

 自家発電システムは、すでに東京電力、東北電力管内の5つの製造拠点に導入していることを明かしたが、今後の具体的な計画については公表しなかった。

2010年度は3,518万トンのCO2削減

 一方、2010年度の環境成果については、「CO2削減への貢献」、「資源循環への貢献」、「エナジーシステム事業規模」、「環境配慮No.1商品売上比率」の4つの項目すべてに関して順調に推移していると総括。2010年度は3,518万トンのCO2を削減し、「取り組みの初年度としては順調に進捗になっている」(パナソニック 役員 環境本部本部長の宮井真千子氏)とした。

 2011年度は、CO2イタコナ活動(板や粉といった材料にまで遡ってCO2削減を行なうこと)の全社横展開や、省エネ・創エネトップランナー工場の展開、海外拠点を中心とした省エネ診断、省エネ専門人材の育成に取り組むほか、新たに「工場省エネ事例(虎の巻)」の全社横展開、パナソニック版のCO2見える化システム「P-FEMS」の社外展開を図る。

 また、資源循環への貢献では、全社での資源投入量は約450万トンとなり、そのうち再生資源使用率は13.6%に到達。中期経営計画「GT12」で掲げた目標値の12%超を初年度から上回る結果になったという。「木材での再資源利用が進んだ。独自の木材グリーン調達ガイドラインに基づく再生資源を定義し、これにより活用を加速した。また、設計での軽量化のほか、生産での資源ロスを徹底的に削減した」という。

生産活動を商品を通じたCO2削減に貢献。2010年度は3,518万トンのCO2を削減できたという徹底的なCO2削減を進めるために生産活動においても、省エネ体質を推進している全社での資源投入量は約450万トンとなり、そのうち再生資源使用率は13.6%に到達。

 環境配慮No.1商品に関しては、2010年度には環境に優れたダントツGP(グリーンプロダクツ)の売上げ比率が10%に到達。2018年度にはこれを30%に引き上げる計画を改めて強調した。

 「2010年度以降はダントツGP認定基準を強化し、業界ナンバーワン状態の期間の維持、継続する。新たな基準においても2010年度は338機種のダントツGP製品を投入した」という。

 そのほか化学物質による環境負荷の最小化や、生物多様性保全にも取り組んでいる。

消費電力の少ないテレビやエアコン、また燃料電池や太陽光発電システムなどの製品にも力を入れている環境配慮に優れたダントツGP(グリーンプロダクツ)の売上げ比率が10%に到達。今後はさらなる売上比率の増加に注力するという化学物質による環境負荷の最小化への取り組み

 さらに、2011年5月30日付けで、中国に家電リサイクル工場として、杭州松下大地同和頂峰資源循環有限公司を新設したことに触れ、「急拡大する中国の廃家電の動きを捉えたもの。初年度に53万台を処理し、2015年には約100万台を処理する予定」だとした。

省エネ支援サービス事業で60億円規模を目指す~パナソニックエコシステムズ

 また、パナソニックエコシステムズ社による環境への取り組みについても説明した。

 同社は、加湿空気清浄機やナノイー発生機、食器乾燥機、ふとん乾燥機などを担当するグループ企業。これらの健康空質、環境空質製品などをIAQ(Indoor Air Quality=室内空気質)事業と位置づけており、これらの製品においても節電に対する取り組みを加速していることを示した。

パナソニックエコシステムズの会社概要ナノイー搭載の空気清浄機やナノイー発生機などを担当する
パナソニックエコシステムズの田中昌行社長

 パナソニックエコシステムズの田中昌行社長は、「DC天埋換気扇では年間45kWh、エコナビレンジフードでは年間109kWh、HP式バスルームコンディショナでは年間1,293kWhとなり、合計で年間1,447kWhとなり、約72%の削減が可能になる。エコタウン東海におけるパナソニック換気システムの標準採用のほか、送風だけで洗濯物を乾燥、除菌することができる『せんたく日和』は、東日本大震災の避難所となった福島のビッグパレットなどに設置し、自然乾燥に比べて乾燥時間を大幅に短縮し、低ランニングコストで動作することが好評だった」とした。

 加えて同社が取り組む環境エンジニアリングについても説明。製造分野における水浄化システムや、自然エネルギーを有効活用した建築外装技術の「Ecoファザードシステム」、家畜排泄物や生ゴミなどの堆肥化におけるアンモニア成分を分解、無臭化するロックウール脱臭装置などに触れた。

 Ecoファザードシステムは、2011年5月4日にグランドオープンした大阪駅開発プロジェクトにおいて、大屋根部のトップライト12本を施工し、駅舎内の照明負荷を低減したという。

熱交換器や浄化機器を使った換気は高い節電効果があるという送風だけで洗濯物を乾燥、除菌することができる同社製品「せんたく日和」を福島の避難所に設置した

 「今後は、工場まるごと環境ワンストップソリューション『SE-Link』の提供や、省エネノウハウの社外展開により、省エネ支援サービス事業で60億円の規模にまで拡大したい。IAQ分野でのグローバルナンバーワンに挑戦し、環境エンジニアリング分野で世界に貢献したい」(パナソニックエコシステムズの田中昌行社長)と語った。

 また、同社本社工場で「eco見える化工場」を推進。2011年3月11日にオープン以来、117社1,152人が来場したことを紹介した。

 パナソニックエコシステムズでは、2012年度の売上高として1,300億円を計画。海外売上高比率を30%以上、ソリューション比率を35%に拡大。さらに2018年度には新規事業で400億円を創出するとした。

 なお、パナソニックでは、創業100周年を迎える2018年のビジョンとして「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業」を掲げている。






(大河原 克行)

2011年6月30日 15:12