首相、中部電力浜岡原発の運転停止を要請

~電力逼迫が中部地方にも波及か

 菅総理大臣は5月6日に行なわれた記者会見で、中部電力に対して、浜岡原子力発電所の運転停止を要請したと発表した。中部電力への要請は、海江田経産相を通じて行なわれた。

 要請の内容は、想定されている東海地震による津波に対し、防護対策を求めるもので、経産省の原子力安全・保安院の評価確認を得るまで、浜岡原発のすべての号機について運転停止を求めている。

 首相の会見では、「これから30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫をしております。こうした浜岡原子力発電所の置かれた特別な状況を考慮するならば、想定される東海地震に十分耐えられるよう、防潮堤の設置など、中長期の対策を確実に実施することが必要です。(中略)運転中のものも含めて、すべての原子炉の運転を停止すべきと私は判断をいたしました。」としている。

 また、今回の要請について、「指示とか命令という形は、現在の法律制度では決まっておりません。そういった意味で要請をさせていただいたということであります。」としているが、中部電力が断わった場合でも、「十分に御理解をいただけるようにですね、説得をしてまいりたい。」と強い姿勢を示している。

 中部電力は、6日19時に要請を受けたとしており、内容について迅速に検討するとしている。

 浜岡原発は、5号機まで設置されているが、1号機と2号機は廃炉の予定で運転を停止している。3号機(110万kW)は定期点検中で、現在は4号機(115万kW)、5号機(140万kW)が稼働している。

 中部電力は、平成23年の電力供給計画では、最大電力需要を2,560万kWと見込んでいる。それに対して2,999万kWの供給力があり、439万kWの供給予備力があるとしていた。しかし、電力需要が最大となる7月までには、3号機の検査終了を見込んでいたうえに、4号機と5号機も停止することで、365万kWの供給力がなくなる可能性が出てきた。

 これにより、中部電力管内においても、突発的な停電を避けるために、電力削減計画の実施が必要となる可能性がある。また、関西電力など60Hz圏内の電力会社から電力の供給を受ける必要が出てくる可能性が高い。

 今回の浜岡原発の運転停止要請により、50Hz圏内の東京電力と東北電力の問題であった夏期の電力需要削減が、60Hz圏内でも切迫した課題となる可能性は高い。

 一方、中部電力は他の60Hz圏の電力会社と共同で、周波数変換所を経由して東京電力へ電力を融通している。それ以外にも、一部の水力発電所の周波数を50Hzに切り替えるなど、震災以後の東京電力への電力支援の中心的存在だった。

 今回、中部電力内の電力需要が逼迫することにより、これらの支援策も再検討される可能性がある。東京電力では、新たな電源供給元の確保がさらに必要となるだろう。






(伊達 浩二)

2011年5月7日 05:44