【エコプロダクツ2009】
LED電球やロスの少ない直流電源など最新のエコ技術が集結
エコプロダクツ2009 |
12月10日から12日までの3日間、東京ビッグサイトでエコ関連の展示会「エコプロダクツ 2009」が開催されている。企業に限らず、自治体やNGO・NPO、業界団体、研究機関などさまざまな団体がさまざまな切り口でエコに関連するブースを出展し、産業関係者だけでなく、一般人や児童・学生など幅広い層に向けてアピールしている。今回はその中から、家電に関連する話題をお伝えしよう。
■エネファームや直流・交流のハイブリッドシステムをアピールするパナソニック
生活家電の新製品に搭載される「エコナビ」を紹介するパナソニック |
エコナビ商品群の中では、ガスを使わずにお湯を沸かす、オール電化の象徴とも言える「エコキュート」を展示しているが、その一方でガスで発電するという「エネファーム」も展示していた。エネファームは都市ガスから水素を取り出し、その水素を燃料電池に入れることで発電するシステム。発電所で発電するのに比べ、送電ロスがなく、また発電時の余剰熱を使ってお湯を沸かすことで無駄なエネルギーを省いている。
エネファームについては、同システムの普及促進を目指す燃料電池普及促進協会も独自のブースを出展し、導入時に最大140万円の補助金を得られることなどをアピールしていた。このほかにも新日本石油なども展示を行なっていた。
このほか、「AC/DCハイブリッド配線システム」も参考展示を行なっていた。これは、家庭内のコンセントに100Vの交流電流だけでなく、直流電流も配線するというもの。現在の家電はほとんどが交流を直流に変換する機器を内蔵しているが、太陽光発電や蓄電池、エネファームなどのコジェネレーションシステムからの直流電流を直接家電などに供給することで、機器の小型化や変換ロスの削減につなげられるという。パナソニックでは、48V程度の直流を家庭内に配線していくことを想定しているという。
エコナビではないが、AV機器も待機電力の抑制をしていることをアピール | パナソニックのLED電球、EVERLEDSは通常電球と大きさなどがほとんど変わらないことをアピール |
オール電化の代表的存在であるエコキュート | ガスを使って各家庭で発電するエネファームシステム |
AC/DCハイブリッド配線システム | 左上にあるのが業界団体に提案中のDC専用コンセント形状だという |
■eneloop関連製品を展示する三洋
三洋電機は比較的大きなブースを設け、エコ関連商品を展示している。ブース中央ではeneloopシリーズの商品が展示されていたほか、ブース裏には短い坂が作られ、実際にeneloop bikeを試乗できるようになっていた。また同社独自のHIT太陽光発電パネルについては、家庭用パネルやeneloop bike用の充電ステーションなどの関連商品とともに展示されていた。
eneloop関連商品 | ブース裏手に設けられたeneloop bike試乗スペース | 折りたたみタイプのeneloop bikeに試乗できる |
ブース前面に設置された太陽光発電パネル | 太陽光発電システムを内蔵したeneloop bikeの充電機能付き駐輪場システム | 結晶板を使うため本来は折り曲げられないHITパネルだが、曲面に変形させられるHITパネルも参考出展されていた |
■シャープはLED電球と太陽電池を前面に
シャープも大きなブースを出展し、同社のエコに対する取り組みや商品を紹介している。シャープは家庭向けでは高いシェアを持つ太陽光発電パネルを展示しているほか、低い価格設定で今年から売り出されたLED電球なども紹介している。
太陽光発電パネルについては、家庭用に使われている多結晶タイプのものに加え、同じく多結晶タイプだが小型化してケータイに搭載したものや、効率は低いものの発電量あたりのコストが安い薄膜タイプのパネルなども展示している。
また、そうした太陽光発電パネルによる直流電流をそのまま家庭内で使う、「ソーラーDCエコハウス構想」についてもコンセプトを紹介していた。
薄膜型パネル(左)と結晶型パネル(右)。薄膜型は主に広い面積を使える発電プラント向けとのこと | 「ソーラーDCエコハウス構想」は、太陽光発電パネルによる直流電流をそのまま家庭内で使うというもの | 今年から参入したLED電球も展示している |
■京セラは太陽光発電から携帯用小型モジュールまで展示
太陽光発電システムとしては、京セラも自社製品を紹介している。ブース全面にはトヨタのハイブリッドカー「プリウス」を展示し、同車のオプションである屋根内蔵型発電システムに京セラ製のパネルが採用されていることをアピール。同システムに採用されているパネルは、平面でしか作れない結晶板を使う多結晶タイプだが、小さなパネルを角度を変えつつ樹脂内に封入することで、曲面であるプリウスの屋根に内蔵できているという。
このほかにも京セラの家庭向け発電システムの「SAMURAI」を展示しているほか、参考出品としてモバイル機器向けの小型モジュールも展示していた。
プリウスの屋根に内蔵された京セラ製のソーラーパネル | モバイル機器向けの小型パネル | 京セラの太陽光発電パネルは、シリコンから一貫して自社生産をしているという |
■三菱はLED電球や「霧ヶ峰」を展示
太陽光発電システムとしては、三菱も同社のパネルを展示していた。三菱はパネル自体を触れるように展示し、防汚フレームや塩害対応などをアピールしている。このほか三菱のブースでは、ムーブアイセンサーを搭載する同社のエアコンやLED電球のPARATHOM(パラトン)シリーズなども展示していた。
三菱の太陽光発電パネル | エアコンの「霧ヶ峰」 | LED電球のPARATHOMシリーズ |
■東芝は「一番明るい」LED電球をアピール
東芝もエコ関連製品を幅広く展示している。民生品としては、LED電球のE-COREシリーズを多数展示。旧世代の製品などと並べて展示し、最新型の製品については「今、一番明るいLED電球」として紹介していた。
日本では売られていない製品だが、アメリカの自転車メーカー、キャノンデール製の電動アシスト自転車「Schwinn」も展示していた。東芝は同自転車に対してSCiB型の二次電池を供給している。SCiB二次電池はリチウムイオンとは異なった素材を使う電池。充放電サイクル数が多い長寿命性能、短時間で充電放電が可能な特性、低温での動作、破損時にリチウムイオンのように爆発しない安全性などが特徴となる。容積に対する容量はリチウムイオン電池並だが、それほど普及していないため、まだ価格面では高価だという。また、電圧は2.2Vとなっているため、ノートパソコンなどの電子機器には少し応用しにくいという。
このほかにも東芝は家電IT連動システムの「FEMINITY(フェミニティ)」を展示している。これは配電盤につなげる電力の測定装置とホームサーバーを組み合わせることで、家庭内のどこでどのくらいの電力が消費されているかを、ウェブブラウザで見せるというシステム。すでに市販されている。ホームサーバーには大出力型のBluetooth通信機が内蔵されていて、エアコンや電灯スイッチにBluetooth対応のコントローラーを追加することで、ネット経由で家電を制御することが可能になる。
東芝のLEDシリーズ「E-CORE」各製品 | 左は2007年のE-CORE。右が2009年のE-CORE。短期間で大幅な性能向上・価格低下が起こっている |
キャノンデール製の電動アシスト自転車。前輪モータタイプ。出力が日本の法規制に合わないため、国内では乗ることができない | FEMINITYのシステム。既設の配電盤に測定装置とサーバー、コントローラを加える | ブラウザで消費電力を参照できる |
■富士通ゼネラルの脱臭機、ソニーのブドウ糖発電など各社の独自技術が集合
富士通はグループ会社のエコ関連製品を展示していた。富士通ゼネラルの製品としては、エアコンとともに、脱臭機も展示。脱臭機は密閉された箱の中にアンモニアの臭いを充填させ、その後で脱臭機を作動させてどのくらい臭いが消えたかを確認できるというちょっと珍しいデモも行なわれていた。
このほか日立もグループ会社のエコ関連製品・ソリューションを展示。民生品としては、冷蔵庫やエアコンなどを展示していた。
富士通ゼネラルの脱臭機のデモ。イオン散布と紫外線の2つの方法での除菌機能もアピールしている | 日立の冷蔵庫の説明パネル。いままでヒータで溶かしていた冷凍室の「霜」にファンをあて、その冷気と湿気を冷蔵室に回すことで省エネ能力を高めている |
白物家電を展開していないソニーは、主に技術的デモや製品作り時の取り組みで環境性能をアピールしている。児童・学生の来場者向けには「ブドウ糖で発電する」という公開実験を行なっており、ブース前面には八百屋のようにさまざまな野菜・果物が並んでいた。その一方で色素を使う太陽光発電パネル「色素増感太陽電池」も展示していた。これは薄膜系に近い構造の太陽光発電パネルで、発電効率は薄膜系並だが、色素をうまく使うことで模様を描き出せるといった特徴があるという。
ソニーブースでは、児童向けにブドウ糖で発電する実験を行っている。そのため、ブース前はまるで八百屋のように野菜や果物が並ぶ | 窓ガラスのようになっているところが、色素増感太陽電池。そのうち2枚を使って小型の扇風機を回している | 色素増感太陽電池を使ったチャージャー。パネル部分に絵が描かれている |
会場内に設けられた「エコサイクルシティ」コーナーでは、自転車に関する展示も行なわれていた。ここでは、ヤマハ、三洋電機、パナソニック、ブリヂストン各社の電動アシスト自転車が展示されていた。さらにこのコーナーの近くでは、フルタイムシステムによる電動アシスト自転車の無人レンタルシステム、日本コンピュータ・ダイナミクスによる駐輪場込みの無人レンタルシステムも展示されていたほか、屋外での電動アシスト自転車の体験コーナーも設けられていた。ただし取材日は雨が降っていたため、電動アシスト自転車の体験は行なわれていなかった。
エコサイクルシティコーナーに置かれた各社の電動アシスト自転車 | フルタイムシステムによる電動アシスト自転車のレンタルシステム。バッテリの充電機能もある | 日本コンピュータ・ダイナミクスの駐輪スタンド一体型の無人レンタルシステム。把持器具が自転車側にくっついている |
(白根 雅彦)
2009年12月11日 21:31