三洋、大容量・高電圧リチウムイオン電池システムを開発

 三洋電機は、大容量・高電圧リチウムイオン電池システムを開発し、2010年3月から量産を開始すると発表した。

 発表したのは、太陽電池とのハイブリッド化が可能な蓄電用標準電池システムの「DCB-101」、軽車両の電源として使用できる動力用標準電池システムの「EVB-101」。いずれも、携帯電話やノートPCなどに採用している18650タイプのリチウムイオン電池を採用。

蓄電用標準電池システムの「DCB-101」動力用標準電池システムの「EVB-101」18650タイプのリチウムイオン電池はノートパソコンや電動自転車など幅広い分野で採用されている

 放充電効率が高いほか、小規模量産や開発向けに、金型などの初期投資がなく利用できるようにしたのが特徴。また、必要に応じて直並列することでフレキシブルな対応を可能としたほか、三洋電機独自のバッテリーマネジメントシステムを内蔵。電池を自己診断し、その状態を送信できるようにした。

 DCB-101は、太陽電池とのハイブリッド化や風力発電の蓄電や出力安定化、携帯電話の基地局やサーバーなどのバックアップ用として、既存のシステムに組み込みが可能な蓄電システム。18650タイプの電池を13直列24並列により、312本使用。サイズは438×386×80mm(幅×奥行き×高さ)、重量は19kg。出力電圧は平均48V、電池容量は33.6Ah、電力量は1,613Wh、最大出力は約1.5kW、最大放電電流は30Aとなっている。

三洋電機 モバイルエナジーカンパニービジネス開発統括部・雨堤徹統括部長

 「蓄電専用セルと高信頼性システムとの組み合わせで、長寿命、メンテナンスフリーを実現したほか、充電回路を内蔵しているため、鉛電池からの置き換えも容易である」(三洋電機 モバイルエナジーカンパニービジネス開発統括部・雨堤徹統括部長)とした。

 また、汎用的な19インチラックにも対応しており、様々な用途で活用できるようにしている。

 サンプル価格は40~50万円。当初の月産計画は500台以下としている。

 EVB-101は、電動軽車両の動力として研究開発や、小規模生産向けに対応する動力用標準電池システムで、DCB-101同様に18650タイプを14直6並列で84本搭載し、出力電圧は平均50.4V、電池容量は10.8Ah、電力量は544Whとしてながらも、最大出力はピーク時で5.2kW、連続で1.5kW、最大放電電流はピーク時で120A、連続で35Aとしている。サイズは366×213×66mm(幅×奥行き×高さ)、重量は7kg。サンプル価格は15~20万円で、月産計画は500台以下。

 動力専用セルと高信頼性システムとの組み合わせにより、高出力と長寿命を実現。アルミ外装ケースの採用により、高い耐久性と放熱性を確保した。また、強力な噴流にも耐えられるJIS IPX6の防水性能を持ち、軽車両の動力としての利用環境にも活用できるようにした。

 三洋電機では、「環境・エナジー先進メーカー」を目標に、エネルギー事業を強化。なかでも、携帯電話やノートパソコンなどに使用されるリチウムイオン電池を、中核事業の1つに位置づけ、グローバル展開を行なっている。

 これまでにも、ユビキタス市場向けとして、携帯電話やゲーム機、ビデオカメラ、ノートPCなどで利用される高エネルギー密度化の用途や、動力用途市場として、電動工具向け、アシスト自転車向けなどの高出力化を図った製品の開発、ポータブルウォーマーやカイロ、充電式ひざ掛けなどへの応用などを行なってきた。

 今回の製品は、太陽電池などの自然エネルギーの蓄電、サーバーなどのバックアップや動力用途など、今後の用途拡大が期待されるリチウムイオン電池の新規市場に向けて投入するものとなり、同社が掲げる活エネ(エナジーコントローラ)の一翼を担う「蓄エネ」での主要製品の1つとなる。

 「蓄電用標準電池システムでは、携帯電話基地局のバックアップ用、無停電信号機、ソーラー街路樹、ソラー駐輪場、ソーラー蓄電システムなどにおいて応用が可能であり、すでに徳島県庁では駐輪場で太陽電池システムと連動させて、ハイブリッド自転車のeneloop bikeの充電に利用している。自転車は昼間に乗って、夜に充電するために、太陽電池で発電した電力を蓄電する必要がある。8カ月運用したが支障なく使用できている。また、当社の洲本工場に設置したソーラーLEDサインは、約3年間に渡って稼働させているが、雨が続いた2回のみAC電源供給を行なっただけに留まっている」(雨堤徹統括部長)とした。

蓄電用標準電池システム「DCB-101」から、DCからACへ変換し、eneloop bikeの充電に利用する例徳島県庁に設置されているソーラー駐輪場ソーラーパネルを搭載したLEDサインや、リチウムイオン電池を搭載した停電の心配がない信号機などは既に運用されている

 さらに、動力用標準電池システムでは、日本EVクラブ主宰のレースに、リチウムイオン電池を搭載したEVカートで参戦。そのほか、EVフォーミュラーカーやEVバギーなどにも参加し、将来の自動車への応用に向けた実証実験を行なっている。

2006年からリチウムイオン電池を搭載しているEVカート2008年からリチウムイオン電池を搭載したEVフォーミュラーカー2009年4月に参戦したEVバギー

 11月17日には、東京・日本橋と大阪・日本橋の約560kmを無充電走破する計画で、達成すれば、これまでの501kmというギネス記録を破ることになる。

 同社では、2015年度には、動力および車両関係、家庭用蓄電分野、産業機械分野に向けた大容量・高電圧電池システム事業全体で800億円の売上高を目指す。

11月17日に予定しているEVミラによる東京・大阪間の約560kmの無充電走破2015年度には大容量・高電圧電池システム事業で800億円の売り上げを目指すとした




(大河原 克行)

2009年11月13日 17:56