パナソニックのワイヤレス充電パッドは“安定、安全、電波障害も少ない”

~「Qi」対応製品の技術説明会。名前の由来は「気」の中国語読み
ワイヤレス充電の国際標準規格に対応した、パナソニックの無接点充電パッド「QE-TM101」とモバイルバッテリー「QE-PL102」

 パナソニックは、同社が参画するワイヤレス充電の国際標準規格「Qi(チー)」に関する技術説明会を開催。パナソニックのQi対応の充電パッド「Charge Pad(チャージパッド) QE-TM101」が、充電の安定性や安全性、電波障害への配慮などで優れていることがアピールされた。

 説明会ではまず、Qi規格が登場するまでの無接点充電の歴史を紹介。無接点充電とは、送電側と受電側に搭載されたコイル間で、電磁誘導によって電力を伝送する技術のことだが、同技術はシェーバーや電動歯ブラシ、コードレス電話など、「かなり以前からあった」(パナソニックグループ エナジー社 三洋電機株式会社 エナジー社の充電ビジネスユニット 佐野正人ビジネスユニット長)という。しかし、当時は数10mW以下の小さな電流しか取れないというデメリットがあったという。

 そこで、異物検出技術やフラットコイルなどを開発することで、電力出力を向上。ゲーム機「Wii」のリモコン用無接点充電器や、置くだけで充電できるインテリアライトなどに、無接点充電技術を採用してきた。しかし、それぞれの機器間や、他メーカーの商品などとの互換ができないという問題があった。

無接点充電の技術自体は昔からあったが、電流が小さいというデメリットがあったそこで、電力出力を向上したが、今度は他機種、他メーカーの製品と互換できないという問題があった
パナソニックグループ エナジー社 三洋電機株式会社 エナジー社の充電ビジネスユニット 佐野正人ビジネスユニット長

 「たくさんのモバイルツールが普及しているが、それぞれに充電器があふれている。なおかつ、それぞれに電源を必要とするため、煩雑な状況になる。アダプターがたくさんあると、それだけで待機電力が発生する。また、本体を使わなくなった途端に、アダプターは大量の廃棄物に変わる。そこで、共通規格化された充電台があれば、充電器を減らすことができる」(佐野氏)


充電器は機器ごとに異なり、かつそれぞれに電源が必要になるなどの問題があった充電器が待機電力や廃棄物の原因となる問題から、さまざまなメーカーのさまざまな機種に対応する充電器が必要となっていた

 この課題を解決するため、2008年、無接点充電の国際標準規格を目指す「ワイヤレスパワーコンソーシアム(Wireless Power Constortium:略称WPC)」に、パナソニックは創設メンバーとして参画。2010年に、携帯電話など比較的電力の少ない機器向けの、最大5WまでのQi規格を公開した。なお「Qi」とは、「気」を中国語読みし、アルファベットで表記したものとなる。

無接点充電の国際標準規格を目指すコンソーシアム「WPC」には、創設時より参画していたというWPCに賛同するメーカーは100社以上
無接点充電の標準的な充電方式は、「多コイル方式」「マグネット方式」「ムービングコイル方式」の3通りがあるという

 現在WPCには109社が賛同しているが、無接点充電の標準的な充電方式としては、主に3つのパターンに分かれるという。1つ目は、充電パッド内に複数のコイルを敷き詰めた「多コイル方式」、2つ目はコイルはパッド中央の1個のみだが、中央に設置された磁石で受電側の機器を引き寄せる「マグネット方式」、3つ目は受電側の機器のコイルの位置を検知し、縦・横の2軸のモーターで、パッド内の送電コイルを移動させる「ムービングコイル方式」。

 このうち、パナソニックが発売するQi対応の充電パッド「チャージパッド QE-TM101」では、ムービングコイル方式を採用する。パナソニックでは同方式を採用するチャージパッドのメリットとして、送電コイルと受電コイルの位置ズレがなく充電の安定性が高い点、充電に干渉する金属片などの異物を検出すると運転をストップする安全性、電波障害に対応した設計となっており、携帯電話の受信感度を損なわない点の3つを指摘している。なお、MM放送(NOTTVなど、携帯端末向けのマルチメディア放送)端末については、対応を順次進めるという。

 スマートフォンなど受電側に搭載されるコイルについては、部品を最適化することで、従来の電池と同等のサイズを実現しているという。また、整流器とコンバーターを搭載することで、発熱を抑える構造としている。

パナソニックのチャージパッドで採用されているムービングコイル方式は、送電コイルと受電コイルの位置ズレがなく充電の安定性が高いメリットがあるというまた、異物が入った時にはエラーで充電を停止する。異常な高温の発生が防げるというまた、電波障害に対応した設計になっているという
チャージパッドのスケルトンモデル裏側を見ると、縦と横の2つの軸により、充電コイルが受電側の直下に移動しているのがわかる受電側では、体積を減らし、発熱を抑える構造となっている
パナソニックのQi対応の製品群

 現在パナソニックでは、Qi規格に対応した機種として、QE-TM101のほか、モバイルバッテリー3機種、ムービングコイル方式の充電パッドを搭載したブルーレイレコーダー「スマートディーガ DMR-BZT920-K」、NTTドコモのスマートフォン「ELUGA V」を扱っている。また、NTTドコモやソフトバンクでは、各社がQi対応のスマートフォンや携帯電話を推進しているという。

 また、現在のQi規格は、携帯電話やスマートフォンなど、出力5Wの「ローパワー」クラスの機器に限られているが、今後はノートパソコンや電動工具などが充電できる、120Wの「ミドルパワー」クラス、電気自動車や電動アシスト自転車に対応した、1kWの「ハイパワー」クラスへと規模を広げる予定で、現在ミドルパワークラスの規格の制定を進めているという。

スマートフォンや携帯電話では、NTTドコモを中心に、Qiへの対応が進んでいる今後は120Wのミドルパワークラス、1kWのハイパワークラスの無接点充電の規格を策定していくという
パナソニックのモバイルバッテリーのスケルトンモデル。オレンジ色の部分リチウムイオン電池だ裏返すと、受電用のコイルが付いている





(正藤 慶一)

2012年7月5日 16:01