【東京モーターショー2011】
積水ハウス、太陽電池/燃料電池/蓄電池で“エナジーフリー”を目指す住宅

~窓格子のようなソーラーパネル、発電から睡眠まで管理するシステムも

 12月3日~11日にかけて、自動車の展示会「東京モーターショー2011」が、東京ビッグサイトで開催される。一般公開に先駆けて、11月30日、報道関係者向けに展示内容が公開された。本誌では、家庭に関わる新技術やサービスについて紹介する。


積水ハウス、太陽電池・燃料電池・蓄電池を組み合わせた住宅

 積水ハウスのブースでは、同社が8月より販売を開始した住宅「Green First HYBRID(グリーンファースト ハイブリッド)」の仕組みを公開していた。

積水ハウスのブース「グリーンファースト ハイブリッド」住宅のイメージ画像

 グリーンファーストハイブリッドは、ガスで電気とお湯を同時に作る「燃料電池」、屋根に載せたパネルで発電する「太陽電池」という2つの“創エネ”技術に加え、電力が備蓄できる「蓄電池」という“蓄エネ”技術も搭載した住宅。これらの技術を組み合わせることで、電力をできる限り自給する点が特徴となる。

 例えば日中は、燃料電池と太陽電池で発電し、余った電気を売電する。電力需要が増える夕方から夜にかけては、蓄電池から電気を取り出す。蓄電池の充電には、料金が安い深夜電力を利用する。これにより、大幅な節電と省エネを可能にし、日中の電力負荷を減らすとともに、光熱費も削減できるという。

「グリーンファースト ハイブリッド」では、2つの創エネ技術と1つの蓄エネ技術が搭載されている。1つ目は、水素を使って発電する「燃料電池」。写真はパナソニック製のエネファーム創エネの2つ目は、屋根に設置される「太陽電池」。瓦一体型のデザインだ蓄エネには「蓄電池」を採用。容量8.96kWhの鉛蓄電池だ

 また、これらの技術を停電など非常時のエネルギー確保にも利用できる。日中は燃料電池と太陽光発電のダブルで発電し、太陽光発電の余剰電力を蓄電池に蓄える。夜は燃料電池と蓄電池で電力を供給し、燃料電池で作ったお湯で入浴も可能となる。ガスが止まって燃料電池が使えない場合も、太陽光発電と蓄電池で電気のある暮らしが実現できるという。

 同社の試算によれば、夏の停電時の場合、通常から約2割の節電で、普段とほぼ同じ生活が送れるという。さらに冬の場合は、ほとんど節電せずに、普段と同じ生活が可能という(いずれも平均的な晴天日の場合)。なお、停電時は自動で自立運転に切り替わる。

 グリーンファーストハイブリッドに導入される機器は、燃料電池が都市ガスから水素を取り出す「エネファーム」で、出力700Wまたは750W。太陽光発電は瓦一体型のデザインで、出力は3kW~6.4kW。蓄電池は鉛電池で、容量は8.96kWh。電力使用の優先順位は(1)燃料電池、(2)太陽光発電、(3)蓄電池、(4)一般電力の順番。

 積水ハウスでは、グリーンファースト ハイブリッドによって、究極の“エナジーフリー”が実現できるとしている。

「グリーンファースト ハイブリッド」の創エネ・蓄エネパターン(パンフレットより抜粋)


向きが変わる窓格子のような太陽電池、発電量から睡眠状態まで調べる管理システムも

 ブースではこのほか、開発中の住宅設備も公開された。

 太陽電池関連では、窓の外側に取り付けられる太陽電池が公開された。縦に長い太陽電池が窓格子のように並んでおり、太陽の方向に合わせて向きが変えられる点が特徴だ。操作はリモコンで行なう。

 もう1つ、シート状の太陽電池も展示された。通常は窓の庇(ひさし)の中に収まっているが、リモコン操作でシートが手前に引き出せる。未使用時には再びリモコン操作で、巻き取ることができる。

参考出品となった、窓に取り付けるタイプの太陽電池太陽の向きの変化に合わせて、パネルの向きが変えられる。まるで窓格子のようなデザインだ
シート状の太陽電池も公開された使用しない時には、庇の中に巻きとって収納する。操作はリモコンで行なう

 使用電力量や売電量などを表示する管理システムも公開された。この管理システムでは、水道代や電気代、売電料金を合わせたランニングコストの表示や、電気自動車の充電量などを示す機能が付いている。また、地域の避難経路を表示したり、全国のユーザーと電力削減量を競い合う「エコランキング」なども利用できる。

 このシステムではさらに、睡眠中の心拍や呼吸などを計測する「バイタルセンシング」機能も付いている。これは、生体センサーをイスやベッドに組み込み、そこに座ったり横になるだけで、心拍、呼吸、体動をリアルタイムに計測するというもの。計測データをもとに在宅健康管理に利用したり、離れて暮らす家族の安全を見張ることもできるという。

発電量や売電量、使用電力量などを管理するシステム。電気自動車の充電状況も表示できる親戚の家の写真なども確認できる
避難経路など地図も表示できる「エコランキング」など、節電を支援するサービスも用意される
睡眠中の心拍や呼吸などを計測する「バイタルセンシング」機能も付いているバイタルセンシングを使用するには、生体センサーを組み込んだベッドなどが必要になる

 既に発売中のものでは、LEDの光を当てることで、室内でも植物が育てられる器具も展示された。

LEDの光を当てて、室内で植物を育てる器具は既に発売中とのこと


電気自動車にも“無接点充電”の流れが

 三菱自動車のコーナーでは、電気自動車「i-MiEV(アイミーブ)」を用いた展示が行なわれていた。

 最も注目を集めていたのが、電気自動車の非接触充電システム。地面に埋め込まれた送電装置の上に、同システムに対応した電気自動車を止めることで、ワイヤレスでバッテリーが充電できるシステムだ。例えば、道路に埋め込めば、信号待ちの間にも充電できるという。将来的には、車両から住宅へもワイヤレスで給電できるようになるという。

 家電業界では、無接点で電池が充電できる「Qi(チー)」規格に対応したモバイル機器が数多く出ているが、電気自動車でも無接点の流れが進んでいるようだ。

電気自動車の非接触充電システム。床に埋め込まれているこの上に対応した自動車が止まることで、バッテリーが充電できるこの状態で、ワイヤレス充電ができることになる

 休憩スペースでは、i-MiEVシリーズの軽商用車タイプ「MINICAB-MiEV(ミニキャブ アイミーブ)」を電源とし、テーブル上のキャンドルライトを点灯するデモも行なわれていた。その脇には、1,500Wの電源が供給できるバッテリーの試作品も展示されていた。

 なお三菱自動車では、電気自動車で使用した大容量の駆動用バッテリーを取り外し、蓄電池としてリユースすることを検討しているという。このリユースバッテリーを家庭に接続することで、家庭で電力が蓄えられ、節電や電力のピークシフト、災害など緊急時の蓄電池として利用できるという。

ミニキャブ アイミーブを使ったデモも行なわれたミニキャブ アイミーブの電気は、テーブル上のキャンドルライトの電源として使われていた
1,500Wの電源が供給できる装置も展示されていた三菱自動車では、電気自動車で使用したバッテリーを「リユースバッテリー」として、家庭で使えるよう取り組んでいるという





(正藤 慶一)

2011年12月1日 00:00