ダイソン、学生対象のデザインアワードの最優秀賞決定

~乾燥地帯の作物育成問題を解決する「Airdrop」
オーストラリア・メルボルンのスインバン大学に在籍するEdward Linacre(エドワード・リナカ)氏が提案した「Airdrop」

 ダイソンが提携する教育慈善団体ジェームズ ダイソン財団は、学生を対象としたデザインアワード「2011年 ジェームズ ダイソン アワード(Jamese Dyson Award:JDA)」は、2011年度の最優秀賞として、オーストラリア・メルボルンのスインバン大学に在籍するEdward Linacre(エドワード・リナカ)氏が提案した「Airdrop(エアドロップ)」を選出した。

 JDAは、イギリス、日本、アメリカ、オーストラリア、フランスなど世界18カ国の学生を対象としたもので、国際優秀賞には、受賞者、および学生を輩出した大学に対しそれぞれ10,000ポンド(約130万円)の賞金が授与される。

 今回、2011年度の最優秀賞を受賞した「Airdrop」は、砂漠地帯に生息する「ナミブヒードル」をいうカブトムシの生態からヒントを得て、空気中から水分を採取、乾燥地帯の作物育成に役立ているという提案。

 ナミブヒードルは、年間降水量1.5cmという乾燥地帯に生息、親水性の高い皮膚をしており、早朝に集めた露だけで生き延びているという。Airdropでは、乾燥した空気の中にも水分が含まれているという原理を利用し、地下に空気を送り込み、水分が結露する温度まで冷却させる。採取した水は、植物の根に直接配給するという。

製品本体空気中の温度と地中の温度差を利用して、水を取り出す。空気を地下配管網で取り込む

 受賞したリナカ氏は「実家の裏庭で数えきれないほどの試作品を製作し、ようやく最終デザインにたどり着きました。(中略)大気から水を採取するシステムは大抵、膨大なエネルギーを必要としますが、Airdropは空気の温度を冷たい地中の温度との温度差を利用しているだけです」と述べている。

 JDA主催者であり、最終審査員を務めるダイソンの創業者で会長の、ジェームズ ダイソン氏は、今回の受賞に関して「バイオミミクリ(生物模倣)はエンジニアの強力な武器です。(中略)リナカ氏のような若いデザイナーやエンジニアたちがシンプルで効果的な未来技術を開発しています。世界が抱える大きな問題に取り組み、その開発プロセスの中で生活を改善していきます」と語っている。

 次点となる第2位を受賞したのはイギリス・ロンドンのロイヤルカレッジオブアートに在籍するMichael Korn(マイケル・コーン)氏が開発した移動可能な格納式パーテンション「Kwickscreen(クイックスクリーン)」。患者のプライバシーや尊厳を確保しながらも、医師や看護師の利用スペースを最大限に確保するという。

 第3位は、シンガポールのシンガポール国立大学在籍のSe Lui Chew(セ・ルイ・チュー)氏が開発した目の不自由な人の移動を、ロケーションベースのソーシャルアプリやブルートゥースを使ってサポートする「Blindspot(ブラインドスポット)」が受賞した。

 なお、日本国内の最優秀賞は、京都工芸繊維大学の岩松直明氏・建井信人氏が出展した磁石式の電源タップ「E-leaf(イーリーフ)」が受賞している。

移動可能な格納式パーテンション「Kwickscreen(クイックスクリーン)」ロケーションベースのソーシャルアプリやブルートゥースを使ってサポートする「Blindspot(ブラインドスポット)」磁石式の電源タップ「E-leaf(イーリーフ)」





(阿部 夏子)

2011年11月21日 16:43