三洋、イタリアの大規模太陽光発電所に「HIT太陽電池」を納入
●大規模施設では初の導入。第三者機関からも性能を評価
太陽電池発電所の完成予想図 |
HIT太陽電池は、結晶シリコン基板とアモルファスシリコン薄膜を用いた混合型の太陽電池セル。発電効率が良く、両面発電が可能で、温度上昇による出力低下が低く夏場に強いなどといった特徴がある。
会場に展示されていたHIT太陽電池 |
三洋電機の取締役副社長 本間充氏 |
太陽電池の選択にあたっては、ドイツ銀行資産運用部門が主導するコンソーシアムが、第三者機関に評価を依頼し、 他社製品に比べカタログ値に近い性能の再現性、出力のバラツキが最小となるなどの評価を受けた。この結果から、三洋電機の取締役副社長 本間充氏は、「HIT太陽電池の納入案件としては世界最大規模のもので、これまでの家庭用、中小規模の施設だけでなく、大規模施設においても当社の強みが発揮できることが明らかになった。二次電池とセットで納入拡大を目指す」として、大規模施設をターゲットとしたビジネスを強化する意向を示した。
大規模施設でHIT太陽電池が選択されたのは、長期的な投資効果、発電量の収支、欧州における製造・販売拠点があることが要因という | 今回納入した出力モジュールとトラッカー |
大規模発電所の完成予想図 |
●世界トップ3入りのための生産/販売体制も整う
三洋電機の投資戦略。3カ年で1,700億円をエナジー事業に投資するという |
同時に太陽電池事業の売り上げ拡大を進め、2010年の太陽電池販売量400MWを、2010年に900MW、2015年に 1,500MWに成長させ、世界トップ3入りすることを目標として打ち出している。
「世界トップ3入りという目標を実現するために、技術革新が必要であることを踏まえて次世代型で高効率HITの開発と市場投入、住宅用市場を日本、欧州、米、カナダなどで増販、業務用市場の開拓を進める。さらにコスト対策として生産効率をあげるための革新活動を徹底し、価格競争にも対抗できる体質を作る」(本間副社長)
太陽電池事業の事業戦略 | グローバル市場におけるソーラー市場の成長推移 | 国別のソーラー市場規模推移 |
太陽電池市場は、発電した電力を販売できる制度を導入した欧州、特にドイツが先行している。しかし本間副社長は「今回、受注した大規模発電所が建設されるイタリアは、2010年の市況規模が対前年比170%と成長市場。また、これまでは電力販売制度がなかった米国で太陽電池設置に対して補助制度が用意されるなど、グローバル市場は20%以上拡大している。当社では生産体制についても、日本の島根、滋賀工場に加え、欧州はハンガリー、米国工場と世界三大市場に対応した生産体制を確立し、商品を安定供給できるサプライチェーンが確立された」と全世界での生産、販売ができる体制に自信を見せた。
グローバルな生産体制については、「現在のようなユーロ安といった状況が起こったとしても、輸出、輸入の両方を行なうことで為替レートの変動を相殺することができるメリットもある」(本間副社長)という。
欧州の太陽電池市場 | 三洋電機の太陽電池生産拠点 |
三洋電機では太陽電池の技術革新をさらに進めるため、現行モデルでは出力210Wの「HIT N」シリーズを、2010年第2四半期に215W、2010年第4市販半期には220W以上に高め、同じく現行モデルで235WのHDシリーズを 2010年第4四半期に240Wを超える出力を実現するというロードマップを描いている。
「研究レベルでは23.0%となっているセル効率を、2010年度には実用レベルで21.0%とし、さらに高効率化による発電量国内トップを進めることで、ロードマップの実現を目指していく」(三洋電機 ソーラー事業部事業部長 前田哲宏執行役員)
三洋のHIT太陽電池の構造 | 三洋独自のHDモジュール | 現在開発を進める発電技術動向 |
今後のロードマップ | 三洋電機 ソーラー事業部事業部長 前田哲宏執行役員 |
(三浦 優子)
2010年5月26日 18:15
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