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タイガー魔法瓶「炊きたて tacook JAJ-A550」後編
タイガー魔法瓶「炊きたて tacook JAJ-A550」 |
タイガー魔法瓶の炊飯ジャー「炊きたて tacook JAJ-A550(以下、tacook)」は、炊飯時の蒸気を利用して、ご飯を炊きながらおかずも作れるユニークな炊飯器だ。前編では、基本的な炊飯機能と、「リゾット」メニューを試してみた。後編では、「クッキングプレート」を使ったバラエティ豊富なおかずの調理メニューをご紹介する。
■「クッキングプレート」で、ロコモコ丼や牛丼から、レトルトカレーの温めまで
さっそく「クッキングプレート」でおかずを作ってみよう。クッキングプレートは、内鍋の上にセットするもので、ここに具材を入れておけば、炊飯時の蒸気で加熱調理できるというわけだ。
まずは、付属のクックブックに掲載されていた「ロコモコ丼」を試してみた。挽肉、玉ねぎ、卵、パン粉、牛乳、塩、胡椒、ナツメグで、ハンバーグを2個作成。それらを「クッキングプレート」に並べ、上からデミグラスソースをかけ、隙間に生卵を落とす、というものだ。お米は1合分を用意。準備が整ったら、本体に内なべと「クッキングプレート」をセットし、「白米」で炊飯した。
炊飯完了と同時に「クッキングプレート」内では煮込みハンバーグとゆで卵ができていた。1合のご飯も粒がキラキラしており、ハンバーグソースの匂いも移っていなかった。
ハンバーグにスプーンを入れてみると、中はギリギリ火が通っている感じだ。問題ないレベルではあるが、部分的に微妙に赤みが残っていた。中の玉ねぎは生ではなかったが、シャキシャキした歯応えが残っていた。フライパンで焼くのとは違うため、かなり細かく刻んだほうがいいだろう。デミグラスソースも、最初からハンバーグ全体にまんべんなく回しかけておくほうがムラがなくなりそうだ。
ハンバーグとしての完成度は微妙だが、炊飯しただけでこれだけの肉料理が完成するのはうれしい。今回は自分でハンバーグの材料を用意したが、スーパーで焼くだけの状態になったハンバーグと、パック入りのデミグラスソース、生卵さえあれば、簡単に食べ応えのある一品になるだろう。なお、「クッキングプレート」を使用する場合の炊飯量は、0.5合~1合となっている。
ハンバーグ2個分の材料と、1合分のお米、生卵、デミグラスソースを用意 | ハンバーグを並べ、上からデミグラスソースをかけて、隙間に生卵を落とす | 「白米」で炊飯 |
炊飯直後の「クッキングプレート」 | 炊きたてのご飯の様子 |
炊いたご飯にハンバーグとゆで卵をのせて完成 | 玉ねぎはかなり細かく刻むか、炒めておくほうがいいかもしれない |
ロコモコ丼ができるまでの様子。「クッキングプレート」がご飯に全く影響していないことがわかる |
次に、玉ねぎのリベンジも兼ねてクックブックの「イタリアン牛丼」を試した。こちらも牛肉、玉ねぎ、エリンギという牛丼の具に、味付けは、醤油、みりん、酒、砂糖を用意。全部混ぜて「クッキングプレート」に移し変えるだけ。0.5合のお米とともに「白米」で炊飯した。炊飯が終わったら、ご飯の上に牛丼を載せて、さらに上にトマトとパセリをトッピングして完成だ。
今回は玉ねぎをかなり薄めにカットしたので、熱の通りはよかった。牛肉は十分煮込まれたという感じではなかったが、味としてはさっぱりした牛丼といったところだろうか。鍋を使わずにこれだけできるならいいかもしれない。
イタリアン牛丼の材料。トマトとパセリ(本当はイタリアンパセリ)はなくても大丈夫 | 牛丼の材料を全部混ぜて「クッキングプレート」へ | 炊飯終了直後の状態 |
混ぜると牛丼っぽさが出た | 炊きたてご飯にのせれば、さっぱりしつつも、食べごたえのある牛丼のできあがり |
さらに、付属のクックブックには掲載されていなかったが、タイカレーも試してみることに。炊飯時の熱を、おかずの温めに利用しようというわけだ。まずはタイ米1合を炊飯しつつ、レトルトのタイカレーを温めてみる。
用意したのは、タイ香り米と、レトルトのレッドカレー。カレーは開封して「クッキングプレート」に入れるべきか迷ったが、あえて袋のまま入れた。タイ香り米1合とともにセットし、「白米」で炊飯開始。約40分後、香り豊かなタイ米と、十分に温まったレッドカレーを味わうことができた。この調子でいろんなものが温められそうだ。しかし、炊飯時間が40分ほどあることや、「クッキングプレート」に蓋がないため、蒸気をまといやすいことなどから、ものによっては水っぽくなる可能性もある。袋に入ってるレトルト食品は袋から出さず、そのまま温めたほうがいいだろう。
用意したのは、タイ香り米と、レトルトのレッドカレー | レトルトカレーは袋ごと押しこんでみた |
ふんわりと炊きあがったタイ米(1合) | 炊飯と温めが同時にできた! |
タイカレーの温めと、タイ米の炊飯 |
■水蒸気で蒸し上げるので、温野菜サラダも作れる
たっぷりの水蒸気で約40分間蒸し上げるのが「クッキングプレート」による調理といえる。となれば、非常にベーシックな一品である「温野菜サラダ」作りに最適ではないだろうか。そう考えて、5~7mm厚程度にカットしたジャガイモ、にんじん、キャベツ、エリンギなどの残った野菜を「クッキングプレート」に入れてみた。多少おかずっぽくなるよう、野菜の間にベーコンを挟み、1合分のお米で炊飯した。
すると予想通り、ほどよく熱が通った蒸し野菜おかずができた。ベーコンのうま味もじんわりとしみ出しており、塩、胡椒、オリーブオイル程度で十分おいしくいただける。簡単で、残り物野菜も片付けつつ、野菜不足が解消できるのでお勧めだ。なお、根菜類を入れるときは、薄めにカットするとちょうど良い歯応えが得られる。
「クッキングプレート」にキャベツ、玉ねぎ、エリンギ、じゃがいも、にんじん、オクラ、ベーコンを入れる | 炊飯後の様子 | いずれも爪楊枝が軽く通るくらいになっていた |
塩、胡椒、オリーブオイル、オレガノを適量振りかけ、このままテーブルへ | 同時に炊いたご飯 |
ちなみに、ご飯を炊かずに、「クッキングプレート」だけの調理もできる。内鍋の「白米」目盛り1まで水を入れ、「煮込み」メニュー(後述)を選択するのだ。
■リゾット、チャーハン、煮込み、ケーキ、みんなおいしい!
ご飯ものでは、前編でご紹介した「リゾット」のほか、「チャーハン」も用意されている。こちらもリゾット同様に材料を入れて炊飯するわけで、フライパンは使わない。炊くという点でいうと、中華風の炊き込みご飯ということになるのかもしれないが、これがまたおいしいのである。
卵も加えるのだが、これは「再加熱」という機能を使う。保温状態で再び炊飯キーを押すと、2分間加熱されるというもの。保温中のご飯を、再度あつあつ状態にしたいときに便利な機能だが、「チャーハン」の場合は、炊きあがった直後に、仕上げにごま油と溶き卵を加え、再加熱するという目的で使用するのだ。
というわけで、クックブックの「焼豚とえびのチャーハン」を試した。お米2合分と材料を用意したら、固形の材料以外を内なべに入れ、「チャーハン」目盛りの2まで水を加えてよく混ぜる。その上に具をのせ、「チャーハン」メニューで炊飯する。炊きあがったら、混ぜずにそのまま上からごま油と溶き卵を回しかけ、再びふたをして再炊飯。すると卵がほどよく固まるので、ここでよく混ぜればチャーハンのできあがり。お皿に盛りつけ、上から刻んだネギをトッピングすれば、炊飯器で作ったとは思えない一品になる。
一口食べて、「これはいける!」と感動した。「チャーハン」目盛りの2で作れるのは3人前。3人前分のフライパンを振るのは辛いという方、また、冷や飯で作るとどうしてもパラッと仕上げらず、ベタっとしてしまうという方もいらっしゃるだろう。そんな方でも炊飯器1つで、おいしいチャーハンができてしまうのだ。最後にごま油を大さじ1杯入れるが、これを控えればカロリーも抑えられる。ぜひともお試しいただきたい。
炊飯器チャーハンの材料(最後にごま油も加わる) | 固形材料以外を入れてから、「チャーハン」目盛りの2まで水を加える | 最後に具を乗せる |
「メニュー」キーで「チャーハン」を選んで炊飯 | 炊飯直後の状態 | ごま油と溶き卵を加え、「炊飯」キーを押して再加熱 |
再加熱後の状態 | よく混ぜればチャーハンのできあがり | 炊き込みじゃないかというツッコミは不要なおいしさ!! |
炊飯後から、再加熱してチャーハンらしくなるまで。混ぜるほどにチャーハンらしくなった |
「煮込み」メニューとしては、「ミネストローネ」を試した。こちらは、目盛りはないので、所定の材料をすべて内なべに入れ、「煮込み」メニューで加熱時間を45分に設定し、「炊飯」キーを押すだけだ。
ふたをあけると、たっぷりの湯気の中からじっくり煮込まれたミネストローネが現れた。煮込むだけだが、これはおいしい。残り物野菜の片付けにもちょうどよく、煮込み用の電気鍋の代わりになる。
ミネストローネの材料 | 内なべに全て入れる | 「煮込み」メニューで45分 |
ミネストローネができた | 野菜をたっぷり、おいしくいただける |
2人分のミネストローネができたが、おいしさのあまり、一人で完食してしまった |
■ブラウニーやホットケーキも焼ける
最後は「ケーキ」メニューのご紹介だ。クックブックにない「ブラウニー」を焼いてみた。実は最近お気に入りでよく作るケーキなのだが、1ホール分を焼くのに、大きなオーブンや型は使いたくない。そこでふたをしたフライパンで焼いていたのだが、どんなに弱火にしても、火に近い底が焦げやすいことが悩みだった。そこで、自宅の炊飯器で試してみようと考えていたところ、「ケーキ」メニューを搭載した「tacook」が現れた。これはやってみるべき! というわけだ。
結果は大正解! 底が焦げることもなく、炊飯器の内鍋1つで見事なブラウニーを作ることができた。筆者の悩みは一気に解決である。取り出す際、内鍋をひっくり返したところ、ブラウニーはあっさり抜け落ちた。これなら内鍋にバターを塗って……と余分なカロリーを使う必要もない。
今回は30分からスタートし、様子をみながら15分+10分と追加して焼き上げた。焼き時間を追加しやすいところも「tacook」のいいところだ。使用後、ご飯にココアの匂いがつくのではと心配したが、まったく気にならなかった。
調理メニューのない炊飯器でもホットケーキを焼けるが、中には生焼けになってしまうものもあるようだ。加熱の仕組みの違いと思われるが、ご覧の通り、「tacook」ならなんの心配もない。
普段通り、ブラウニーの生地を用意 | 内なべに入れて、「tacook」にセット | 「ケーキ」メニューにして、まず30分焼いてみることに。その後焼け具合を見ながら25分追加した |
焼き上がったブラウニー | 内なべからスポンと抜け落ちた。裏も焦げていない! |
ひっくり返して、表面に板チョコを塗り、固まるのを待つ | 固まるのが待てずに1切れ試食。おいしいので、以後炊飯器で作ることに決定! |
■炊飯器を積極的に料理に活用したい方におすすめ!
届いたときは、そのコンパクトさもあって、「小さい炊飯器ね」くらいの印象だったのだが、使っていくうちに、その機能性にも驚かされた。
デザインも炊飯器然としておらず、キュートでテンションが上がる。洗うパーツは、内鍋と内ふただけというメンテナンスのしやすさもポイントが高い。強いて気になる点があるとすれば、ご飯を混ぜる際に、内鍋が一緒にくるくると回転してしまうことくらいだろうか。ミトンで押さえれば問題ないが、意外とストレスになるので、改善していただけるとうれしい。
付属のしゃもじも気に入った。最初に手に取ったときは、小さくてオモチャのようだと感じたのだが、小回りが利きやすい。また、1度に盛りすぎないので、食べ過ぎも防げそうだ。常に大盛りにする男性ならざっくり盛れずに物足りないかもしれないが、お茶碗に適量という女性なら、気に入るのではないだろうか。
付属のクックブックのメニューも40種類と豊富で、いずれもおいしそうなものばかり。料理が楽しくなりそうなtacook、絶対おすすめである。6万円を超す高級炊飯器が人気を集めている中で、tacookはかなりユニークな存在だ。現在筆者が使っている炊飯器も、ふつう、かため、やわらかめ、すしめし、おこわ、おかゆ、玄米、 分づき米、玄米活性など、実に細かい。しかし、自分のライフスタイルを振り返ると「そこまで細かく炊き分けない」という実態もある。
それより、炊飯機能は必要なものだけシンプルに、実用性の高い機能をプラスしている炊飯器のほうが、使い勝手がいい場合もあるのだ。それゆえtacookは、基本のご飯はおいしく炊け、さらに「クッキングプレート」で簡単なおかずが同時に作れるため、非常に好感が持てた。
2012年4月24日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)