長期レビュー

フィリップス「センソタッチ3D RQ1280CC」 その2

~物静かだが確かな切れ味を持つ回転刃
by 清水 理史

 
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)



「シュイーン」と静かに動き出す

 前回、その概要を紹介したフィリップスのシェーバー「センソタッチ3D RQ1280CC」。3つの回転刃をヘッドに搭載する独特のスタイルをさらに進化させ、可動部分を向上させることでアゴなどの凸部分へのフィット感を高めた最新製品だが、やはり気になるのはその実力。今回は、その剃り味をチェックしていこう。

 前回も触れたが、フィリップスのシェーバーは、いわゆる往復刃のシェーバーとは、仕組みもそうだが、使用感もかなり異なる製品だ。

本体前面の部分を押し込むと電源がオンになる。回転刃のため振動がほとんどなくスムースに動作する

 その驚きは、電源を入れたときから始まる。本体の電源ボタンを押しても、往復刃のように「ヴィーン」と高い音をたててふるえ始める……ということは一切なく、「シュィーン」という感じで、静かにヘッドが回転を始める。

 面白いのは、このとき握った手にあまり感触が伝わってこない点だ。電源投入直後こそ、モーターが回転する際の「クンッ」という反動が手に伝わってくるが、ほんのわずがなもので、一般的な往復刃のシェーバーのようなブルブルという絶え間ない振動は手に伝わってこない。

 往復刃に慣れている人ほど、この感覚は新鮮に感じるはずだ。そして、同時に不安を感じるかもしれない。これで、きちんと剃れるのか? と。


動作の様子。「シュイーン」という感じの音とともにヘッドが回転する。振動がほとんどない

振動もなく、肌にやさしい

実際にヒゲを剃っても振動をほとんど感じない。また、ヘッドが3つあるおかげで広い範囲を剃れる

 静かに回転するヘッドを肌に当てる。すると、「シャリシャリ」という軽い音とともにヒゲがヘッドに吸い込まれていく。

 ここで再び驚きを感じる。肌にも、ほとんど振動が伝わってこないからだ。

 往復刃のシェーバーの場合、肌に当てると、左右に細かく動作する内刃の振動が伝わり、ヘッドを当てている部分にブルブルという感触が伝わってくる。

 しかし、センソタッチ3Dの場合、この感覚がほとんどないのだ。ヘッドが肌に触れる感覚、そしてそこに吸い込まれたヒゲが回転刃で剃り込まれる感覚がわずかに伝わってくる程度で、いわゆるヒゲを剃っている感覚があまりない。

 しかも、ヘッドが3つという特殊な形状ゆえヘッド部分が肌に広く接触することから、当初は肌のどの部分のヒゲが剃られているのかがうまくイメージできない。

 往復刃の場合、肌に触れている部分が剃られている部分であり、そこがもっとも振動するため、文字通り、ヒゲが剃られる感覚を肌で感じられるのだが、センソタッチ3Dでは振動もなく、肌に当たる部分も広いため、この感覚があまりにも往復刃と違うのだ。

 このため、使い始めは、きちんと剃れているのか? と非常に不安を感じてしまう。

 しかし、実際にセンソタッチ3Dで剃った部分に指先で触れてみると、しっかりとヒゲが剃られたサラサラした感覚が指に伝わってくる。この感覚は、とても新鮮だ。


実際にヒゲを剃っている様子。軽くすべらせるだけで、しっかりと剃れる。振動もなく肌への負担が軽い

 イメージで言うと、スマートと言おうか、ジェントルと言おうか、とにかく肌に静かに滑らせているだけで、いつの間にかヒゲが剃れているという剃り味になる。

 筆者は、これまでパナソニックの4枚刃ラムダッシュ、ブラウンのシステム7、そして今回のフィリップス「センソタッチ 3D RQ1280CC」と、メジャーどころの3つのシェーバーを長期レビューしてきたが、今回のセンソタッチ3Dは、これまで使ったシェーバーの中で、もっとも静かで、もっとも肌にやさしい製品と言ってよさそうだ。

 剃った後も肌に残るビリビリとした振動もないうえ、非常にサラリとした感覚の剃り味を楽しむことができる。これは一度は体験する価値ありだ。


感覚の違いをイメージしながら肌に当てる

 もちろん、剃り具合も文句ない。前回も紹介したが、センソタッチ3Dの各シェービングヘッドには、それぞれ内刃が3枚搭載されている。これにより、いったん、ヒゲを引き起こしてから剃ることができるため、深剃りも問題なくできるのだ。

 また、ヘッドの編み目部分の形状もかなり工夫されているため、長いヒゲやクセヒゲなどもしっかりとヘッドに取り込んで剃ることができようになっている。

 このため、実際に、往復刃のシェーバーと剃り比べてみても、ヒゲの剃り残しなどは見当たらないうえ、剃った後の肌の感触もスベスベとしており、きちんと根元からヒゲが剃られていることが確認できた。

ヘッドの形状。隙間の形状が工夫されており、長いひげやクセヒゲなどもしっかりとキャッチするヘッド内部の様子。目では確認できないが、内部に刃が3列あり、ヒゲを引き起こして剃ることができる

 ただ、最初のうちは、センソタッチ3Dのヘッドの形状を考慮し、どの部分でどのヒゲを剃るかをイメージしながらでないと、うまく剃れない。

 前述したように、往復式の場合、肌に当てている部分=剃れる部分ということになるが、センソタッチ3Dの場合、クローバーのような形状に3つのシェービングヘッドが配置されているため、肌に当てている部分の中心ではヒゲが剃れず、その3つの周囲でヒゲが剃られる。

 つまり、肌に当てている中心ではヒゲが剃れない、ということをイメージしながら使わないと思い通りにヒゲが剃れないのだ。

 特に顕著なのは、鼻の下あたりだろう。慣れれば、3つのシェービングヘッドのうちの1つだけを鼻の下に滑らせればいいのだけとわかるのだが、ここは最初、大きすぎるヘッドをどう当てて剃ればいいのかに悩んでしまう。同様に、もみあげの際など、細かな部分を思い通り剃るには若干の慣れが必要だ。

 とは言え、気を配る必要があるのは、細かな部分くらいで、たとえばアゴの部分などは、むしろその独特の形状のおかげでかなり剃りやすい。

 もともと、この形状のおかげで、アゴの下の首に近いあたりなど、凹部分はヘッドが反るような感じでフィットするため、とても剃りやすいのだが、今回のセンソタッチ3Dから、ヘッドが内側にも傾くようになったおかげで、アゴの部分などにヘッドを当てても、うまくアゴを巻き込むようにしてシェービングヘッドが肌にフィットし、ヒゲを根こそぎ剃ることができるようになった。

 よって、ヘッドの形状と現在肌に当たっているヘッドの部分のイメージが一致するようになると、広いシェービング範囲のおかげで、短時間でヒゲを剃れるようになる。これは往復刃では味わえない剃り味と言えそうだ。

最初は鼻の下をどう剃るかにとまどうが、ヘッドを1つだけ使えば楽に剃れるヘッドの形状が独特なおかげで、アゴの下なども剃りやすいヘッドが新たに内側にも傾くようになったため、アゴの凸部分にもフィットする

気になるお手入れは?

 というわけで、今回は実際の剃り味についてチェックしてみたが、独特のヘッドをうまく使いこなせるようになると、静かで、やさしく、それでいてしっかりと剃れる、この剃り味がなかなかクセになってくる印象だ。

 後は、お手入れがどうなのかがやはり気になるところだろう。この点については次回詳しくチェックしていきたい。



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2010年9月10日 00:00