長期レビュー
東芝「鮮度名人 GR-A56R」 最終回
■冷蔵庫の花形機能
鮮度名人 GR-A56R |
ところで、冷蔵庫で、もっともグッと来るポイントは? と聞かれたら何と答えるだろうか。
もちろん人によって答えは違うとは思われるが、筆者は断然、冷凍機能だ。マイナス数十度の極限の世界、フル回転するコンプレッサー、カチカチへの変貌、永遠の姿……台所の異世界とでも言おうか、そこには何となく男心をくすぐる何かがあるような気がする。
しかも、最近では、熱いものをそのまま入れたり、熱・冷混在させた状態で凍らせたり、凍らせた状態でも切りやすくしたりと、「どうなってんの?」と思わせるような最新技術が使われていたりもする。
おそらく、開け閉めの多い冷蔵室の温度を保ったり、今回取り上げた「鮮度名人 GR-A56R」のように湿度を保つなどといった方が技術的にはよほど難しそうな気がするが、いかんせん派手に見えるのは、やはり冷凍機能。そういった意味では、冷蔵庫の花形機能と言っても良いだろう。
■ごはんの保存に便利な熱もの冷凍
というわけで、今回の東芝の「鮮度名人 GR-A56R」の冷凍機能を見てみると、その特徴は大きく2つある。
1つは炊きたてのご飯や煮込み料理などもそのまま冷凍できる「熱もの冷凍」に対応していること。もう1つは冷凍室の容量がたっぷりと大容量なことだ。
まずは、熱もの冷凍について見ていこう。この機能は三菱電機やパナソニックなど他社製の冷蔵庫にも搭載されているが、要するに作りたての食材なども事前にさまさずに、そのまま冷凍庫に入れて凍らせることができる機能だ。
我が家では、よくご飯が余るのだが、今までの冷蔵庫では余ったご飯を炊飯器から出してラップでくるみ、しばらく冷まして常温になってから冷凍していた。このため、時間も手間もかかるうえ、ご飯の水分が抜けてパサパサになることも珍しくなかった。
これに対して、今回の東芝の「鮮度名人 GR-A56R」では、炊きたてのご飯もそのまま冷凍できる。「鮮度名人 GR-A56R」は、中段(右側)と下段が冷凍室になっているのだが、熱もの冷凍には、このうちの中段の冷凍室を利用する。
「あちっ」と言いながら炊きたてのご飯をラップにくるみ、中段の冷凍室にあらかじめセットされていたアルミトレイの上にご飯をセット。冷凍室を閉じてから、上段内部にある「熱もの冷凍」というボタンを押せば完了だ。
ご飯をラップでくるむ。炊きたてでもOK | 中段の冷凍室を利用。アルミパネルの上に置く | 冷蔵室の中のスイッチで「熱もの冷凍」をオン。これで冷凍開始 |
これで中段の冷凍室の温度が一定時間急速に下がり、熱い食材も一気に急速冷凍することができる。「熱もの冷凍」の動作は150分で自動的に切れるのだが、だいたい3時間ほども放置すれば、炊きたてのご飯もカチカチに変貌する。
もちろん、ご飯だけでなく料理などもそのまま冷凍できるので、あまったカレーやシチューなどの冷凍保存にも向いている。
試しに、ご飯と一緒に夕食で余った煮込みうどんも一緒に冷凍してみたところ、こちらも3時間ほどでカチカチに凍らせることができた。
もちろん、レンジで温め直すことで、どちらもおいしくいただくことができた。特に、うどんの場合、そのまま鍋で保存すると、半日もたつとうどんが汁を吸ってのびてしまうが、今回、試してみた限りでは一晩放置してもうどんがのびてしまうことはなかった。調理済みの麺類の冷凍保存というのもなかなか便利かもしれない。
我が家では夏でもよく食べる煮込みうどん | 器に移して冷凍してみる | ご飯と一緒に冷凍開始。結構熱いが大丈夫か? |
熱もの冷凍開始から約3時間後 | ご飯もうどんもカッチカッチ。ちなみに鍋のうどんはのびていたので、保存するなら冷凍の方が良さそう |
■トータル164Lのたっぷり収納
「鮮度名人 GR-A56R」の冷凍機能のもう1つの特徴は、冷凍室の容量が大きく、冷凍食品などをたっぷりと収納できる点だ。
これまでのレポートでも紹介したように、「鮮度名人 GR-A56R」は、高い湿度を実現する冷却能力の実現によって、従来、冷蔵庫の一番下にあった野菜室を通常の冷蔵室と一体化してしまった製品だ。
このため、冷蔵庫の半分より下の部屋はすべて冷凍室となっており、中段左側が製氷室、中段右側が前述した熱もの冷凍用の冷凍室(通常の使い方もできる)、そして一番下の引き出しがすべて冷凍室となっている。つまり、野菜室がなくなったことで、その分、冷凍室が大きくなったわけだ。
一番下の引き出しはすべて冷凍庫。ここだけでも容量は137Lとかなり大きい |
具体的にどれくらい大容量なのかというと、一般的な550Lクラスの冷蔵庫の場合、下部にある引き出し式の冷凍室の容量はだいたい100~120L程度となるところ、「鮮度名人 GR-A56R」の冷凍機能では137Lと一回りほど大きい。中段の熱もの用冷凍室を普段の利用に使えば、さらにプラス27Lで164L、製氷室まで合わせればトータルで179Lという大容量だ。
と言っても、どれくらい食材を入れられるのかがイメージしにくいので、実際に冷凍食品や長期保存したい肉類を買ってきて収納してみた。
同社の製品情報ページでは511LのGR-A56Rで買い物かご6個分の冷凍食品を収納できると紹介されているが、さすがにそこまで買う勇気はなかったうえ、どう考えても入りきらないと思われたため、買い物かごで2カゴ分、約12,000円分、33アイテムの食材を用意してみた。
近所のスーパーで大量購入。こんなに買い物をしたことがないので、何を買って良いのかかえって迷った | 12,000円、33個の冷凍食品。カゴでは2つ分。袋では3袋強といったところ |
「鮮度名人 GR-A56R」の冷凍室は、内部が2つの引き出しで区切られており、合計3段の構成になっている。
一番上の棚は冷凍室を引き出しても内部に残る構造になっているため、温度変化を嫌う食材や長期保存したい食材をしまっておくのに最適。まずは、ここにすぐには食べない冷凍食品やアイスクリームなどを入れてみた。
買ってきたものを入れる前の様子。保冷剤なども含め、すでに十数品が保管されている | 一番上のケースにアイスやすぐには食べない食材を保管 |
続いて、中段の引き出し。ここはさほど高さがなく、引き出しを開いたときに一番最初に見える部分となる。よって、普段のお弁当で使う冷凍食品や残った食材など、よく使う食材を保管。後から入れやすいように、スペースを空けて余裕を持たせておく良い。スペースに余裕があると、透明のケースから下も除けて食材の確認もしやすい。
なお、この中段ケースの左側の一角はホームフリージング用となっている。生鮮食品などをアルミプレートの上にセットして、「熱もの冷凍」と同じボタンを押して「一気冷凍」を選ぶと肉などの鮮度を保ったまま急速冷凍できる。よって本来は左側は開けておくべきだが、今回はさすがにすべて使わないと入りきらなかった。
続いて2段目。よく使うものを収納。本来、左側は開けておくべきだが、もはや余裕なし | 一番下に比較的大きなものを収納。結構、詰め込まないと入らなかった |
最後の一番下は、ハコものなどの保管に適している。冷凍食品などのストックに使うと便利だろう。
というわけで、すでに買い物カゴ1カゴ分程度収納しておいた状態の冷凍室に、さらに2カゴ分入れてみたが、何とか収納することができた。さすがに多すぎると入りきらない可能性もあるが、一般的な家庭であれば、これだけ収納できれば十分だろう。
■氷も素早く清潔に
製氷室。氷のサイズはわりと小振り |
最後に、これから夏の季節に欠かせない製氷機能についても触れておこう。買い換え前に使っていた古い冷蔵庫は自動製氷機能が壊れていただけに、数年ぶりに使う自動製氷機能は実に便利。いつも氷があるというのがこんなに楽だということにあらためて気づかされた。
できあがる氷は自分で水を入れて凍らせるトレー式のものと比べると、いくぶん小振り。コップに入れてジュースを飲むなら4~5個は欲しいサイズだが、小さい分、水筒などには入れやすい。
娘が通う小学校は毎日水筒を持参することになっているが、最近では氷入りの麦茶が定番になっている。
水タンクは冷蔵室にある | タンク本体。さほど大きくない | 上のフタの部分をスライドさせて給水する。ミネラルウォーターもOK |
このほか、「鮮度名人 GR-A56R」の製氷機能の特徴としては、タンク、および製氷皿がAg抗菌加工となっていること、給水経路のパーツが洗いやすいこと、ミネラルウォーターを使えることなどがあるが、「熱もの冷凍」と同様に急速な冷却で氷を早く作る「一気製氷」という機能も利用できる。この機能をオンにすると、1時間に10個の氷を作れるので、急な来客などで氷が足りないなどというときなどにも重宝する。
パーツを分解しやすくお手入れも簡単 | 一気製氷なら1時間で10個の氷を作れる |
■まとめ
以上、4回に渡って「鮮度名人 GR-A56R」をレビューしてきたが、まとめとしては、いろいろな意味で気を遣わずに済むのが、この冷蔵庫の特徴ではないかと言える。
冷蔵品は、野菜だろうが残り物だろうが、ラップなしで、とにかく冷蔵室に入れておけば良い。野菜や果物の鮮度も長持ちするので、勢いで買ったもののなかなか食べる機会がない食材などもムダにせずに済む。
冷凍室も大容量なので、特売のときなどでも、入るかどうかを気にせず、たくさん購入してストックしておけるのは楽だ。
しかも、熱もの冷凍で、冷めるまでまって……なんてまどろっこしいことをしなくても良い。忙しい人や面倒なことが嫌いな人に便利だ。
問題は置き場所と搬入のみ。これさえクリアできるのならば、良い買い物だと言えそうだ。
2009年6月22日 00:00
「長期レビュー」は1つの製品についてじっくりと使用し、1カ月にわたってお届けする記事です。(編集部)