【IFA 2012】
Electroluxが魅せた適材適所のデザイン
IFA2012会場 |
独ベルリンのメッセ・ベルリンで開催中の家電見本市「IFA 2012」から、スウェーデンの家電メーカーElectrolux(エレクトロラックス)のブース展示を紹介する。
IFA2012は、世界最大級のコンシューマエレクトロニクスショウで、8月31日から9月5日(現地時間)の日程で開催されている。
エレクトロラックス社は、日本国内でも製品を展開しているが、ホームグラウンドであるヨーロッパでのイベントとあって、日本向けには見られない各種の製品を展示している。
展示ホール | ホール脇にはドラム式洗濯乾燥機をイメージしたSAMSUNGの巨大なモニュメントが設置されていた |
■使わない時は存在感を消すビルトイン型家電
エレクトロラックスのブース |
エレクトロラックスのブースはIFAの会場内でも、ひときわ大きく目立っていた。同ブースはオリジナルブランド「Electrolux」のほか、ドイツで展開している「AEG(アーエーゲー)」、同社が買収したイタリアの家電メーカー「ZANUSSI」の3つのブランドが出展しており、中央ヨーロッパでは一般的なビルトインタイプの冷蔵庫や食器洗い乾燥機から掃除機や調理家電、洗濯機まで幅広い展示を行なっていた。この記事ではまず、ビルトインタイプの製品を中心に紹介する。
ビルトインタイプ、つまりキッチンの棚や壁に組み込んで使う冷蔵庫や食器洗い乾燥機は、ヨーロッパ、特に中央ヨーロッパでは一般的で、割合としては約半分の人がビルトインタイプの冷蔵庫や食器洗い乾燥機を使っているという。
ブースで展示されていたそれらの製品は、まるで壁や備え付けの棚のように見える造りが印象的だった。冷蔵庫は、冷蔵室と冷凍室の2つの温度帯からなる2ドアタイプのものが主流で、日本のように野菜室や製氷室は設けられていない。操作ボタンも含め、全てのボタンが庫内に設けられているので、外観はとてもシンプルだ。
まるで壁に備え付けの棚のように見えるビルトインタイプの冷蔵庫 | 冷蔵と冷凍の2つの温度帯からなる2ドアタイプの製品が主流 | 操作パネルなども外側ではなく内側に配置されている |
食器洗い乾燥機も同様で、操作ボタンは全てドアの側面に設けられている。中央ヨーロッパは日本に比べて食器洗い乾燥機の普及率が圧倒的に高いこともあり、食器だけでなく鍋などの調理器具も食器洗い乾燥機で洗うことが当たり前だという。そのため、容量もかなり大きめだった。
冷蔵庫と同じデザインで統一された食器洗い乾燥機 | 見た目は備え付けの棚のように見える | ドアを開いたところ。日本の製品と比べるとサイズはかなり大きめ |
操作パネルはドアの内側に配置されている | こちらは黒を基調としたデザイン | 洗浄中の様子がわかるカットモデルも用意されていた |
また、日本よりもはるかに普及率が高いIHクッキングヒーターも「見えない」デザインがポイント。操作スイッチなどは表面にタッチすると浮き上がってくるタッチパネル式で、使っていないときは真っ黒の天面でしかない。エレクトロラックスは、レストランなどの厨房で使われる業務用製品にも積極的に取り組んでいることもあって、展示では「プロユースの性能を家庭で再現」というコンセプトのもと、プロのシェフを呼んだデモンストレーションなどを行なっていた。
操作パネルは普段は見えないデザイン | 表面に触るとボタンが浮かび上がる | こちらはオーブンとIHクッキングヒーターがセットになった製品。IHクッキングヒーターの操作はオーブンレンジの操作部で行なう。そのため、IHクッキングヒーターの表面には一切余計な装飾がない |
オーブンは、食材の内側の温度を確認しながら調理できる製品やスチーム機能を搭載した製品など高機能な製品が目立った。いずれも容量は日本の倍以上の製品ばかりで、4段、5段調理まで対応する製品が主流だった。
庫内容量73Lのオーブン | 4段調理が可能 | 日本のオーブンレンジでも搭載されているスチーム機能を搭載している製品が目立った。写真は給水タンク。タンクは取り外しできないため、上から水を入れるスタイルだ |
有名シェフを呼んでのデモンストレーションも行なわれていた | ローストチキンの中の温度を測る温度計が付属する製品。オーブンの中のチキンには細長い温度計が刺さっている |
■「見せるデザイン」の冷蔵庫
一方、日本では一般的な独立タイプの冷蔵庫は、ビルトイン型とは逆にスタイリッシュなデザインが多く採用されているのが印象的だった。キッチンで存在感を放つ赤やシルバーの本体カラーが採用されており、「見せる格好良さ」を体現していた。独立タイプの冷蔵庫もやはり2ドアタイプが主流だ。
独立タイプの冷蔵庫。ビルトインタイプの割合は半々だが、新築で家を購入する人の75%はビルトインの製品を選ぶという | 独立タイプの冷蔵庫も2ドアタイプが主流 | 庫内にはワインを冷やすための専用棚が設けられている |
操作ペネルは外側に設けられている | チルドルームには中の湿度を調節するためのレバーがついていた。レバーの開閉具合で湿度を調整するという |
■ヨーロッパ共通のエコ規格「エナジーレベル」
製品の省エネ性能を示すエナジーレベルのシール。製品選びの基準の1つで、メーカーが表示することが義務化されている |
なお、冷蔵庫やオーブンレンジ、洗濯機など全ての家電製品には「エナジーレベル」のシールが貼られている。これはその製品の省エネ性能を表すヨーロッパの共通規格で、消費電力量に加え、運転音、洗濯機の場合は使用水量なども含めた省エネ性能をA~Gの7段階で表示するというもの。これは全てのメーカー、製品で表示することが義務づけられており、製品選びの指標の1つとなっている。
7段階あるうちのGレベルの製品は販売が許されておらず、今後はFレベルの製品も販売不可になるという。ヨーロッパにおいても、家電製品の省エネ性能は飛躍的に向上しており、最近では「A+」や「A++」、「A+++」の製品まで登場している。IFAに出展しているほかの会社のブースでは、優良なエナジーレベルを大々的に打ち出しているところもあり、省エネ性能への関心の高さが伺えた。
ちなみにヨーロッパの冷蔵庫の消費電力は日本の製品に比べてかなり低めになっている。これは、日本の製品が多機能であることも関係あるが、霜取り運転時に使う電力が少ないことが原因だ。冷蔵庫は、庫内の温度を保つために冷却器を使っているが、温度差で結露が発生し、冷却器の周りに霜が付着する。湿気の多い日本では霜が発生しやすいため、頻繁に霜取り運転を行なう必要があり、日本の一般的な冷蔵庫では200℃以上の高温で霜を除去する。
ヨーロッパ、特にスウェーデンやドイツ、イギリスなどの中央ヨーロッパは低温で湿気が少ないため、霜が付着しにくく、霜取り運転を行なう必要がほとんどなく、消費電力を大きく抑えられるという。
(阿部 夏子)
2012年9月3日 00:00