LED電球、どれを買う?
三菱電機オスラム「PARATHOM 全方向タイプ一般電球形」
■空洞で冷やす放熱部と立体的なLEDの配置、独特なデザインのLED電球の使い道
三菱電機オスラム「PARATHOM(パラトン) 全方向タイプ一般電球形 11.4W 810lm(電球色) LDA11L-G/D」 |
白熱電球らしい光の広がりと明るさを狙った「全方向タイプ」のLED電球が各社から登場しているが、光を広げるための独自の工夫が、それぞれの製品でうかがえる。その中から、特異な風貌を持つ調光ができる全方向タイプのLED電球を紹介しよう。三菱電機オスラムのLED電球「PARATHOM(パラトン) 全方向タイプLED電球 LDA11L-G/D 810lm」だ。
明るいLED電球の実現には「放熱」がカギと言われている。パラトンの場合、外気を取り込んで効果的に放熱を促すよう、空洞のあるヒートシンクを設け、その隙間を埋めるように、6つのLEDパッケージを3次元的に配置しているのが特徴的。一見すると、放熱部が光源部にまでざっくりと食い込むような大胆な見た目は、白熱電球とは印象がずいぶん異なる。
しかし、大胆な放熱構造とLEDパッケージの立体的な配置で、明るさは60W形白熱電球相当の810lm(日本電球工業会基準)を実現しており、配光角度は白熱電球(310度)よりも広い330度と、業界トップクラスの高さを誇る。しかも調光器にも対応しているのは、全方向タイプとしてはこのパラトンのみ。他社製品には無い大きな特徴だ。
外気を取り込み、放熱を効果的にする空洞構造のヒートシンク | 6つのLEDパッケージを3次元構造で配置。合計36個のLED素子で330度の配光角度を実現している | 内部のLED素子は、口金側に傾斜している(カタログより抜粋) |
左:白熱電球の光の広がり方 右:パラトンの広がり方。ソケットの影がほとんどできない | LDA11L-G/Dは調光器に対応している。調光器を最小まで調節しても消えずにスムーズな調光ができる |
メーカー名 | 三菱電機オスラム |
シリーズ名 | PARATHOM (パラトン) 全方向タイプ |
品番 | LDA11L-G/D |
全光束 | 810lm |
白熱電球と 比較した明るさ | 60W形相当 (ランプ単体) |
定格消費電力 | 11.4W |
口金タイプ | E26 |
光色 | 電球色相当 (3,000K) |
定格寿命 | 40,000時間 |
調光器対応 | ○ |
密閉器具対応 | - |
配光角度 | 330度 |
サイズ(高さ×直径) | 115 x 62 mm |
重量 | 190 g |
実売価格 | 3,280円 (yodobashi.com) |
【基本スペック編】
■サイズ比較
実測したサイズは113×62mm(高さ×直径)。白熱電球より19mm背が高く、直径も12mm太い。さらに、光源部にまで及ぶ空洞構造のヒートシンクや、3次元的に配置されたLEDパッケージから透けて見える素子の様子は、電球のイメージとはずいぶんかけ離れた印象だ。しかし全体的なシルエットとしてみれば、白熱電球のようなくびれもあり、口金付近の径は33.5mmで白熱電球よりも1.5mm太い程度。特徴的な見た目とは違い、多くの器具に取り付けられるだろう。
重量は実測で192gと、軽量化が進むLED電球の中ではかなり重い。撮影中に電球の重さで器具が傾くような事は起こらなかったが、多灯タイプや華奢な器具に取り付ける場合は、配慮する必要がありそうだ。
高さは113mm(中央)。60W形白熱電球(左)より19mm背が高いが、電球形蛍光灯よりも1mm低い。白熱電球と見た目は異なるが、シルエットは白熱電球を模しており、くびれがある。重量は192gとLED電球の中では重い | 直径は62mm(中央)で、白熱電球や電球形蛍光灯よりもふた周り大きな印象だ。ヒートシンクの隙間、透けるLED素子が目立つ |
■器具に取り付けたようす
器具の収まりは問題ないが、見た目から好みが大きく分かれそうだ。口金付近こそ、覗き込まない限り見えないが、放熱部の大きな隙間がかなり目立つので、電球が目に触れやすい器具にとりつけるのは勇気がいるかもしれない。
【白熱電球:60W形】 電球の端が少し覗いている程度の角度から撮影した | 【電球形蛍光灯】 電球の直径は白熱電球と同じだが、背が高いため、内側のらせん状の蛍光管が透けて見える | 【パラトン LDA11L-G/D】 電球が器具からはみ出すことはないが、電球が丸見えになる器具の場合、ヒートシンクの隙間がかなり目に付く。好みが大きく分かれそうだ |
■光の広がりかたと配光性
光の拡散性は、白熱電球と肩を並べる。口金付近へも強い光がしっかり届き、四方八方に光が広がっている。隙間が大きく開いた放熱部の影響は全く認められず、床や壁に影や光のムラができず、光が白熱電球のように、全体的に均一に拡散する印象だ。
【白熱電球:60W形】 ソケットぎりぎりまで明るい。電球を中心に床面に近いところから光が広がっている | 【電球形蛍光灯】 白熱電球と同じように、ソケット付近まで光が届く。しかし遠くまでは届かない印象だ | 【パラトン LDA11L-G/D】 白熱電球のように、床方向、横方向にも光がしっかり拡散している。なお、ヒートシンクの隙間、立体的に配置されたLEDパッケージの影響は全く出ていない |
電気スタンド型の器具に取り付けてみると、本製品の光が下方向へしっかり届いているのがわかる。影は強めに出て、テーブル面に映る光の輪は白熱電球よりも小さくなるが、器具のシェード(傘)のほぼ中央から輝く姿は、器具の雰囲気を十分に引き出していると言える。電球が見えなければ、このようなスタイルの器具にはぴったりだろう。
■明るさ(55cm直下の照度)
調光器無しの場合、直下照度は740lxだった。数値上では800lxの60W形白熱電球よりも下回ってしまったが、壁面へも光がしっかりと届いており、比べても暗くなった印象にならない。
【白熱電球:60W形 800lx】 光源を55mm上方にセットし、直下照度を計測した | 【電球形蛍光灯:475lx】 | 【パラトン LDA11L-G/D 調光器無し:740lx】 直下照度は白熱電球よりもわずかに低い。しかし明るさの印象はさほど変わらない |
調光器を通して点灯した場合、直下照度は調光100%でも685lxと、調光器なしよりも数値が落ちる。ただし、見た目の明るさは、調光器なしとあまり変わらない印象。無段階調光ができ、最小に調光した時の直下照度は14.3lxだった。
【パラトン LDA11L-G/D 調光器100%:685lx】 | 【パラトン LDA11L-G/D 調光器約50%:400lx】 | 【パラトン LDA11L-G/D 調光器最小:14.3lx】 最小まで光を絞っても、消えずにほのかな明るさまで調光できる |
白熱電球と見た目が異なり、大きく重い点は気になる。しかし、明るさ、光の広がりは60W形白熱電球に劣らない、満足いく結果が得られた。空洞のある放熱 部の影響は無く、6つに分かれたLEDパッケージによる多重影も感じられない。調光もスムーズにできた。電球が目立たない器具や場所で使えば、違和感無く 実力を発揮してくれそうだ。
【実使用編】
ここからは実際の生活シーンに取り付けて、実際の室内環境での実力を探っていく。なお、密閉器具には対応していないので、浴室や密閉型のインテリアライトには使用していない。■玄関
明るさ、拡散性、光色、いずれも玄関にふさわしい。玄関全体に心地良い明るさが届き、60W形白熱電球よりも明るい印象になった。特に、床付近の明るさは白熱電球以上で、隅々まで明るい。光色は白熱電球より白っぽくなるが、十分に暖かみが感じられる。明るくて親しみやすい快適な玄関が演出できる。
【白熱電球:60W形】 床面まで光が届き、十分な明るさがある | 【電球形蛍光灯】 比較すると色が不自然に感じる。また、点灯して明るさが安定するまで時間がかかる | 【パラトン LDA11L-G/D】 60W形白熱電球よりも、全体的に明るい印象になった。床付近までしっかり明るい。暑苦しさを抑えたスッキリとした電球色は、玄関にふさわしい雰囲気が演出できる |
■トイレ
もしトイレに60W形白熱電球を使用しているならば、交換しても申し分ないだろう。白熱電球と変わらない明るさで、影の落ち方も器具との距離があると柔らかになる。
とは言うものの、トイレは短時間しか過ごさない場所なので、高価な本製品を使うのはもったいないかもしれない。広い空間ではないので、低価格化が進んでいる配光角が狭い一般形のLED電球でも十分だろう。
【白熱電球:60W形】 明るく気持ちよく過ごせる | 【パラトン LDA11L-G/D】 60W形白熱電球と変わらない明るさ。しかし、短時間しか使わないトイレに高価なLED電球は正直もったいない |
なお、トイレは点滅頻度が高いため、点滅回数が寿命に影響する電球形蛍光灯の写真は割愛する。
■リビングルーム
透過タイプの器具との相性はとても良い。器具全体が輝き、60W形白熱電球と遜色ない明るさが得られた。真下にあるテーブル面の明るさは少し落ちるが、その周りの床面はむしろ明るい印象だ。自然な光色は、リビングルームに適している。白熱電球から取り替えて、不満を全く感じないだろう。
調光器に対応しているので、明るさが変えられる。団欒、リラックス、映画鑑賞など、部屋の過ごし方に合わせた明かりの演出も簡単だ。
【パラトン LDA11L-G/D×2 50%調光 透過タイプのシェード】 調光して明るさを落とせば、くつろいだ雰囲気が演出できる | 【パラトン LDA11L-G/D×2 調光 透過タイプのシェード】 最小まで明るさを落とせば、シアターモードとしても活用できる |
非透過タイプの器具でも、とても良い結果が得られた。天井からの反射光もあり、器具が持つ印象、光と影のコントラストも、白熱電球とほとんど変わらない印象だった。もちろん明るさを変えた演出も楽しめる。
【白熱電球:60W形×2 非透過タイプのシェード】 十分な明るさが得られ、コントラストのある空間になっている | 【電球形蛍光灯×2 非透過タイプのシェード】 白熱電球のように上部へも光が広がるが、透過タイプと同様、色がいま1つ | 【パラトン LDA11L-G/D×2 非透過タイプのシェード】 明るさ、光と影のコントラストは電球とほぼ変わらない。非透過タイプの器具でも、問題なく取り替えられるだろう |
複数の局所照明を組み合わせた使い方もお勧めだ。密閉器具には対応していないが、手持ちのスタンド等と組み合わせ、低い位置に器具を置けば、光は部屋全体に柔らかく広がる。くつろぎの空間にふさわしい、落ち着いた雰囲気のある空間が演出できる。読書にも十分な明るさがテーブル面へ届き、白熱電球と変わらない演出ができるだろう。
目に触れやすい器具に取り付けた場合、電球の見た目、眩しさが気になる |
ところで、電球本体の姿が直に見える器具に取り付けた場合、放熱部の隙間にできる影が目立つ。また、LEDパッケージは内部の素子が透けて見え、直視するとギラギラと眩しい。
しかし、見方を変えれば、一般的なLED電球では得られない使い道がある。きらめき感や影を演出するような器具に取り付けた場合、一般的なLED電球では得られない効果が期待できた。インテリア照明であれば、クリア電球の取り替えとしても活用できそうだ。
【クリア白熱電球:60W形】 クリア電球が付属するガラス製のペンダント。器具がきらめき、ガラスを通した光の屈折が映り面白い | 【東芝E-CORE LDA11L-G】 眩しさを抑えた東芝の光が広がるタイプは、器具のきらめき感や屈折した光は楽しめない | 【パラトン LDA11L-G/D】 屈折した光は弱くなるものの、器具のきらめき感がしっかり表現されている。電球の見た目も全く気にならない |
【クリア白熱電球:60W形】 クリア電球が付属する、影を楽しむ和紙のペンダント。天井映る影がインテリアを彩る | 【E-CORE LDA11L-G】 光が柔らかく広がる東芝のLED電球は、影がほとんど表れない | 【パラトン LDA11L-G/D】 クリア電球に比べて影はかなりあまくなるが、器具の特徴は損ねない。器具表面の孔を通してきらめき感も楽しめる |
■食事の風景
食事のシーンにも十分に活用できる。色温度は3,000Kと、白熱電球の2,850Kよりも高めなため、全体的に白っぽく見える。しかし、食事全体はおいしそうに見え、色のくすみはほとんど感じられない。食器の材質による白さの違いもわかり、ランチョンマットの本来の色合いも自然な見え方だった。取り付ける器具や高さによって、影が若干強めになるが、多重影の無い、きらめき感のある華やいだ雰囲気が演出できるだろう。
■60W形白熱電球と交換で、元が取れるのは【1年1カ月】
消費電力は、カタログ上では11.4Wだったが、実測で9Wだった。実使用で60W形白熱電球と遜色ないのに、消費電力は1/6以上節約できるので、確実に節電できる。なお、最小まで調光した場合は、0W(計測不能)だった。
初期費用となる電球代は、低価格化が進むLED電球の中で高めだが、1年1カ月で回収できる。電気代を回収してからも長期間使える上、調光器にも対応しているのは他社の全方向タイプでは得られないアドバンテージがある。過ごし方に合わせて調光すれば、さらに効果的な節電ができる。
電球形蛍光灯からの交換は、明るいLED電球の中では現実的と言える。消費電力の差はほとんど無いが、試算では蛍光灯の2.5個目の6年3カ月で逆転する。明るさや光色、点灯回数による寿命への影響を受けない点、調光器に対応している点は、電球形蛍光灯よりも間違いなく優れている。急ぐ必要はないが、そろそろ電球形蛍光灯を取り替えようと考えているなら、悪い選択ではないだろう。
使用光源 | 消費 電力 (実測) | 1カ月 | 3カ月 | 半年 (6カ月) | 1年 | 1年 1カ月 | 1年 8カ月 | 2年 | 4年 | 6年 3カ月 |
三菱オスラム パラトン LDA11L-G/D | 9W | 3,328円 | 3,424円 | 3,568円 | 3,856円 | 3,905円 | 4,241円 | 4,433円 | 5,587円 | 6,884円 |
白熱電球 40W形 | 37W | 269円 | 665円 | 1,329円 | 2,587円 | 2856円 | 4312円 | 5174円 | 10,348円 | 16187円 |
白熱電球 60W形 | 56W | 370円 | 966円 | 1,932円 | 3,792円 | 4,161円 | 6,319円 | 7,583円 | 15,166円 | 23,715円 |
電球型蛍光灯 60W形 | 10W | 1,445円 | 1,554円 | 1,719円 | 2,047円 | 2,102円 | 2,485円 | 2,704円 | 4,018円 | 6,886円 |
※電気代は1kWh=22円で計算
【白熱電球:60W形】 消費電力は56W。消費電力1Wあたりの発光効率は14.46lm/W | 【電球形蛍光灯】 消費電力10W。発光効率は75lm/W |
【パラトン LDA11L-G/D 調光器無し】 消費電力は9W。実測消費電力値の発光効率は90lm/Wとなる(公表スペックでは71.1lm/W) | 【パラトン LDA11L-G/D 調光器使用時】 調光すればさらに消費電力が下がる。最小まで明るさを調節した場合、消費電力はワットチェッカーでは計測できないほど低い |
■見た目は特徴的だが、明かりの質は高く、調光器にも対応。汎用性は高い
三菱オスラムの「LDA11L-G/D」を一言で表すなら、「見た目は気になるが、調光にも対応した完成度の高いLED電球」といったところだろうか。輝く様子が白熱電球と見た目が異なるものの、拡散性、明るさは全く申し分ない。光色は色温度の差から白っぽくなるが、暑苦しさを抑えた電球色で、演色性も良かった。
見た目以外で不満を挙げるなら、密閉器具に対応していない、価格が高価という点だろう。しかし、60W形白熱電球と肩を並べる明るさと配光性、かつ調光ができるのは、現時点でパラトンのみ。高価と言っても、白熱電球60W相当タイプのLED電球の中では、中ぐらいの価格設定だ。器具によってはクリア電球の代替も考えられるので、選ぶ価値は十分にあるだろう。なお、調光器の有無に関わらず、AMラジオの側で点灯しても、受信障害を受けることもなかった。
電球が見えにくい器具に限定するならば、明かりの質、汎用性の高さから“トップクラス”と言っても過言ではない。特に、調光器が付いていたために、今までLED電球への取り替えを諦めていた照明器具なら、パラトンは選んで損はないだろう。高い節電効果が期待できる調光対応のLED電球としてお勧めしたい。
三菱電機オスラム「PARATHOM 調光器対応 11.4W LDA11L-G/D」はこんなLED電球
・明るさ、拡散性ともに、60W形白熱電球と肩を並べる実力
・調光器対応で、調節はスムーズ
・見た目は好みが分かれそうだが、きらめき感を演出する器具に応用できる
・60W形白熱電球と交換した場合、1年1カ月で電球代が回収できる(1日8時間使用)
2012年6月11日 00:00