家電製品ミニレビュー

マキタ「充電式クリーナー CL140FDRFW」

~片手でちょい掛けができるハンディクリーナー
by 藤山 哲人
マキタ 充電式クリーナー CL140FDRFW

 工作好きには馴染みのあるメーカー「マキタ」。電動ドリルに丸ノコ、高圧タッカー(業務用の特大ホチキスみたいなもの)などなどのメーカーとして、個人用の電動工具から、業務用のコンプレッサ式工作機械まで取り揃えている超有名メーカーだ。しかし個人用とはいえ高価でなかなか手の出しづらいメーカーでもある。なにせプロ用と変わらない高品質でハイパワーな電動工具なのだ。

 つまりマキタの電動工具は、エルメスのバッグと一緒。

 持っているとステータスになる工具のブランド品なのだ!

 今回紹介するのは、コードレスの充電式クリーナー。リチウムイオンバッテリ搭載で、ニッカド式に比べ軽くパワフル、家庭でも「チョイがけ」に重宝しそうなこの掃除機を、実際に使用しレビューと共に数値データでも見てみよう。


メーカーマキタ
製品名充電式クリーナー CL140FDRFW
希望小売価格34,300円
購入場所楽天市場
購入価格23,415円


業務用の集塵機を作ってるんだから間違いないハズ!

 マキタは電動工具以外にも、ホテルやデパート、建設現場で利用する業務用集塵機(業務用なのでとても掃除機って言葉は似合わない)を製造・販売している。しかも、電動工具の心臓部であるモーターにも強く、バッテリ式の工具も多数リリースしているので、使う前からほぼ結果は見えているようなもの。

 いやいや。レビューに先入観は厳禁!ここは厳しく数値データも取ってレビューしてみよう。

 まずは通販番組でよく見かけるコレから。

セット内容は、本体にノズル、バッテリに充電器。バッテリと充電器を除いた本体だけのモデルは希望小売価格9,800円通販番組だとひとかけすると、見違えるようにきれいになるが……ゴミに見立てたビーズが何粒か残っているものの、通販番組そのまんま!

 充電式のハンディクリーナーは、だいたい7.2Vか12Vのバッテリを使うが、マキタの製品はリチウム電池ということもあって電圧は14.4Vとちょい高め。内蔵されているモーターも一般のものより強力なのだろう。

 ここでちょっとリチウム電池について説明しよう。

 乾電池やニッカド電池の最小単位は1.5V(厳密に言うとニッカドは1.2V)だ。この最小単位を「セル」と呼ぶが、リチウムイオン電池の場合、1セルが3.6Vとなる。デジカメ電池は、7.2Vとえらく中途半端な電圧になっているが、これは3.6Vのセルが2個入った電池になっているからだ。

 マキタの掃除機の場合は、14.4Vなので4セル内蔵しているという計算だ。ちなみに9Vの角型乾電池を「006P」電池と呼ぶが、これは1.5Vのセルが6個入っているという意味。またニッカド電池バックは、ほとんどが7.2Vか12Vだが、こちらもセルがそれぞれ6個と12個入ったものになっている。

 ちなみに筆者がふだん卓上用の掃除機として愛用している2,980円の掃除機に、床用ヘッドをつけてみたところ、こんな結果に。

こちらは100V式のサイクロン(もどき)掃除機。いつもは細いノズルをつけて卓上用として使っているので、床を掃除するのは初めてだえっ!ええーーっ!電源を切っているわけじゃない!まったく吸い込んでくれない!

 見ていて惚れ惚れするような違いが出た。というか2,980円モノはひどすぎる……机のゴミはちゃんと吸ってくれるのに。

 次に実験してみたのは、車の掃除。床用の長いパイプを外して、掃除をしてみたところ、小回りも利くし、吸引力もなかなかのもので実用性は十分だ。本体重量は1.3kg。羽のように軽いとまでは言えないが、男性なら壁や天井の掃除も楽々といったところだろう。


床掃除から卓上までノズル七変化

 ノズルの組み合わせて無理のない姿勢であちこちを掃除できるというのも魅力の1つだ。

床掃除の標準状態。床用ヘッドを外せば、スポットの吸い込みも可能。サッシの隙間などは、ロングホースの先に隙間ノズルを取り付けられる。ロングホースを外せば、カウチポテトなどで汚れた床やソファーをササッと掃除できる

 床用ヘッドの自由度も高く、高さ5cmほどの隙間でもスイスイ奥まで掃除できる。

隙間ノズルを直接本体につければ、卓上の隙間などの掃除が楽々うれしいのは、本体のみでも使えるところ。机の上の掃除にピッタリ本体をここまで倒しても、床用ヘッドは床に密着した状態

 ノズルに関しては、一般の掃除機に劣らない種類と組み合わせだ。

D.I.Y.好きならこんなところも魅力的

予備のあるネジ程度ならかまわないが、1cm角なのに数千円もするパーツを吸い込んじゃうと一大事だ

 電子工作に木工、プラモデルに金属加工をやる人なら、誰しも経験したことがあるはず。

 机に散らばったゴミの中にあった大事なパーツを吸い込んじゃった!

 紙パック式の掃除機だと、これは一大事である! 工作は無期延期状態となり、紙パックを破って新聞紙の上にゴミを広げ、数ミリ~数センチのパーツ探しとなる。それはもう、軽い大惨事。

 しかしマキタの掃除機なら安心。間違って吸い込んでも、ご覧の通りだ。

 吸い込んだゴミや大切な部品は、この集塵室に集まるので、いち早くパーツを探し出し工作を続けられる。

先端部分をクルリと45度回転させると、集塵室を分離できるD.I.Y.をやる人ならこの便利さに涙するだろう

 しかも、ホコリや髪の毛といった軽いゴミは本体のフィルター側にへばりつくので、集塵室のゴミは比較的きれいな状態だ。逆に言うと、一般的な掃除だとフィルターにへばり付いたホコリや髪の毛などを手で払い落とさなければならないというデメリットもある。

 さらにうれしいのはスイッチを半押しすると、高輝度LEDが点灯し机の下も明るく照らしてくれるのだ。

ヘッド部分を明るく照らしてくれるので、机の下に飛んでいった危険なアルミの削りクズなども確実に吸い込める。部屋の照明を全部落としても、これだけ明るく照らせる。

 そのままスイッチを全押しすると、吸引が始まる。これで吸い残したアルミクズが足に刺さって痛い思いをすることもない。一般ユーザーにもお勧めだが、D.I.Y.好きが一度使ったら手放せなくなること確実だ。


ともすればゴミを蹴散らすバズーカ砲のハンディクリーナー

 長いホースのついた一般的な掃除機であれば問題になることはないが、ハンディクリーナーの場合、設計がダメダメだとかえってゴミを撒き散らかすことになる。吸引力以上に性能を左右するのが、排気ダクトの位置だ。

 ヘッドから空気を吸い込んでいる以上、それをどこかに吐き出さなければならないが、ハンディクリーナーはコンパクトだけに、排気口の位置が限られてくる。

 筆者が愛用している掃除機は、ノズル根元のすぐ脇に排気口があり、ヘッドの先のゴミは吸い取るものの、周りにあるゴミをフッ飛ばす欠点があった。そのため写真のように改造を行ない、排気を横ではなく後ろに逃げるようにしている。涙ぐましい改造だ。

 マキタのクリーナーの場合、ノズルからできるだけ離れた場所に排気口が設けられており、排気は横に吹き出すものの机の上のゴミを撒き散らかすようなことはない。

筆者が愛用する掃除機は、排気口の位置に難があったため、自前で手を加えた。グレーの部分は、エアコンの屋外配管をカバーする部品で、これを掃除機の形状に合わせてカットしネジ止め。さらにコーキング材で、隙間をふさぎ、排気の向きを横から後ろに変えている改造する前は、周囲のゴミが飛び散って大変だった一方、マキタのクリーナーは、若干後部が絞られたデザインなので、真横よりは少し後ろに吹き出す感じだ。設計は完璧!


22分の急速チャージで連続利用20分のバッテリパック

バッテリは本体から着脱可能。おそらく電動工具のバッテリパックそのものだろう

 掃除機には、バッテリパック1個と専用の急速チャージャが添付されている。バッテリの取り付けは、カチッ!とワンタッチ、取り外しはロックレバーを下げるだけ。この仕掛けは、まさに電動工具そのものだ。

 充電はバッテリを急速チャージャーにセットするだけだ。お世辞にも「可愛い」とは言いがたいデザインだが、チャージ完了は好みのメロディーに切り替えが可能になっているあたりは、少し救われるかも? またチャージ中は冷却用のファンが回り、バッテリパックに空気を循環させているが、これが意外にうるさいのが難点。静音ファンがこれだけ出回っているのに、一昔前のノートパソコンのようなファーンという音が気になる。建設現場なら気にならないのかも知れないが……


添付の急速チャージャー。男性ならデザインがどうこう言う人は少ないだろうが、女性には敬遠されそうなデザイン。さすがは工具屋さんの掃除機だチャージ完了するとメロディー(4曲)とLEDでお知らせしてくれる。LEDの見方が分かりづらいが、太陽のようなアイコンは点滅、ただの○は点灯を示している

 カタログスペックによれば、フルチャージまで22分、連続利用時間は20分という。とはいえ、間欠利用で使ったトータル利用時間は20分以上使えたように感じる。部屋全体を掃除するものではないので、さほど連続で使うこともないだろう。なにより、スイッチは押している間だけONになるため、20分スイッチを押しっぱなしにすることはない。

 連続利用に近い状態になるのは、車の掃除ぐらいだろう。しかし5人乗りの乗用車であれば、バッテリ1本で十分足りるはずだ。8人乗りのワゴン車などを徹底的に掃除する場合は、途中で電池切れする可能性もある。

シートの掃除からダッシュボード、コンソールまでノズルを替えてさまざまな場所に対応できる

 そんなときは、別売のバッテリパック(定価:16,000円)を購入して2本用意するといいだろう。バッテリは着脱できるので、2本あれば交互にチャージと利用を繰り返し、何時間でも連続利用ができる。

 長時間使用しバッテリ残量が少なくなっても、吸引力が急激に弱くなることもないようだ。実際に吸引力を測定したわけではないが、感覚としては感じられなかった。

 またリチウムイオン電池なので、携帯電話のように継ぎ足し充電が可能だ。「ちょいがけ」した後にチャージャーにセットしておけば、いつでもフルパワーで吸引できる。


数値で掃除機を比較してみた

 掃除機のカタログスペックは、「吸込仕事率」という単位で表されるが、いまいちピンと来ない。この掃除機は25Wということだが、それがどれだけのものなのかサッパリ。

 そこで写真のような実験器具を作り、吸引力を調べてみた。

布切れとバネ測りを使った即席の測定器

 カーテンに掃除機をかけバシュ!と吸い込まれて凄いパワーで引っ張られるところからヒントを得た(笑)。ノズルの太さによって、測定結果が左右されるが「吸込仕事率」の表記よりはずっと直感的だ。

 実験では、一般的な掃除機も同様に測定し、どれだけパワーに差があるかも比較してみた。

掃除機吸込仕事率簡易測定器の結果騒音レベル
マキタ 充電式クリーナー25W47g79db
2,980円サイクロンもどき70W15g75db
96年製紙パック掃除機440W200g72db
ダイソン DC22170W200g84db
※紙パック掃除機は、新品のものを装着した状態。

 やはり一般的な掃除機に比べると、パワー不足は否めないようだ。とはいえ、ハンディクリーナー同士で比較してみると、その差は歴然。3倍以上の差が見られた。しかも2,980円は、100Vのコンセントから電源を取り、70Wという吸い込み仕事率なのに、床に落ちたビーズをまともに吸い込むことができない。かたや14.4Vで吸込仕事率25Wのマキタのクリーナーは、3倍の吸引力。

 騒音は、手元にあった騒音(デシベル)計を本体から1m離し測定した値。マキタのクリーナーは、79dbなので地下鉄の車内程度の騒音で、一般的な掃除機よりややうるさいという結果になった。一般的な掃除機は、70dbなので地上を走る電車や電話が鳴り響く事務所といったところだ。ダイソンの掃除機は、工場の騒音に近い。

 これはあくまでも、個人的に実験した結果なので、実際の性能差をそのまま表したものとは言えないが、参考程度にとどめていただきたい。

 決して安いとは言えないが、D.I.Y.に最適、一般家庭でも「ちょいがけ」に使えるハンディクリーナー。それがマキタの充電式クリーナーCL140FDRFWだ。





2009年8月31日 00:00