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藤本健のソーラーリポート
マンションでも太陽光発電はできる?
各住戸に電力供給し売電もOK「レーベンハイム戸田ソラリエ」の場合

 「藤本健のソーラーリポート」は、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電・ソーラーエネルギーの業界動向を、“ソーラーマニア”のライター・藤本健氏が追っていく連載記事です(編集部)


 先日、マンションの屋上に太陽電池パネルを設置し、共用部に利用する「パークホームズ大倉山」というユニークな事例を紹介した。同マンションでは、発電した電気を売電するのではなく、廊下やロビーの照明や給排水用のポンプ、またセキュリティーカメラなどのセキュリティーシステム、エレベーターといった用途に利用し、余った電気はバッテリーに貯めて、非常時に備えるというスタイルのものであった。

 その一方で、マンション住民がより直接的なメリットを得られる太陽光発電のあり方を示す事例も出てきている。先日、埼玉県戸田市に完成した「レーベンハイム戸田ソラリエ」がその1つ。総戸数175という、そのすべての住戸に対し、1戸当たり太陽電池パネル5枚分(出力1,165W)が割り当てられ、一戸建て住宅での設置と同様に売電ができ、非常時の電源としても使えるようなシステムになっているのだ。

 先日そのレーベンハイム戸田ソラリエの完成お披露目会に参加し、実際にどのような設備になっているのか取材してきたので、紹介しよう。

全国で2件目、実用新案登録の“戸別蓄電付き売電可能太陽光マンション”とは?

 戸田市とさいたま市南区の境付近に位置する場所に建てられた「レーベンハイム戸田ソラリエ」は、地上10階建、敷地面積6,972平方mで、総戸数175戸という大型物件。もともと倉庫があったというこの敷地の周辺は、低層の工場や倉庫などが並ぶ地区であるだけに、日当たりが良く太陽光発電にとっても絶好の場所。3LDKで2,300万円〜という価格設定で、最多価格帯が2,800万円と、この近辺の新築マンションとしては比較的安く、しかも太陽光発電という大きな付加価値がついた物件だけに、2012年8月にはすでに全戸が完売したという。

JR北戸田駅から徒歩数分のバションに建設された「レーベンハイム戸田ソラリエ」。11月末より入居が開始される パンフレットに掲載されていた、マンションの完成イメージ図。屋上のスペースに太陽光発電パネルが設置されている

 「自然にも家計にもやさしいマンション」という謳い文句を打ち出しているレーベンハイム戸田ソラリエは、冒頭で述べたように屋上に太陽光電池パネルが設置されているが、ただ太陽光発電をするだけでなく、大型の蓄電池とも組み合わせた先進的なシステムになっている。このマンションを企画したマンションデベロッパー・株式会社タカラレーベンは、これを「戸別蓄電付き売電可能太陽光マンション」と呼んでおり、実用新案登録をしているユニークなシステムとなっているのだ。

 タカラレーベンは今年4月に日本初の戸別蓄電付き売電可能太陽光マンション「レーベンリヴァーレ横濱鶴ヶ峰ヒルズ」を竣工しており、今回の物件はその2例目だ。自然エネルギーを扱うネクストエナジー・アンド・リソース株式会社の協力を得てこれら2つのマンションを建設したそうだが、一戸建ての太陽光発電システム設置住宅でもあまり見かけない、面白い仕組みになっている。

屋根いっぱいにHIT太陽電池がズラリ。各住戸に5枚ずつ電力を提供

今回は完成式ということで、屋上に上ることができた。通常は入れない

 屋上に上がってみると、目一杯に太陽電池パネルが並んでいた。

 通常、関東エリアだと南向きで30度程度の角度での設置が効率的だが、ここに置かれているものは5度とかなり寝かせた格好。担当者に聞いてみたところ、建物の高さ制限の問題から30度にはできず、5度で設置したのだとか。とはいえ、まったく角度がないと付着したホコリなどを雨で流し落とすことができないので、ギリギリ5度にしたという。しかしこれはこれで、できる限りいっぱい敷き詰めるためには角度を低くしたほうが設置しやすく、影もできないというメリットもある。また30度よりも風の影響を受けないため、構造的にも強そうだ。



屋上から東を向いたところ。ところ狭しとパネルが並んでいる。奥に見えるのは東北・上越新幹線と埼京線の線路 西を向いたところ。こちらもパネルが大量に並んでいる。基本的に人が立ち入らないため、柵などは設けられていない。奥に見えるのは首都高速 北東側の棟の屋根にも、パネルが敷き詰められている

 パネルは一見して“単結晶シリコンだな”と思ったのだが、実は、単結晶シリコン太陽電池とアモルファスシリコン太陽電池の二重構造になった、パナソニックの「HIT太陽電池」。型番を確認したところ、出力は出力233W、モジュール変換効率18.2%という非常に高性能なパネルだった。やはり限られた屋上の面積でできる限り多くの発電をするということから、こうした高効率のパネルが採用されているのだろう。

 よく見ると、太陽電池の横には部屋番号が記載されているが、これが各部屋に太陽光発電が行き届いている証拠。直列に並べた合計出力1,165Wの5枚のパネルが、各戸へと接続されていることを表している。戸建ての太陽光発電システムは3kW(3,000W)程度が主流なので、それと比べると出力はやや落ちることになる。

一見すると単結晶パネルのように見える 実際は単結晶とアモルファスの二重構造となった、パナソニックの「HIT太陽電池」。モジュール変換効率は18.2%と非常に高い 傾斜角度は5度。関東エリアは通常30度だが、高さ制限もあってこのようにしているという
パネルの脇には、部屋番号が記載されている 屋上で発電した電気は、各家庭に送られる

 では、太陽光発電で各戸に届いた電気は、どのように使われるのか? まず、これは玄関横のメーターボックス内に設置されている小さなパワコン(パワーコンディショナ)へと送られてくる。これはENEOSのマンション用パワコンで定格出力1.2kWというもの。これを通した上で、東京電力からの系統と連系するため、家庭内の電気用に利用できるのだ。

 また不在時など、発電した電力のほうが使用電力よりも大きい場合には、売電も可能。そのための売電メーターもメータボックス内に設置されている。まさに一戸建の太陽光発電設置住宅と同じような形だ。

玄関の脇にあるメーターボックス内に、発電関連の装置が入っている 中央の上から2つの装置が、発電・売電用のメーター。その下にあるのが、太陽光発電用のパワーコンディショナだ 部屋の中にあるモニターで、発電状況が確認できる

蓄電池で緊急時のバックアップ電源にも

メーターボックス内左側には、4kWhの蓄電池も搭載されている

 一方でこのマンションには、この太陽光発電のシステムに加えて、蓄電池が設置されている。設置場所は、太陽光発電のパワコンが設置されているメーターボックス内。パワコンと隣り合った形で、縦に長細い形状の蓄電池が設置されているのだ。

 これはイギリス製のディープサイクル鉛蓄電池で、容量的には4kWhと、結構な容量だ。ただ実はこの蓄電池、普段はまったく使うことがない。そう、これは完全に非常時のための蓄電池で、通常は常に充電回路コントローラを通じて満充電にしておくのだ。太陽光で発電した電気も、AC100Vを介して充電に使われる。

 しかし、いざ停電が起こったときに、これが威力を発揮する。室内には無停電コンセントが設置されており、停電になるとそれを自動的にそれを検知するとともに、専用の「無停電コンセント」につながっているリレースイッチが通常の電力から蓄電池側へと切り替わるようになっているのだ。

充電回路コントローラは玄関内側の下駄箱下に設置されているが、基本的にユーザーが操作することはない マンションの電力系統図。黄色い部分が蓄電システム部となる 部屋の一部に、無停電コンセントを設置。停電時には、蓄電池からの電力供給に自動で切り替わる

 見学会において、その切り替わるところを実演してもらった。具体的には、無停電コンセントに白熱灯のスタンドを接続してオンにしてある状態で、ブレーカーを落とすのだ。するとほんの一瞬、電気が消えるがすぐに灯る。この状態では蓄電池から、その横に設置されているDC/ACコンバータを通じて電気が供給される形になるのだ。


電力供給が蓄電池に切り替えたところ。ほんの一瞬だけ暗くなるが、そのほかはほとんど変化がない

 この蓄電池からは最大で1.5kWの出力が得られるというので、いざというときにIHクッキングヒーターなどを駆動させることも可能になっている。もっとも、この蓄電池から供給できるのは無停電コンセントだけであり、停電の間は天井にある照明やその他室内の電気は使えなくなる。そのため、普段どおりの生活ができるというわけでは決してない。とはいえ、いざというときに最大4kWh分の電気が利用できるというのは、心強いところだろう。

 ところで、数時間の停電で復旧する場合はそれでいいが、災害時などでしばらくライフラインが復旧しないという場合はどうするといいのか。この実用新案登録の蓄電システムでは、そこにもうまく対応できるようになっている。

 考え方はいたって簡単だ。太陽光発電を自立運転モードに切り替えると、パワコンの下に設置されている非常用コンセントから電気を取り出すことができる。普段、バッテリーには分電盤を経由して入ってくる電気から充電しているが、そのコンセントから抜いて、非常用コンセントへ差し替えればバッテリーに充電を行なうことができるのだ。

 もちろん、太陽光発電の最大出力が1kW程度なので、晴天時で1日かけて満充電にするのが精一杯といったところだが、マンションで昼間充電して夜に利用できるというのは大きな安心につながりそうだ。

平常時の充電状態。商用電力、または太陽光発電分から、必要に応じて蓄電池を充電する 停電時には、自動的に電力供給を蓄電側に切り替える 災害時など停電が長引く場合も、パワコンの自立運転コンセントにつなぎ代えることで、太陽光発電で蓄電池を充電できる
全戸がオール電化のため、各ベランダにエコキュートを搭載している

 また、このマンションは全戸がオール電化となっており、給湯はバルコニーに設置されているエコキュートを用いて行なう点も特徴。電気料金が値上げされた現在、光熱費はかなり高くなるのでは……とも思ったが、タカラレーベンによれば、太陽光発電とヒートポンプとの組み合わせによって、通常のマンションと比較して50%近い光熱費の削減ができる、という。もちろん、生活パターンや節電の仕方によってもだいぶ変わるだろうが、太陽光発電の効果があることは間違いなさそうだ。


太陽光付きで3LDK=2,300万円台はオトク

入居開始時から太陽光発電システムが利用でき、かつ価格も決して高くないというのは魅力的だ

 これだけのシステムが搭載されているので、かなり高価なマンションであると思ってしまうが、冒頭でも述べたとおり、3LDKで2,300万円〜と、近隣マンションと比較しても割安で、坪単価で見ても127万円から〜となっている。決して高くはない。

 「太陽光発電と蓄電池、そしてオール電化のためのヒートポンプを合わせれば、1戸あたり100万円以上の費用がかかっていますが、その費用を遥かに超える付加価値を出せていると自負しております」とタカラレーベンの営業担当者が話すように、普通のマンションには見られない特徴を備えた、魅力的なマンションだと感じた。管理費と積立修繕金を合わせた金額も月額20,000円程度と、そこも特別高い設定にはなっていないのも嬉しいところだ。

 なおメンテナンスについては、太陽光発電に関しては1年目と2年目に定期点検が行なわれ、加えてメーカーによる10年保証もあるという。保証期間内はもちろん、無料でのサポートが受けられるが、それ以降での故障については各戸での負担になるという。太陽電池の耐久年数は20〜25年程度と見ているが、その後に撤去するような場合の費用は、現在のところは積立修繕計画などに含まれていないという。この辺は将来的にマンション全体で考えていく課題にもなっていくだろうが、とりあえず分譲時にここまでの設備が敷かれている意味は大きそうだ。

 前回取り上げた共用部用に太陽光発電を設置するのと比較すると、パネルの量も発電システム、敷地面積もかなり大規模にはなるが、それだけに希少価値が高い。レーベンハイム戸田ソラリエのような、各戸で売電可能な太陽光発電システムが設置されているマンションは、今後も人気が高くなっていくのではないだろうか。





2012年11月26日 00:00