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パナソニックのニッケル水素電池「eneloop」が今、海外で人気

世界80カ国でeneloopを販売

 今年11月に発売から10周年を迎えるパナソニックのニッケル水素電池「eneloop(エネループ)」が、海外での存在感を高めている。

今年11月に発売から10周年を迎えるパナソニックのニッケル水素電池「eneloop(エネループ)」。「10周年記念キャンペーン」サイトがオープンしている

 2014年度、2015年度の2年間で、メキシコ、ブラジルをはじめとする中南米や、サウジアラビアをはじめとするアジア、中近東など、約20カ国で新たに販売を開始。現在、約80カ国でエネループを販売している。

 2014年度からは中国・無錫の自社工場でも、エネループの生産を開始しており、日本での生産体制とあわせて、グローバルに安定供給できる体制を整えた。

 パナソニックでは、二次電池としては、エネループのほかに、エボルタ(EVOLTA)ブランドによる「充電式エボルタ」を持つが、海外における新規市場開拓は、エネループを主力に据えており、海外での事業拡大を積極化している。

 日本では、2つの製品をあわせた市場シェアは90%以上となっており、国内二次電池市場全体の成長率がほぼ横ばいとなる中で、同社二次電池の成長戦略は海外に求めることになる。

 2014年度には5,200万個だったエネループとエボルタをあわせた二次電池の出荷台数は、2015年度は5,800万へと拡大する見込みで、その成長を支えるのがエネループによる海外展開の強化。同社における二次電池の海外販売比率は2014年度の65%から、2015年度は70%弱へと拡大する見込みだ。

海外では「eneloop」ロゴで統一

 パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社エナジーデバイス事業部商品企画部二次電池企画課・細谷忠相課長は、「パナソニックが持つ幅広い販路を活用することで、これまでエネループが展開してこなかった国にまで進出することができている。新興国の一部では、これまでにも、現地の企業がネットを通じて独自に販売していた地域もあり、エネループのブランドを知っている人も多い。エネループが持つ信頼性や知名度、そして、自己放電が低く、2,100回も繰り返し使える経済性の高さを訴求し、海外での事業拡大につなげたい」とする。

 同社のユーザー満足度調査では、ドイツ、中国、オーストラリア、タイ、インドネシア、ブラジルで90%以上の満足度を得ているという。

 日本では、「Panasonic」ロゴが本体中央に大きく表示されているが、海外では、「eneloop」ロゴが本体中央に大きく表示。その知名度を生かして、エネループブランドを前面に打ち出した形で販売しているのが特徴だ。

 ドイツでは、2008年にiFデザイン賞を受賞したほか、米国やオーストラリアでも、デザインに関する評価を得ており、そうした背景から、eneloopロゴで展開している。

 2014年度には、日本でも販売実績がある「eneloop chocolat colours」をオーストラリアで発売したほか、海外専用デザインである「eneloop tropical colours」を、欧州、オーストラリア、香港、タイ、シンガポールで発売。2015年度には「eneloop monochrome」をオーストラリアで発売。「eneloop tropical colours」は、本体デザインおよびパッケージデザインが、「iFデザイン賞2015」を受賞した。

日本でも販売されていた「eneloop chocolat colours」はオーストラリアでも発売された
海外専用デザインとして発売された「eneloop tropical colours」のブリスタパッケージ版
こちらは、「eneloop tropical colours」のPET素材パッケージ。欧州市場向けに用意された
欧州市場向けに発売した「eneloop tropical colours」のPET素材パッケージの裏面
海外専用デザインの「eneloop monochrome」

 日本でも「eneloop」ロゴの復活を望む声が多いが、「日本においては、電池といえばパナソニックという認知度が高い。また、Panasonicロゴによって信頼性が高まったという声もある。そのため、今後も日本においては、Panasonicロゴを表示する姿勢は変わらない」(パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社エナジーデバイス事業部商品企画部・村上直也部長)という。

2018年には世界シェア20%を目指す

 一方で、国ごとによって、販売施策は様々だ。

 インドでは、デジカメ利用者が多いことから、カメラ用フラッシュにエネループを活用することを訴求。写真家とコラボレーションして、写真を投稿できるサイトを用意。エネループの訴求を強化している。

「インド写真コンテストキャンペーン」サイトイメージ

 また、タイでは、昨年度までブリスターパックだけだったものを、小型店舗でも展示しやすいように、日本と同じPET素材を使用したパッケージへと変更。コンビニエンスストアルートを活用して、一般消費者への訴求を加速する。中国やシンガポールでも日本と同じPET素材のパッケージを使用しており、かつて日本で販売されていたようなeneloopブランドが前面についたPET素材のパッケージで販売されている。

シンガポールで発売されている旧パッケージ
タイで販売されているプリスターによるパッケージ。大型店舗向けとして現在も発売されている
シンガポールおよびタイで販売されているPET素材のパッケージ。eneloopのロゴが前面に入っている
欧州向けに供給されているエネループ
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社エナジーデバイス事業部商品企画部二次電池企画課・細谷忠相課長

 北米では、大型店舗での取り扱いが中心となっていることから、充電器とセットにした大型のパッケージを用意。欧州では量販店などでの取り扱いが多いことから、ブリスターパックで販売している。

 「2018年度には、エネループと充電式エボルタをあわせて、全世界で年間7,000万個を出荷することを目指し、現在、14%の世界シェアを20%にまで高めたい。これによって、世界トップシェアを目指す」(パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社エナジーデバイス事業部商品企画部二次電池企画課・細谷忠相課長)という。

11月に迎える発売10周年に向けてプロモーションも積極化

エネルーピーくんが入ったエネループの10周年ロゴ

 一方、2015年11月14日の発売10周年に向けて、プロモーション活動も積極化する考えだ。

 2015年4月には、13言語に対応した「エネループ10周年記念スペシャルサイト」を開設。商品の特徴や各国の販売店情報などを提供。繰り返し使うライフスタイルを訴求している。

グローバル版の「10周年記念キャンペーン」サイトのグローバル版
「10周年記念キャンペーン」でのぬいぐるみ化したもの

 そのなかでもユニークな取り組みが、世界にひとつだけのぬいぐるみがプレゼントされるキャンペーン。手書きのイラストを募集し、そのなかから審査で選ばれたイラストをぬいぐるみにして、100人にプレゼントする。

 「今後は、全世界で、ウェブとリアルイベントを連動したキャンペーンを実施していく。10周年という節目にあわせて、エネループの特徴を改めて訴求したい」と語る。

 基本的には、10周年を迎えたエネループとともに、充電式エボルタも含むパナソニックの充電池全体を対象にした訴求活動になるが、これまでにも、毎年、特別塗装を施した限定モデルなどを発売してきたエネループだけに、10周年という節目の1年でどんな限定モデルが登場するのかといった点でも注目したい。

 現在は、第4世代のエネループを発売しているが、これまでに2、3年ごとに技術進化を遂げてきたエネループだけに、次の進化も気になる。同社では、「将来に向けて、新しい技術開発にも取り組んでいる」とするに留まるが、第4世代エネループが登場したのが2013年であったことを考えると、そろそろ技術進化の時期に入っているのは明らかだ。

 現在、エネループの累計出荷は3億3,000万個。海外事業に弾みをつけることで、同社の二次電池事業に、さらに勢いがつくことになりそうだ。

大河原 克行