老師オグチの家電カンフー
第4回:オカマタレントも炊飯器もアッー! じゃなくて「圧」が大事という話
by 小口 覺(2016/2/24 07:00)
一時期、テレビに出てくるタレントがオカマだらけだった。オカマというと差別的なニュアンスを含むからか、オネエと呼ばれていたが、オカマはオカマよね。オカマ風に言うと何でも許されるような気がするのよ。普通だと叩かれるような発言でも、オカマというポジションからだと批判されにくいし、妙な説得力もあったりするじゃない?
それは性差を超えた扱いになるせいかもしれない。前に、台湾の人から「なぜマツコ・デラックスはミスタードーナツのCMに出ているのですか?」と聞かれたことがある。太りやすいドーナツのCMに、あんな太った人を出したら逆効果じゃないかというのです。
台湾では芸能人が同性愛者であることを公表するのはまだタブーらしく、そこが日本での受け取り方と異なる所でしょう。日本においてマツコ・デラックスは、性差はもちろん肥満という概念を超えたキャラクターとして認知されているから、ほとんどの人はCMを見て「あんなに太ったら困るからドーナツやめよう」とは思わないのです。
で、今回は家電のオカマ=炊飯器の話。ここ10年ぐらいですかね? 炊飯器はご飯以外にも使えるマルチクッカーとして認知されています。炊飯器でケーキや茶碗蒸しを作ったことのある家庭も多いのではないでしょうか。ローストビーフまで作れるらしいですね。とりあえずウケやすいからという理由で一時期、オネエタレントがやたら起用されたように、炊飯器であれこれ調理するのが流行りました。
ただ、高価格帯の炊飯器については、あくまでもお米をおいしく炊くことに特化しており、マルチクッカーとしての使い方は想定していないらしいですね。前にメーカーに取材した時も、開発担当者は「このクラスの炊飯器を買われる方は、お米を炊く以外の使い方はされません」と明言していましたし。わが家も昨年、4万円以上する炊飯器に買い替えましたが、圧力IHだからでしょうか、ケーキはふっくら焼けませんでした。
そのかわり、ご飯は以前の炊飯器に比べてかなりおいしくなりました。個人的に気に入っているのは、玄米モードです。通常、玄米を炊くときは数時間水に浸しておきますが、購入した機種だと水に浸す手間なしに炊けるのです。通常の炊き方に加えて「熟成メニュー」があり、炊飯時間は2時間以上と長くなりますが、玄米がやわらかく炊け、ギャバという栄養素も元の玄米の1.4倍に増加するそうです。
玄米、いいですよ。とくに腸の調子は明らかに良くなります。昼に玄米食べておくと、夜に暴飲暴食してもお腹を壊しにくいです。玄米はちょっと、という人は五分づき米あたりから試してみてはどうでしょう。五分づき米も普通の炊飯器よりもおいしく炊けます。
同じお米でも炊飯器によって味は大きく変わる。これは、同じコメントでも誰が言うかによって説得力が異なってくるのに似ていませんか?
一般的には、金や権力を持っている人ほど、まわりの人の感情をコントロールできます。よく言うんだけど、自分の夫や父親のダジャレはバカにしても、同じことを孫正義や松本人志が言ったら大笑いするでしょ。マツコ・デラックスだと、タレントとして有名という以外に、人間としての「圧」も感じられる。
それは、見た目と、その経験から来るものの両面で、炊飯器の「圧」がお米から甘みを引き出すように、発言の説得力となっています。炊飯器でプリンが作れるから何だって言うのよ。オカマは米炊いてなんぼじゃない。勝手にマツコを憑依させてみましたが、このあたりの覚悟が一瞬で消えていったオネエタレントとの違いではないでしょうか。
と、ここまで、オカマと炊飯器でヘリクツを書いてきましたが、説得力はどの程度出てますでしょう。今からでも間に合うならオカマになってみようかしら。頭の中で「オカマなめんじゃないよ!」ってマツコの声が聞こえました。