老師オグチの家電カンフー
第1回:手間のかかる無精ヒゲは「武将ヒゲ」なのだ
by 小口 覺(2016/1/20 07:00)
基本的に自分の外見にはこだわりがありません。ファッション誌は読まないし、昭和世代なので外見でモテようとする努力はかっこ悪いと思っていた。そして、モテようとする努力が報われないことも知っている……。成果の得られない努力や投資はまったくのムダです。
しかし歳を重ねてくると、顔や服装にまったく気遣わないと、とめどもなく汚らしく、みすぼらしくなるんですね。とくに、顔まわりの毛なんかは、放置しておくとモテなどの以前に、社会性を疑われるレベルに。若いときの無精ヒゲはファッションに見えても、初老男性の無精ヒゲは、洞窟で発見されたフセイン大統領的な悲哀があります。肌が老化したせいですかね。
なので、少しずつケアするようになり、気がつけば洗面台にはグルーミング系のアイテムがあふれんばかりの状態に。そのうちのいくつかをご紹介しましょう。
戦国ドラマのつるつる俳優はありやなしや
ファッションと同じく、男のヒゲも時代や地域によって大きく変わってきます。最近はビジネスマンでもファッション的にヒゲを生やしている人が珍しくなくなりましたが、昭和の時代では考えられないことでした。ヒゲで個性など主張しようものなら出世に響いた時代です。逆に、アラブ系の人は昔からほとんどヒゲを生やしています。ヒゲのない男は異教徒か同性愛者という扱いだとか。そのかわり下の毛はツルツルに処理されているらしい(見たことないですが)。
また、日本では男性ですら顔のうぶ毛を剃りますけど(理髪店で剃りますよね)、白人女性は剃らない人がほとんど。最近はHD画質ですから、海外ドラマでは女優さんの顔に金色のうぶ毛が生えているのが見えます。日本の女優さんじゃ考えられません。
テレビで違和感があるのは、戦国時代のドラマにつるつるした顔の俳優が出ていることです。何日も合戦しているのに肌がつるつるで、どこのホテルから出勤してきたのかよと文句を言いたくなります。まー、理解はできますけどね。俳優がアイドルだとキレイさを保ちたいでしょうし、リアルなヒゲは長さを維持するのが大変ですから。映画やドラマは時系列をバラバラに撮影するので、徐々にヒゲが伸びていくよう調整するのも難しい。
それに、役者が皆ヒゲ面だと、視聴者として区別がつきにくくなる。よく見知った俳優でないかぎり、登場人物を「ヒゲ」とか「デブ」といったわかりやすい見た目で区別している視聴者も多いので、全員がヒゲだと厳しい。
とはいえ、戦国時代でも武将クラスならば、つるつるでも間違いではないのかもしれません。ヒゲを剃る係の人がいたでしょうからね。ちなみにグルーミングはもともとサルなどの毛づくろいから来た言葉で、信頼関係を確認するための行為ですけど、戦国武将もよほど信頼の置ける者にしかヒゲは剃らせなかったはず。首元に刃物を当てるわけですから。
また、戦国武将はそれぞれ個性的なヒゲを蓄えていたので、こだわりもあったでしょう。信長も秀吉も、今で言うオシャレヒゲですよ。あの形状に個性以上の実用性はないですから。武将のヒゲも、昨今のオシャレ無精ヒゲも意味は同じ。違うのは、今の人は電動のアイテムのおかげで、昔なら武将クラスしかあり得なかったこだわりを、顔面に維持できていることですかね。家電というのはブショーのアイテムなんですよ。