計画停電にどう備えるか――記者の停電体験記

~賃貸マンション編
by 本誌:阿部 夏子

 東京電力は3月14日から、11日に発生した東北地方太平洋沖地震の影響による計画停電を開始した。すでに、計画停電による停電を体験された方も多いと思うが、急な変更などが多く、停電にどう備えればいいのかわからないと不安を感じている人もいるだろう。

 今回は、記者が実際に体験した停電について簡単にまとめてお伝えしよう。停電中の状態や、事前に用意した方がいいこと、注意すべきことなどもご紹介するので、これから計画停電が計画されている地域にお住まいの方に参考にしていただけると幸いだ。

ついに来た! 外は真っ暗、水は出ない

 記者の自宅は、今回発表されたグループ分けで2グループに当たる地域だ。当初、計画停電は14日より実行すると発表されていたが、実際に実行されたのは、発表より2日後の、16日18時半から20時半が最初となった。

 すでに報道されているように、今回の計画停電は告知はありながら、実行されることが少なく、告知はあっても「やるかやらないかわからない」と感じてる人も多いだろう。記者自身、一番最初の告知時間(朝6時20分からだった)の時は開始予定時刻の1時間前に起きて、停電に備えていたが、結局停電は行なわれず、その後も告知はあっても、実際に停電することはなかった。

 そんな状況だったので、今回の停電は「くるべき時がきたな」という思いだった。今回の停電は18時20分から22時までの予定で告知され、実際に停電が始まったのは、定刻通り、18時20分からだった。

 停電開始後、まず驚いたのは、外が真っ暗だったということ。状況を考えれば当然だが、マンションが建ち並ぶ住宅街に住むため、周囲は常にマンションの常備灯で照らされている。そのため、なんの明りもない外は真っ暗で静まりかえっていた。聞こえるのは、時折通る車の音と救急車の音ばかりで、何もしていなくても、なんだか不安になるような暗さだった。

マンションのベランダからの景色。周りもマンションが多く、いつも外は照らされている状態停電中の様子。全く明りがなく、ちょっと不安に感じるほどの暗さだ

 次に確認したのは、水やガスなどの状態だ。テレビなどで得た事前の情報によると、停電時、マンションでは水が出ない、ガスが使えないなどの事態が予想されるとあったので、それらをまず確認した。

 自宅の築20年(リフォーム済み)の鉄筋コンクリートマンションの場合、まず水は出なかった。キッチン、台所の水はもちろん、トイレのタンクの水も給水されない。一方、ガスは問題なく使うことが出来た。

水はまったく出なかった。写真は洗面所の給水レバーを上に上げたところ。普段はこれで水が出るガスは問題なく点けることができた。ただし、停電中の使用は避けた方がいいだろう

実際に行なった事前準備

 今回記者の居住地域で行なわれた計画停電は、18時20分から22時の予定で告知されていたが、実際には18時20分から20時半までの2時間10分程度で終了した。ここで、話が少し前後するが、記者が計画停電に備えて実際にした準備を紹介しよう。

1.停電の予定開始時刻前に食事を済ませた
2.お茶や水などの飲料水を準備
3.風呂場の浴槽に水を入れて、トイレ用の水を確保
4.パソコンや携帯電話をあらかじめ充電
5.懐中電灯やろうそくなどの光源を準備

 結果からいうと、これらの準備は必要最低限やっておいた方が良い。

 まず、1の「停電の予定開始時刻前に食事を済ませた」ことについては、これだけで、食事中の明り、飲料水、安全性が確保できる。明りと飲料水についてはいわずもながだが、暗い中でガスを使って調理するのは、非常に危険だ。また、食事を済ませておくことで、停電中に冷蔵庫の余計な開閉をする必要がなく、保冷性を保つこともできる。

 実際、2時間の停電中、一度も冷蔵庫を開閉する必要がなかった。停電後確認したところ、冷蔵庫の食材は冷たいままだったし、冷凍庫の食材が溶けているということもなかった。

 2の「お茶や水などの飲料水を準備」については、水が出ない状況だったので、必須だろう。ここで、重要なのは、飲料水を冷蔵庫に入れておくのではなく、外に出しておくこと。余計な冷蔵庫の開閉を避けることができる。

 3の「浴槽に水を入れて、トイレ用の水を確保」については、テレビの情報を基に行なった準備だ。結果的にはこれがあった本当に良かった。お恥ずかしながら、実際の停電時に水が止まるかどうかは、停電してから始めて確認した。飲料水があればとりあえず大丈夫だろうと思っていたのだ。

 実際には1回分の水は、トイレタンクにすでに溜まっているので1回までは対応できるが、家族が多い場合は特に必ず準備しておいた方がいいだろう。

 4の「パソコンや携帯電話をあらかじめ充電」は、ほとんどの人が行なっているだろう準備ではあるが、改めて必ずすることをお勧めする。自宅に乾電池駆動のラジオなどがない場合、停電中の情報源はパソコンや携帯電話だけとなる。地震や余震が続き、さらに原発の状況が不安定な中、わずか3時間といえど、情報が入ってこないのは不安なものだ。

 冒頭にも書いたように、真っ暗でまるで廃墟のような街の中で、じっと過ごしていると、これら情報機器のありがたさが身に染みる。

携帯電話やパソコンなどの情報機器は必ず事前に充電しておこうパソコンの画面の明りがあるだけでも安心感が違う

 5の「懐中電灯やろうそくなどの光源を準備」については、計画停電が発表された時点で、多くの人が手配しただろう。今回の計画停電は、発表から実行までの時間が短かかったこともあり、首都圏においては、懐中電灯やろうそく、乾電池などが売り切れ続出という事態になった。

 実際、スーパーに行っても懐中電灯はすでに売り切れ。残っていたのはろうそくばかりだった。そこで、購入したのが自転車用のライトだ。いずれも電源が乾電池で、懐中電灯としても使えるタイプ。父の助言によって、自転車屋さんで購入した。実際付けるまでは、性能に不安があったが、付けてみるとこれが大正解。

 光源は白色LEDで、光りが強く、見やすい。そもそも、自転車に取り付けて使うことを想定して作られた製品なので、本体は軽くて、持ちやすい。さらに、防水仕様なのも安心だ。記者の場合、さらにインテリア用の充電式ライトがあったので、それを組み合わせて使用した。

自転車用のライトを購入。買ったのは自転車屋さんだ。左からツクイ企画の「BL-101」、川住製作所の「3LEDサイクルライト JY-807A」いずれの製品も乾電池駆動だが、ツクイ企画のBL-101は単五アルカリ乾電池が電源となっている。できれば汎用性の高い単三電池や単四電池のものを用意するのがベスト川住製作所の「3LEDサイクルライト JY-807A」の電源は単三電池3本
3LEDサイクルライト JY-807Aを点けたところ暗闇で点けてもかなりの明るさがある天井を照らすようにすると、ぼんやりだが部屋全体を確認できる

準備すれば良かったこと

 以上、2時間程度の停電を実際に過ごしたが、体験してみて、今後はこういう準備が必要だなと感じることもあった。

ろうそくは火を使うだけでなく、形状も不安定なので、余震が続く今の状況で使うのは危ない

 まずは、室内で過ごす場合だが、ろうそくは危険だ。太平洋沖だけでなく、内陸部でも地震が起きているため、都内でも揺れを感じることが多い。ろうそくは火を使うだけでなく、形状も不安定なものも多く、あまりお勧めできない。懐中電灯が入手できずに、使う場合も安全面には充分注意したい。

 また、停電時、水が止まってしまう場合はバケツもあった方が便利だ。トイレ浄水用に浴槽に水を張っていても、トイレまで運ぶ手段がなかった。仕方なく、浴室で使っている、手桶を使用したが、手間は倍以上かかる。

 もう1つ、気づいたのは外にいた時の場合だ。今回はたまたま、自宅に居るときに停電を体験したが、今後、外出先で停電に遭遇することもあるだろう。その場合、やはり必要なのは懐中電灯だ。

 特に、夜間、周りに人がいない場合、足下を照らすものは何もない。停電時、エレベーターは全て停止するため、必然的に階段を使うことになるが、その際も、明りが付いているのは非常灯のみ。とても安心して歩ける状態ではない。

 現時点で停電の情報が非常に不安定なので、通勤、通学するときも懐中電灯などの光源を携帯した方が良いだろう。

マンションの階段。普段はもちろん、明りが付いている停電時は真っ暗だ懐中電灯などで照らさないと歩くこともできない

周囲の人へのアナウンスを

 最後にもう1つ。計画停電についての情報をなるべく、周りの人と共有して欲しい。現時点で告知はインターネットなどで行なわれることが多く、インターネットに縁遠い人や、お年寄りにとっては非常に情報が得にくくなっている。計画停電該当地区では、停電前や、停電終了時に公共放送などによるアナウンスを行なっているが、非常に聞き取りにくく、20代の私でも内容が理解できなかった。

 インターネットやテレビなどで停電情報を得た時は、まず家族とその情報を共有、特にお年寄りには必ず知らせるようにしよう。今回の計画停電のグループ分けは、非常にわかりにくく、同じ区や市でも、地域ごとに停電時間が異なることが多い。家族はもちろん、可能ならば近所のお年寄りにも時間を知らせて欲しい。

 地震、津波、原発事故、さらには計画停電と、不安定な状況が続くが、お互いに協力しあいながら、この状況を乗り越えていきたい。






2011年3月17日 00:00