さて、一口に蚊取りグッズといっても、市場にはさまざまなタイプの蚊取りグッズがある。まずその元祖となるのが、渦状の本体に火を付け、その際に発生する殺虫成分で蚊を殺す「蚊取り線香」。その次に現れたのが、マットに含まれた薬剤を、火を使わずに熱で蒸散させる「蚊取りマット」だ。
しかし、市場を席巻しているのはこれらではない。現在の蚊取り用薬品の主流は、これから説明する「リキッド式」と「ファン式」だ。どちらも火を使わず、また毎日本体や薬剤を取り替える手間がないことから、蚊取り線香・蚊取りマットよりも好評なのだろう。では、この2つのタイプの違いにスポットを当ててみよう。
なお、この「リキッド式」「ファン式」という言葉は、その仕組みから、編集部で便宜上名付けたものである。あらかじめお断りしておきたい。
● コンセントに繋ぐリキッド式、乾電池搭載で自在に置けるファン式
まずは「リキッド式」「ファン式」の基本的な違いについて触れよう。リキッド式は、ボトルに入った液体の薬剤を本体にセットし加熱、薬を蒸散することで虫を除くというもの。一方のファン式は、フィルターにファンで風を吹き付けて、フィルターに含まれる薬剤を飛ばすといったものだ。どちらも蚊除け用の薬剤を散布している点は変わりない。
決定的に違うのが、リキッド式は電源をコンセントに繋ぐ必要があり、ファン式は電池を使うのでコンセントなしで動くという点だ。このため、ファン式はコンセントのない物置やAV機器でコンセントが混み合うリビング、また電源コードが邪魔になる洗面所など、幅広い場所で使用できる。もちろん、屋外でも使用可能。中には、体に身につけるタイプの製品もあるほどだ。手軽さで選ぶならファン式だろう。
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「リキッド式」の製品。左がアース製薬の「アースノーマット」、右が金鳥の「水性キンチョウリキッド」。どちらも電源ケーブルが備えられているのが分かる
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こちらは「ファン式」のアース「電池でノーマット」
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ファン式の特徴は、電源に乾電池を使用するため、コンセントが要らない
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リキッド式は、液体の薬剤を熱して蒸散させることで、虫除け効果を出す
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ファン式は、フィルターに含まれる薬剤を……
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本体のファンで飛ばして殺虫する
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ファン式の弱点は長持ちしない点だろう。アース製薬の製品で例えれば、ファン式の「電池でノーマット」と、リキッド式の「アースノーマット」の、それぞれの「60日間」タイプを比べてみよう。いずれも同じ日数だが、使用条件が前者が「1日8時間使用」と仮定されているのに対し、後者は「1日12時間使用」とされている。つまり、ファン式は合計で60×8=480時間使えるが、リキッド式は720時間使えるのだ。しかもこの2製品、メーカーの希望小売価格は同じ。コストで選ぶなら、リキッド式の方がお勧めだ。なお、コスト面については、明日公開の第四部にて詳しいレポートを掲載する予定だ。
リキッド式の良い点はカートリッジの豊富さだろう。まずは日数が、30/60/90/120/150/180日から選択できる。さらに、10~20畳に使用できるワイドタイプも選べる(一般的なリキッド・ファン式製品の適用床面積は4.5畳~10畳程度)。しかも使用するカートリッジは、何日用でもワイド用でも、同一の本体に使用できる(使用する薬品の濃度に差を付けているようだ)。一方のファン式は、取替え用のバリエーションはここまで多くない。
しかし、リキッド式は薬剤を熱して蒸散させるという性質上、長時間使用すると噴出口付近の本体が熱くなるという点がマイナスだ。やけどするほど熱くはないが、誤って手で触れるとびっくりしてしまう。また、若干だが薬剤のニオイもする。気になる人はまったくニオイがないファン式を選ぶと良いだろう。なおリキッド式では、これを逆手にとって香料を含んだタイプも発売されている。
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リキッド式は、ファン式に比べ取替えボトルが豊富。写真は30/60日用だが、ほかにも90/120/150/180日まで使える多彩なラインナップがある
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リキッド式は薬剤を加熱する性質上、吹出口付近が熱くなることも
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● 蚊取り線香は今なお健在。蚊取りマットは規模が縮小
ところで、昔ながらの蚊取り線香や蚊取りマットは今どうしているのか、と気にかける方もいるだろう。まず蚊取り線香だが、各社ともまだまだ販売を続けている。金鳥(大日本除虫菊株式会社)に話を聞いたところ、「スキマの多い日本家屋」に非常に向いているとのこと。機密性の高いマンションよりも戸建て住宅で必要とされているのだろう。火を使う、煙が出るといった点はデメリットとして見られてしまいそうだが、日本の夏の風物詩としてニーズがありそうだ。なお、ニオイをつけたアロマタイプの製品もあるようで、ラインナップは非常に充実している。
その一方、蚊取りマットは「縮小傾向にある(アース製薬)」ようで、アースでは既にマットをセットする本体の販売を取りやめている模様(マット自体の販売は継続中)。編集部でもドラッグストアをいくつも探したが、見つかったのはリキッド式と併用タイプのフマキラー「ベープリキッドセット」のみだった。
フマキラーのホームページによると、蚊取りマットは効果のピークが早く、時間が経てば経つほど効果が弱まる性質があるため、一定量の薬剤を放ち続けるリキッド・ファン式と比べると長時間の使用には向かないようだ。しかし裏を返せば、薬剤を余分に蒸散しないというメリットもある。薬の影響が気になる方は、マットを選ぶという手もあるだろう。もちろん、リキッド式・ファン式・蚊取り線香のいずれも場合も、使用上の注意を守って使用すれば安全なのは言うまでもない。
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風通しの良い日本家屋なら、屋内でも屋外でも使える蚊取り線香。豊富なラインナップでまだまだ健在だ
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渦巻き状の本体からほのかに煙が浮き立つ姿は、日本の夏の風物詩として健在だ
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蚊取りマットの規模は縮小気味(写真はフマキラー「ベープマット」)
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マット自体は入手しやすいが、本体がなかなか売られていない。写真はリキッド式と併用タイプのフマキラー「ベープリキッドセット」
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マット式は効き目のピークが使用開始後2~4時間。その後はゆったりと効果が薄くなっていく
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と、いうわけで、現在の市場は「ファン式」「リキッド式」の2つが主流となっている。まず、この2つ、実際に販売されている製品に、どのような特徴があるかを第二部でお届けしたい。次いで第三部では、今年新たに生まれた新しい蚊取りのジャンル、「スプレー式」についてお届けする予定だ。
2008/07/17 00:05
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