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【新連載】家電業界デザイナーインタビュー
第2回:エレクトロラックス

~まず“消費者ありき”のデザイン
Reported by 本田 雅一

 掃除機やトースター、電気ポットにコーヒーメーカーなど、小物家電のブランドとして、量販店などでも馴染み深いブランドになってきているエレクトロラックス。北欧はスウェーデンを拠点とする同社製品は、これまでも欧州的なデザインテイストとシンプルな使いやすさで、世界一厳しいと言われる日本の家電市場に食い込んできた。

 そのエレクトロラックスは、世界的に見ると洗濯機や調理器具などの大型家電やビルトインタイプの家電製品メーカーとしての地位を確立している。日本でも業務用を中心に洗濯機、乾燥機ビジネスを展開。さらに家庭向けのビルトイン冷蔵庫、洗濯機、調理器などをエレクトロラックスおよびAEG-Electroluxのブランドで展開している。

 特にビルトイン機器のAEG-Electroluxは、機能的で洗練された欧州テイストあふれるデザインと高い信頼性で、こだわり派のユーザーからの注目を集めている。

 今回は世界7カ所にあるInternational design center(IDC)のうち、オーストラリアシドニーのIDCで製品デザインを統括するスコット・キング氏に、エレクトロラックス製品のデザインについて話を伺った。





「生活に溶け込む家電は、たたずまいと美しさが重要」

スコット キング。1969年 オーストラリア シドニー生まれ。シドニー工科大学 デザイン科卒。エレクトロラックス デザイン&イノベーションセンター シドニー アジアパシフィックデザインマネージャーを務める。冷蔵庫、コンロ、IHクッキングヒーター、食器洗い機などキッチン周りの家電が担当。エレクトロラックス入社前は、ルイス・ポールセンで照明機器のデザインを手がけていた
 今ではデザインを重視した家電製品も当たり前になっているが、以前はデザインよりも機能性重視の製品が多かった。日本では、今でもその傾向が強いと言われるが、機能がシンプルな製品であればあるほど、そして生活の中に溶け込んでいる製品であればあるほど、バイヤーの目はデザインの善し悪しへと移っている。おそらく、この傾向は今後、さらに強まっていくことだろう。

 こうした業界の流れをいち早く読み取ってきたのが、エレクトロラックスという会社だ。メーカーで初めて工業デザイナーを雇用し、デザインセンターを設立したのは、何を隠そうエレクトロラックスだったという。

 キング氏は「生活の中の風景に溶け込む家電製品は、何よりそのたたずまいや美しさが重要だ。デザインは家電製品を差別化するもっとも優れたツールだと考え、より美しく使いやすいデザインを提供している」と話す。

 日本は家電大国と言われ、小物家電、白物家電のメーカーが多数共存する。そうした地の利を持つ日本のメーカーに対して、エレクトロラックスはどのような優位性を持っているのだろうか。

「生活習慣の違いが、そのままデザインにも現れていると思います。たとえば調理器1つとってみても、日本のユーザーは短時間で手早く済ませることを重視します。そのため、説明を受けなければどのように動くのかわからない自動ボタンが多くなります。あまりに多くの機能がありすぎて混乱しやすいのです。また、特定用途の製品が多いのも日本製品の特徴だと思います。魚焼き器とか、ポータブル型のIHクッカーとか。これらは日本以外では見かけることはありません」

「しかし、我々の製品はシンプルで、料理をするために必要な機能をわかりやすく、扱いやすく配置します。こうしたポリシーの違いが、製品のデザインにも大きな影響を与えています。我々の製品の中でも上位ブランドとなるAEG-Electroluxの製品は、どれもシンプルで美しい操作パネルを与えられていますが、これも必要な機能を絞り込んで使い勝手優先でデザインしているためです」

「もう1つは文化的な側面です。日本では台所は隠すものだった。しかし、欧州ではホームパーティを開くと、いろいろな人がキッチンに集まってくる。自ずと機能よりも、誰でも使いこなせるシンプルさと、デザインの美しさに注目が集まったのではないでしょうか」


「デザイナーが企画・開発・設計のすべてに携わる」

 日本ではエレクトロラックスとAEG-Electroluxの2ブランドを展開しているが、両製品を比較するとAEG-Electroluxがシンプルな面構成とステンレス素材を多用したデザイン、エレクトロラックスは曲面や白を多用した親しみのある柔らかなデザインという印象がある。


エレクトロラックスブランドのスティッククリーナー「エルゴラピード アップグレード」 エレクトロラックスのサーキュレーター。多くの模倣を生んだ傑作だ AEGブランドのドラム式洗濯乾燥機「L12700J」

「それぞれにコンセプトが異なるのですが、エレクトロラックスは、ミドルレンジよりもやや高級志向に振った製品が中心。AEG-Electroluxは富裕層をターゲットとした高級感と美しさを重視してデザインされています。エレクトロラックスは自分らしさを求める自由人。AEG-Electroluxは最高のクオリティと効率を重視する人向けといったテーマがあります」

 ではそうしたテーマの中にあって、どのようなデザインを目指しているのだろう。明確なデザインポリシーはあるのだろうか。

「まずは“消費者ありき”という姿勢です。我々は美しいデザインの製品を生み出そうと日々努力していますが、最初からカッコイイデザインを目指しているのではありません。従来の製品に寄せられた声を反映する改良、実利用時の使い勝手、使う場面において求められる要素などを考えた上で、それを美しいデザインとして現実の製品にすることに注意を払っています」

「デザイナーの仕事と言うと、デッサン帳に思い思いの絵柄を描く風景を思い浮かべるかもしれませんが、我々、エレクトロラックスのデザイナーは、ユーザーの自宅を訪問し、どのように製品を使っているのかを観察し、どのようなデザインを行なえば、より使いやすくなるのかを考えながらデザインしています。消費者の目線でデザインをしているのであり、デザインそのものを目的としていません。その意味では、いわゆる、一般的に言われている“デザイン家電”とは違うと思っています」


キング氏が手がけたAEGブランドの冷蔵庫
「エレクトロラックスという会社は、他の同業者と比較して、デザイナーと開発者の担当範囲がオーバーラップしている部分が大きく、製品の企画や開発、設計といった部分にまで、幅広くデザイナーが関わります。ただ、外見だけを決めるのではありません。機能の有無についても突っ込んで議論します。単に機能が多い、便利そうな機能が付いているといったことではなく、本当の意味で使いやすいデザインはなにかを常に追究しています」

 もっとも、こうしたことは多くのデザイナーが思っていることだろう。しかし、国や文化が違えば、同じ“良いモノ”を目指しても、アプローチが変わってくる。日本の消費者や日本のプロダクトデザインについて、どのように感じているのだろうか。

「機能面で言うと、我々の製品を含め欧州では製品トータルのエネルギー効率や使いやすさ、価格面では運用コストも含めたトータルのコストを考えています。たとえば欧州の食器洗い機は余熱で乾燥させるという考え方があり、それ故に食器が乾くまでの時間は長い。対する日本の食器洗い機は、完全に乾くまで乾燥させようとします。食器は次回使うまでに乾けば良いのですから、エネルギー効率を考えると直ぐに乾かす必要はないんです。このように、製品改善のアプローチに関して、様々な面で切り口が異なると実感しています」


「アジアでも、ヨーロッパのデザインが受け入れられてきている」

キング氏のチームが手がけた「e-dish」。IHクッキングヒーターの新たなカタチだ
 長らく日本は機能志向の強い市場と言われてきた。しかし昨今、機能よりもデザイン、特に見た目の美しさやかっこよさを重視するユーザー層も増えてきている。こうしたデザインに対する関心の高まりについて、エレクトロラックスではどのようにとらえているのだろうか。

「日本に限らず、アジアは欧州的なものを受け入れる土壌が生まれつつあると思います。ライフスタイルが欧米化しているからかもしれません。もっとも、よく欧州的なシンプルデザインなどと言われますが、我々から見ると、日本には良いデザインの製品が多いと思いますよ。私が学生時代に専攻したグラフィックデザインの分野では、欧州よりも日本の方が進んでいます。おそらく、多くの日本人が考えているよりも、我々から見てすばらしいデザインの製品は日本にもたくさんあります」

「より良いデザインの商品がより受け入れられるようになる土壌はありますから、今後は日本でもデザインへの注目度がさらに上がっていくのではないでしょうか。我々もe-dish(大理石の固まりのような、ユニークなデザインの電磁調理器)のような製品で、常に新しい提案をしていきたいと考えています」


あえて形を見せるe-dish

あえて形状を主張するデザインを目指したという
 最後に本誌でも話題になった特徴的なデザインの電磁調理器「e-dish」について、デザインに直接関わったキング氏に、このデザインが生まれてきた背景について話していただいた。

「電磁調理器は性能や使い勝手の向上などで、世界的にも売り上げが伸びている分野です。そこで、デザイン性に優れた電磁調理器を作ろうというのが最初のコンセプトです。しかし、電磁調理器は製品の性質上、全体のフォルムはただの一枚板でしかなく、デザインで差別化するのが難しい商材です」

「しかし、キッチンは家庭の中心という考え方もあります。日本でもオープンキッチンのデザインを採用する家庭が増えてきています。エモーショナルで、楽しみながら料理を作れる。そこで、通常はキッチンシンクの中に埋め込んでしまう電磁調理器を、キッチンの中心に置いてもらえる、どの角度から見てもわかるような、存在感のあるデザインとしました」

「洗面台などでも、最近は完全な埋め込みよりも、台の上に飛び出ているものが多くなっているでしょう。e-dishもそうしたデザインを採用し、その上で質感の高いマテリアルと美しいデザインを与えました」

 では、デザインモックはいくつぐらい作ったのだろうか。その中で、今回のデザインを採用した理由とは。

「まず、デザイナーにイラストを描いてもらい、次々と部屋の壁に貼っていきました。その中から、7つを選んで、モックアップや試作モデルまで制作し、このデザインになりました。通常、モックアップを作るのは最終案とその代替案くらいなのですが、7つも作っています。その中から、キッチンの中のどの位置から見ても、同じフォルムに見えること。そしてもっとも感情をかき立てるような、エモーショナルなデザインはどれかをディスカッションし、決めています」

「2008年にオーストラリアで販売が開始され、日本でもエレクトロラックスブランドで投入されます。世界でも数百台限定で生産されるプレミアム製品です。素材や操作性、デザインにこだわった最高の電磁調理器の登場を楽しみにしてください」


電気製品ではなく、陶器を思わせる四隅のデザイン アイコンをタッチして操作する
鍋を置いたところ




URL
  エレクトロラックス・ジャパン株式会社
  http://www.electrolux.co.jp/
  AEG-Electrolux Japan
  http://www.aeg-electrolux.jp/

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2007/09/20 00:02

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