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そこが知りたい家電の新技術
ナショナル「ドルツ・リニア音波ハブラシ イオン EW1045」

~電気の力で歯垢を落とす「ドルツ」最新モデル
Reported by 西田 宗千佳

ドルツ・リニア音波ハブラシ イオン EW1045
 電動歯ブラシといえば、ブラウンやフィリップスといった、欧米メーカーの印象が強い。だがそんな中で、日本メーカーとしてがんばっているのがナショナル(松下電気産業)だ。ほかの日本メーカーが低価格な製品を中心にしているのに対し、ナショナルは欧米メーカーと同じく、「音波タイプ」と呼ばれる高級な製品で真っ向勝負している。

 そんな松下の電動歯ブラシ「ドルツ」の最新機種「EW1045」は、さまざまな新機軸を導入した意欲作である。松下電器でドルツのマーケティング企画を担当する、同社 ナショナルウェルネスマーケティング本部 槇原貴之氏に話を聞いた。





毎分31,000回の振動で「歯も歯茎も健康に」

 すでに述べたように、ドルツは「音波振動タイプ」と呼ばれる、高級電動歯ブラシである。といっても、別に音波で歯を磨くわけではない。

 電動歯ブラシは、モーターでブラシを振動させて磨くもの。当然、早く動かすほど、汚れは取れやすくなる。そこで、通常のモーターではなく、より高速な駆動が可能なリニアモーターを使うことで、振動数をぐっと高めたのが「音波振動タイプ」である。音を出さないのに“音波”を名乗る理由は、振動の回数が、おおよそ可聴範囲内の音に近い回数(一般に200Hzから300Hz程度)となるため。ドルツの場合には、毎分約31,000回振動する。


【動画】EW1045を「パワフル」モードで運転させているところ
(WMV形式, 487KB)
EW1045を片手に語る、ナショナルウェルネスマーケティング本部 槇原貴之氏

 「実は、この回数が大切。歯そのものは、速ければ速いほどよく磨けますが、歯茎もいい状態にできるわけではないのです」(槇原氏)。

 その理由は、歯茎のやわらかさだ。歯は硬いので、かなり速く磨いても問題はない。しかし、歯茎は歯に比べずっとやわらかい。だから、あまりに高速だと、歯茎の方が痛んでしまうのである。歯茎を痛めずに、しかもできる限り高速に動かすために、バランスのいい速度が「約31,000回」であるらしい。

 これだけの高速振動を実現するのが「リニアモーター」だ。松下でリニアモーターといえば、電動シェーバーの印象が強い。槇原氏によると、元々の技術開発の面では同じものらしいが、形状も駆動方向も違うため「歯ブラシ専用のもの」とのことだ。


シリコンブラシで歯茎を「たたく」

 松下は長く電動歯ブラシを手がけてきたが、リニアモーターによる音波振動タイプを市場に投入したのは2000年のこと。これは、他社が高級タイプを音波振動タイプにしてきたこと、市場のニーズが、少しずつ高級タイプにシフトしてきたことに影響されている。

 その中で、松下が他社との差別化のために持ち込んだのが、「歯茎ケア」という考え方だ。通常のブラシの他に、歯茎のマッサージを目的とした、シリコン製のブラシを同梱したのだ。これが2002年のことである。

 「歯に関する悩みというのは色々ありますが、主に、歯の汚れに関するものと、歯周病に関するものに別れ、これを両方ケアしなくては良い状態にはなりません。そこで、歯の方は歯ブラシ、歯茎のほうはシリコンのブラシのマッサージという『合わせ技』で、トータルケアを目指そう、ということになったわけです」(槇原氏)

 シリコンブラシは、通常の歯ブラシに比べ、ほんのちょっとだけ柔らかく、太めになっている。先端も、歯ブラシの毛先とは違って丸い。硬さや形状は、試行錯誤の結果産まれたものだという。


パッケージ同梱のブラシスタンドと、カーブネックブラシ2本、シリコンブラシ1本 マッサージブラシ。先端が円形になっている

 ドルツでは、本体を「マッサージモード」にすることで、歯茎をたたくようにブラッシングできるようになっている。「ブラシの振動幅を変化させることによって、たたくような動きを実現している」(槇原氏)とのことだ。現状では、歯茎をマッサージする製品は、市場にそう多くないが、「トータルケアしていただける歯ブラシとして、より多くの方に使っていただければ、広がっていく機能だと思っています」という。


「音波振動」プラス「イオンの力」で、歯垢除去率は50%アップ

 他方で、電動歯ブラシの基本はやはり「歯垢をいかに取るか」ということ。音波振動タイプが登場したのも、まさにそのためのものである。槇原さんは音波振動タイプの歯ブラシの価値を、「スキルフリー性にある」と説明する。

「そもそも歯磨きは、どんな歯ブラシでも、時間をかけて、きっちり磨けば、歯垢は落ちるんです。しかし、一般ユーザーの方はなかなか正しい磨き方をご存じなく、長い時間をかけるのも難しい。ですが、音波振動ハブラシは高速で動きますから、歯に当てるだけでOK。どなたにも簡単に使えるものです」

 すでに述べたように、ドルツの場合には毎分31,000回振動するのだが、その振動幅はおよそ1mm。ごく狭い範囲を高速振動するため、歯に当てながら位置を変えていくだけでいい。この簡単さこそが、音波タイプ電動歯ブラシの醍醐味である。

 だが、それだけでは他社との差別化ができない。今回の新製品で同社は、振動以外の力も使って歯垢を取ることを狙った。それが「イオンパワー」である。

 真っ当な科学知識を持つ方だと、「イオン」という言葉にはちょっと顔をしかめたくなるかも知れない。世にある「イオンの力で~」と言われる製品には、技術的な根拠があいまいなものも少なくないからだ。

 だが、この製品はそうではない。きちんとした、わかりやすい根拠がある。その根拠とは「静電気」だ。

「歯垢が歯にこびりつく力には、静電気も大きく関与しています。それを中和できれば、歯とのつながりを弱くすることができるので、はがれやすくなるわけです」と槇原さんは語る。


微弱電流を発生する機構のイメージ図。歯垢の電気的性質を変えることで、歯垢をはがれやすくする(資料提供:松下電器産業)
 EW1045のブラシには、ほかの製品にはない電極が用意されている。また、デザイン的に目立ちにくいが、持ち手にも電極が仕込まれている。これにより、歯垢に対して、ごくごく微弱なマイナスの電荷をかけ、電気的な性質を変えることで、歯垢をはがれやすくしているわけだ。

 それだけでなく、EW1045では従来の製品に比べ、リニアモーターの出力を60%強化している。イオンパワーとモーターの強化、両方の効果により、従来の最上位機種に比べ、およそ50%歯垢が取れやすくなったという。

 「ただ、イオンパワーとモーター強化、どちらが効果的か、とはなかなかいえませんね。両方の効果により実現したものです」(槇原さん)


 ここで1つ、おもしろい事実がある。

 これまでの最高位機種「EW1038」は、EW1045よりも歯垢除去率で劣る一方、ブラシ振動の機能では、EW1045より優れた面があったのだ。

 EW1045では、ブラシの振動方向は、本体の方向に添った、いわゆる「横方向」のみ。ところがEW1038は、上下左右斜めと、全方向に動いていたのである。

 「様々な方向に動かしていたのは、歯周ポケットなどの、ブラシが届きにくいところの歯垢を取るためで、より、スキルレスで使えるように――という配慮から産まれた機能です。しかし今回は、イオンの力をつかっているので、歯全体から歯垢をはがしやすくすることができます。しかも、パワーを強くしていますから、浮いた汚れをきっちりとれます。ですから、従来は縦や横にも動かさなければ取れなかったような汚れまで、きっちり取れるんです。イオンのパワーを足すことで、ブラシだけではとりにくかったところが取れるようになっています」と槇原さんは説明する。

 そうなると気になるのは、今後「縦横ななめ振動+イオンパワー」の製品が出るのではないか、ということ。そうなれば、さぞかし効果が上がるのだろう思う。しかし「現状では、コストを含め検討中、というところです。今回の機種では、一見機能が単純化したようにも見えますが、十分な効果が上がっていますからね」(槇原さん)とのことだ。とりあえずは、現在の方向性で十分、ということのようだ。

 なお、今回、モーターの出力をパワーアップするのにあわせ、電源がニッケル水素充電池から、リチウムイオン充電池に変更されている。消費電力の大きな携帯電話やデジカメなどではおなじみだが、電動歯ブラシでの採用は珍しい。だが、今回の「歯垢除去率」実現のためには、それも必要であったということだ。


ブラシが上下左右斜めに動いていたEW1038と比べて、歯垢除去率は50%アップした 電池はニッケル水素充電池から、リチウムイオン充電池へとパワーアップ

日本人による「日本人の口」にあった電動歯ブラシを

 社団法人 日本電機工業会(JEMA)の調べによれば、2006年度の電動歯ブラシの日本国内での出荷台数は、およそ147万台。これは、市場サイズがピークであった2003年の287万台と比べて、140万台も減ってしまっている。現時点での世帯普及率は、およそ3割程度と言われている。

 「2003年には、低価格なタイプの製品が売れたため、いっきに普及しました。残念ながら、そこからは減ってしまっているわけですが、金額ベースでは微増しており、高級タイプへのシフトが少しずつ進んでいるのではないかと思います」と槇原さんは語る。

 冒頭で述べたように、電動歯ブラシの分野では、国内メーカーの存在感が薄い。松下は高級機の分野で孤軍奮闘、というわけだ。「欧米ではオーラルケアに関する関心が高いから、ということがあるのでしょう。我々はまだまだ小さい存在ですが、まずは国内の方にきっちりと使っていただける歯ブラシを作っていきたい」(槇原氏)

 その観点に基づいた差別化のポイントが、「日本人の口に合わせた作り」である。具体的に言えば、ブラシのサイズが小ぶりになっているのだ。

 槇原さんは、「そもそも西洋人と東洋人では、顔の骨格の作りがちがうんです」と説明する。ざっくりと、西洋人と東洋人、という風に分けると、我々東洋人のあごは、U字型であり、曲線的に構成されている。それに対し西洋人のあごは、比較的直線的に構成されている。そのため、東洋人のあごに添うように動かすには、小さいブラシの方が良い。また東洋人は、口を大きくあけるのも苦手。

 「西洋人なら、口を開ければすぐに奥歯が見えるのですが、日本人の場合にはそうではないので、小さいブラシを奥まで突っ込まないといけないんです」(槇原氏)


欧米人のあごのモデル。奥歯から八重歯まで、直線的なラインになっているのが特徴(資料提供:松下電器産業) こちらは日本人のあごのモデル。U字型で、曲線的な構成となっている(資料提供:松下電器産業)

 もちろん、それだけでニーズを満たせるわけではない。部分磨き用や子供用といった、様々なタイプの「替えブラシ」を用意して、歯の悩みに答えようとしている。新機種EW1045でも、これまでに発売された交換用のブラシも利用可能であるという。

 しかし、残念ながら、イオンパワー用の電極がついたブラシは、付属ブラシと同じタイプだけだという。子供用や部分磨き用は用意されていない。これについては「今後の課題だとは思っています」と槇原さんは説明する。

 替えブラシの価格や入手しやすさは、電動歯ブラシにとって大きな課題の1つである。槇原さんも、「人によっては、毎月交換する、という方もいますので、お求め安く、様々な場所で手に入れられるようにしたい。一般論で言えば、替えブラシは安い部類に入ると思っているのですが。できる限り、商品を置いていただいているところには、すべての替えブラシを置いてもらえるよう、お願いしているところです」と話す。

 それには、「ドルツ」のブランドが浸透し、使う人が増えることが大切だ。

 「私個人としてはまだまだだとは思っていますが、立ち上げた時に比べれば良くなったと思います。ナショナルという大きな看板もありますし、『ナショナルのドルツ』という形で浸透しはじめている」と槇原さんは期待する。

 白物家電高級化の流れに、電動歯ブラシものっていければ、おもしろいことになりそうだ。なにしろ、歯は買い換えが効かないもの。それを健康なまま保てるなら、決して高い投資とはいえないのではないだろうか。





URL
  ナショナル(松下電器産業株式会社)
  http://national.jp/
  製品情報
  http://ctlg.national.jp/product/info.do?pg=04&hb=EW1045
  ニュースリリース
  http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn070424-3/jn070424-3.html

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2007/08/08 00:03

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