家電Watch logo
記事検索
バックナンバー
【 2009/03/30 】
やじうまミニレビュー
DO-SEE「LEDライト付きスタンドルーペ」
[00:01]
家電製品ミニレビュー
ツインバード「コンパクトフライヤー EP-4694」
[00:01]
【 2009/03/27 】
家電製品ミニレビュー
三菱「蒸気レスIH NJ-XS10J」
[00:02]
やじうまミニレビュー
L.L.Bean「ボート・アンド・トート・バッグ」
[00:01]
【 2009/03/26 】
やじうまミニレビュー
アイリスオーヤマ「サイバークリーン」
[00:01]
家電製品長期レビュー
三洋電機「eneloop bike」(4/4)
[00:00]
【 2009/03/25 】
やじうまミニレビュー
オーエフティー「自動給餌機 Newビストロ」
[00:01]
家電製品ミニレビュー
日立「クリエア7 EP-CV1000」
[00:00]
【 2009/03/24 】
やじうまミニレビュー
「家庭菜園 かいわれくん」
[00:02]
長期レビュー
シャープ「プラズマクラスターイオン発生器&加湿空気清浄機」 (4/4)
[00:01]
【 2009/03/23 】
やじうまミニレビュー
撥水ペーパーのメモ帳と“現場仕様”のボールペンを試す
[00:01]
長期レビュー
三洋電機「eneloop bike」 (3/4)
[00:00]

そこが知りたい家電の新技術
三菱電機 冷蔵庫「うまさ活菜」シリーズ

~LEDで、なぜ野菜が育つのか
Reported by 三浦 優子

冷蔵庫開発の常識を破ったオンリーワンの冷蔵庫

「うまさ活菜」シリーズ
 三菱電機の冷蔵庫は、「どういう技術でこの機能を実現しているのだろう」と思う機能が多い。「野菜のビタミンを増やす光パワー野菜室」を代表に、透明な氷が作れる製氷室、“切れちゃう冷凍”……。

 10月に発売された新しい冷蔵庫も、「うまさ活菜 フレッシュ光パワー野菜室」、「空間上手 動くん棚」と、気になる機能が加わった。三菱電機の冷蔵庫には、なぜ、このような面白い機能が次々に搭載されるのか。

 勢い込んでそう尋ねると、三菱電機 冷蔵庫製造部 冷蔵庫先行開発グループマネージャーの平岡利枝氏は笑いながらこう答えた。


三菱電機 冷蔵庫製造部 冷蔵庫先行開発グループマネージャーの平岡利枝氏
 「うーん、実はハードウェア指向じゃないんです。技術があってできた機能というよりも、『こんなことできたらいいね』という使い方ありきで生まれた機能ばかりなんです」。

 この答えには意外な感じがした。他のメーカーの冷蔵庫に比べ、三菱電機の冷蔵庫は「この機能」と名前をあげることができる機能が多いからだ。実現するための技術を生かすために特徴的な機能が作られたのかと思っていた。

 「そういう印象があるのは、『オンリーワン戦略』という考え方が当社にあるからだと思います。省エネルギーや容量拡大というのは、冷蔵庫にとっては当たり前の機能。それよりも他にない特徴をもった製品を作ってオンリーワンの製品になるべし、という考え方がベースにあるからこそ、印象深い機能が生まれるんじゃないでしょうか」。


社内からも「できたらいいけど・・・」と言われたビタミンが増える野菜室

MR-G50M
 技術的な裏付けが知りたいナンバー1は、2004年、世界で初めて実現した野菜のビタミンを増量させる野菜室である。

 この機能は、今年10月に発売した新機種では、さらに進化して、青色LEDで野菜の「還元糖」生成を促進し、鮮度を長持ちさせる「うまさ活菜 フレッシュ光パワー野菜室」となっている。今や三菱電機製冷蔵庫の顔ともいえる代表的な機能である。

 野菜は、採取してから時間が経てばビタミンなどの栄養分が少なくなるのが当たり前。冷蔵庫の野菜室は、栄養が落ちるのを遅らせる役目は果たすものの、「ビタミンを増やす」と聞いて驚いた人も多かっただろう。

 「社内で、『ビタミンを増やす機能を冷蔵庫に搭載できないだろうか』と提案したところ、最初は半信半疑の反応でした。『できたらいいけどね』と。ビタミンが増える冷蔵庫を発売した2004年9月以前は、ビタミンを守る(減らさない)機能を搭載していたのに、一転してビタミンを増やす機能を導入したいと言い出したのですから、社内でも反発が起こっても当然といえば、当然だったのですが」。


MR-G42M
 冷蔵庫のような「成熟商品」の場合、大きな冒険をしなくても、細かな機能改善だけでも十分ではないかと考えがちだ。そこにあえて、挑戦的な機能を開発しようとするのは実は容易なことではない。

 だが、平岡氏は消費者の冷蔵庫の使い方が変わってきていることから、ビタミンを増やす機能は必要になると考えた。冷蔵庫の大容量化にともない、野菜などの食料品を「まとめ買い」する消費者が増えている。そこでメーカー側は、まとめ買いした野菜の鮮度を落とすことがないよう、温度や湿度を調整してきた。

 「実は購入した野菜も生きて、呼吸しているんです。従来の冷蔵庫は、鮮度を保つために、あえて呼吸を抑制する温度、湿度を作りあげていました。でも本当は、生きている野菜を抑制するのではなく、還元糖の生成を促進してやれば野菜の鮮度が保てる。それは、すでに5年前、10年前からわかっていました。しかし、それを実現することができなかったのです」。

 還元糖を作り出す機能が盛り込めなかった要因は、スペースと熱処理の問題だった。蛍光灯の光で還元糖を作り出そうとするとスペースが足りず、排出される熱を処理することができない。言うまでもなく、熱は冷蔵庫にとって大敵。熱が発生すれば、余計な電力を消費してしまうことになる。どうしても、蛍光灯ではムリだった。

 「その問題を解決したのが、LEDというハードウェアだったんです」。


LEDで水の除菌をしたのがきっかけ

オレンジ色、青色の2つのLED
 三菱電機では2002年に発売した冷蔵庫に、光触媒で給水タンクの水を除菌し、ミネラルウォーターや浄水器の水など減菌効果が少ない水でも衛生的な製氷を実現する機能を搭載している。この機能の光触媒で利用しているのが、「V-LED」。紫のLEDだ。野菜室より、まず製氷室にLEDが導入された。

 「LEDは紫外線ランプに比べ、寿命が長いなどメリットが多いことから採用に踏み切ったのですが、この点でLEDを扱う上でのノウハウがたまっていたことは開発にとってはプラスでした」。

 調べてみると、野菜を育てるためにLEDを利用しているケースがあることもわかった。その際、利用されているのは光合成に最も適した赤色であることが多いらしい。しかし、食品を照らす色として考えると、赤は食品が美味しそうに見えない。そこで光合成を起こすライトとしてオレンジを採用することを決定した。オレンジ色、590ナノマイクロの波長を当てて、光合成を促す仕組みにした。

 そして2004年、ついに“野菜が育つ”冷蔵庫が発売された。

 実際にビタミンが増える冷蔵庫を売り出すと反響は大きかった。ちょうど、青色発光ダイオードに関する裁判が行なわれた時期でもあり、冷蔵庫そのものではなく、発光ダイオードに関する取材もあった。世界で初めての機能を搭載したことで、大きな反響を得ることができたのだ。

 さらに、今年10月に新たに発売になった冷蔵庫には、青いLEDを搭載した。野菜室に入れた野菜に青い光をあてると、野菜自身が光合成をできると認識してクロロフィルを生成することがわかったからだ。青色のLEDは、もともとあるオレンジ色のLEDの存在を、野菜に知らせるための存在ということになる。

 「畑の中の野菜は、昼間日光を浴びて夜になって呼吸をするというサイクルになっています。青いLEDをあてられた野菜は、自分が光合成できる環境にあるんだと認識します。そこにオレンジのLEDがあたることで光合成に結びつくというサイクルができあがるのです。『還元糖』の生成を促進し、かつ『還元糖』の自己消費を抑える、『うまさ活菜 フレッシュ光パワー野菜室』によって、野菜の鮮度が長持ちし、野菜のビタミンCの増量が従来の10%から15%にアップしました」。

 こうして、新たに青色LEDを加え、野菜室はさらに進化を遂げている。


LEDの有無で、植物の育ち方を比較 オレンジ色、青色のLEDを照射
うまさ活菜 野菜室

庫内。主力機はフレンチドアタイプ 製氷のための水タンク。LEDを使って滅菌するため、ミネラルウォーターも使用可能 製氷室と冷凍室

MR-G45Mのカットモデル LEDと冷却器 インバータや断熱材を薄型化した

消費者のニーズが新しい機能を創り出す

物を載せたまま棚の高さを変えられる「動くん棚」
 10月に発売になった冷蔵庫には、冷蔵室の最上段と最下段の棚に、収納する食品の大きさや高さに合わせて、棚の高さを自由に調整できる「空間上手 動くん棚」という機能が設けられた。

 この機能、カラーボックスなどの収納棚のように、冷蔵庫の中にある棚を固定する取っ手部分の付け替えをするのかと思っていたが、そんな面倒なものではなかった。レバーを操作すれば棚に物を置いたままでも棚の高さが変えられるのだ。

 この機能は冷蔵庫の内部にベルトが入っていて、レバーを動かして自分の望む高さにリニアで移動させる方式となっている。使われている技術自体は特別なものではなく、むしろ、工夫といったほうがいいものだ。しかし、これを冷蔵庫の機能として取り入れたことがポイントだ。

 「冷蔵庫の使い方は、家庭によってかなり異なります。そのため、メーカーとしてデッドスペースができないよういくら工夫をしても、『うちの場合、デッドスペースができる』というケースが多くなってしまうんです。そこで、今回はお客様ご自身で棚の高さを調整できる動くん棚をつけました。これで、お鍋をそのまま冷蔵庫にしまいたいという要望にもお応えできると思います」。

 鍋を冷蔵庫にしまいたいという要望は、マンションなど機密性が高い住宅に住む人が増えた影響もあって増加している。暑くなってくると、夜作った味噌汁を、そのままガス台に置いておくだけでカビが生えてしまう。こうした住環境の変化によって新たに生まれたニーズをどう取り込むのかが、生活家電を作っているメーカーに求められている。

 「技術があるからこの機能を作るのではなく、お客様から生まれてくるニーズをどう取り込んで新しい機能を作っていくのかが、我々メーカー側に求められているのです」。


このツマミをスライドさせると棚が動く
一番低い位置

一番高い位置
デッドスペースを有効活用できる

 今ではすっかりお馴染みになった、「切れちゃう冷凍」も同じように消費者のニーズから生まれた機能だ。冷凍は長期保存するためにカチカチに冷凍するという発想を一変。通常は-18℃の冷凍を、-7℃まで上げて、切れやすくした。-7℃では長期保存はできないが、2、3週間で使い切るならば、問題はない。

 「業界とすれば、冷凍庫の温度をあげるなんてとんでもない! という声もありました。でも、お客様からは冷凍したものをすぐに使える機能が欲しいというニーズがあったんです。それに応えていったのが切れちゃう冷凍。冷凍調理が浸透したからこそ、生まれてきた新しい発想だったと思います」。

 消費者のニーズがあれば、冷蔵庫の常識を破ることも厭わない――この発想があるからこそ、「オンリーワン製品」が生まれてくるのだろう。

 一見、成熟商品で機能改善は難しいようにも思える冷蔵庫だが、「そんなことはないと思います。まだまだ、改善できる機能は十分にあります」と平岡グループマネージャーは自信をもって答える。

 「冷蔵庫はこれで十分とあきらめてしまわない限り、まだまだ面白い機能が盛り込めると思いますよ」。

 その意気込み通り、色々な機能が加わってくることを期待したい。





URL
  三菱電機株式会社
  http://www.mitsubishielectric.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2006/0822-c.htm
  製品情報
  http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/reizouko/index.html

関連記事
三菱、新製品を一同に集めた調理家電フェアを開催(2006/10/02)


2006/10/26 00:08

- ページの先頭へ-

家電Watch ホームページ
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.