● 掃除機の吸引力を表す数値
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吸込仕事率は、掃除機の吸引力を表す数値。「570W」など、ワット(W)の単位で表示される
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吸込仕事率とは、掃除機の吸引力を表す目安として利用されている値のことで、吸引仕事率とも言います。
吸込仕事率は、単位がワット(W)の数値で表されます。数値が大きいほど、吸引力が優れることになります。現在市販されているほとんどの掃除機が、吸込仕事率を利用して吸引力を示しています。2007年1月に新しい基準に更新されており、実際に製品のカタログや家電量販店の商品説明欄などに大きく記載されていることが多いので、目にしたことのある方も多いと思います。
吸込仕事率の測定方法は、日本電機工業会規格が定める「JEM 1454」という規格によって定められています。その方法は、新しい集じん袋またはフィルターを取り付けた掃除機本体に、付属するホースと延長管をまっすぐに取り付けて、延長管の先端部分に測定装置を取り付けて、運転時の風量(1分当たりの風の体積。単位は立方m/min)と真空度(単位はPa)を測定します。そして、計測した風量と真空度に、定められた係数を掛けると、吸込仕事率が算出されます。
式は、以下に示したようになります。
・吸込仕事率=0.01666×風量(立方m/min)×真空度(Pa)
● 吸込仕事率と実際にゴミを吸い込む能力は一致しない
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吸込仕事率はパワーブラシ付きのヘッドなどを取り外した状態で測定されており、実際の使用条件下とは異なるケースが多い
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吸込仕事率は、規格で定められた方法のもとで求められている値です。数字が大きいほど、吸引力に優れるということに間違いはありません。
しかし、先ほど紹介したように、吸込仕事率を求める場合には、ホースと延長管のみが取り付けられた状態で測定しています。また測定時には、実際にゴミを吸い込みながら測定しているわけではなく、単に空気を吸い込んでいるだけの状態となります。先端ノズルを取り付けず、集じん袋やフィルターの目詰まりなどが全く発生しない状況で割り出された値なので、実際の使用状況とは大きくかけ離れているのです。
つまり吸込仕事率は、あくまで吸い込む力のみを測定した値であって、実際にその掃除機を使って掃除をした場合の能力を直接示す数値ではありません。例えば、同じ掃除機でも、パワーブラシ(ヘッドに搭載された、モーター駆動によって回転するブラシ)搭載のノズルを使った場合と、ブラシのないノズルを使った場合では、ゴミを吸い込む能力は大きく変化します。
ゴミを吸い込む能力は、さまざまな要因で変化します。しかし吸込仕事率では、そういった点が一切考慮されていません。この点が、吸引仕事率の最大の欠点と言えます。
● ゴミを吸い込む能力は「ダストピックアップ率」で示される
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エレクトロラックスなど、海外メーカーの掃除機ではダストピックアップ率を明示するケースが多い。写真の「ウルトラサイレンサー アップグレード」のダストピックアップ率は71%(ターボブラシノズル使用時)
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最近では、吸込仕事率にかわり、実際にゴミを吸い取る能力を表す「ダストピックアップ率」という数値を表記する掃除機が増えつつあります。ダストピックアップ率とは、床面に定められた量のゴミを撒き、そのゴミを定められた条件で吸い込んだ場合に、どれだけの量のゴミを吸い取れたかパーセントで示した値です。ダストピックアップ率は、掃除機のゴミを吸い込む能力を直接示す値に相当すると考えていいでしょう。そういった意味では、掃除機を購入する場合には、吸込仕事率よりもダストピックアップ率を重視した方がいい、ということになります。
ダストピックアップ率の測定方法は、国際電気標準会議(IEC)で定められています。また、日本でも日本工業規格(JIS)が、「家庭用電気掃除機の性能測定方法(JIS C9802)」という規格で「じんあい除去能力」として測定基準を定めています。国内メーカー製の掃除機では、ダストピックアップ率を表記している例は非常に少ないのが現状です。しかし、使う側にとって参考になるデータは、吸込仕事率よりもダストピックアップ率なのは間違いありません。メーカーがダストピックアップ率も表示するようになることが望まれます。
【吸込仕事率】の、ここだけは押さえたいポイント
・吸込仕事率は、空気を吸い込む力を示す値 ・ゴミを吸い取る能力とは異なる ・ゴミを吸い込む能力は「ダストピックアップ率」で表わされる
2008年10月23日 初版
■URL
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http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/cleaner.htm
2008/10/23 00:06
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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