● 花粉やハウスダストもキャッチできる高性能フィルター
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HEPAフィルターは現在ではほとんどの空気清浄機に搭載されている(写真は日立「クリエア7 EP-CV1000」)
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HEPAフィルターとは、空気中に含まれる微細なホコリを取り除くために利用する高性能のフィルターで、家電では空気清浄機に搭載されていることが多いです。HEPAは「High Efficiency Particulate Air Filter」の略で、日本語では「高性能エアフィルター」とも呼ばれることもあります。HEPAフィルターは、もともと精密機器や半導体の製造工場にあるクリーンルームや、原子力施設の換気装置用として、非常に微細なホコリや放射性微粒子を取り除くために作られたもので、目に見えない非常に微細なホコリもキャッチできます。
HEPAフィルターの性能は、日本工業規格(JIS規格)にて「定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」として定義されています(JIS Z8122:コンタミネーションコントロール用語)。1μmは0.001mmなので、HEPAフィルターは直径0.0003mmの細かな微細粒子を99.97%キャッチできるフィルターということになります。
花粉症でおなじみのスギ花粉は直径が30μm程度で、その他の花粉も直径10μm以上の大きさがほとんど。つまり、性能的には花粉をほぼ完全にキャッチできることになります。また、ダニのふん/カビの胞子/細かな砂ぼこり/ハウスダストも、2~5μm以上の大きさのものが中心です。HEPAフィルターはこういったアレル物質の多くをキャッチできるため、家庭用の空気清浄機のメインフィルターとして広く採用されています。また、排気口から花粉やハウスダストをまき散らさないという目的で、掃除機にも取り付けられることが多くなっています。このほか、エアコンの空気清浄フィルターとして使用されることもあります。
ところで、HEPAフィルターの定義の中で「圧力損失」という聞き慣れない言葉が出てきましたが、これは空気の通りやすさを示す指標のことです。数値が小さいほど、抵抗なくフィルターを空気が通り抜けられることになります。フィルターの目を細かくすれば当然より細かいホコリがキャッチできるようになりますが、目を細かくしすぎると今度は空気が通りにくくなってしまいます。いくら細かいホコリをキャッチする能力が高くても、空気が通りにくくてはフィルターとしての役割が果たせませんので、空気の通りやすさも規定されているのです。
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三菱電機の空気清浄機「MA-837」 に搭載されているHEPAフィルター
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蛇腹のようなギザギザ状の表面が特徴(写真はシャープ「KC-51C1」のHEPAフィルター)
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HEPAフィルターの集塵率は99.97%(写真は日立「クリエア7」発表会パネルより)
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サイクロン掃除機のダストボックスで使われているHEPAフィルター(写真は日立「ロボットサイクロン CV-RS1」)
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掃除機の排気口にHEPAフィルターを設けることで、排気をキレイにしている(写真はElectrolux by TOSHIBA「ECL-C5A」)
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● より高性能の「ULPA」、中性能の「MEPA」など、性能によって呼び方が変わる
エアフィルターには、性能の違いでいくつかの種類が存在します。
HEPAフィルターよりも高性能なフィルターは「ULPAフィルター」と呼ばれています。ULPAとは「Ultra Low Penetration Air Filter」の略です。ULPAフィルターの性能は、JIS規格(JIS Z8122)で「定格流量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルター」と定められてます。また、ULPAフィルターの中でも、粒子捕集率が99.9999%以上のものは「超ULPAフィルター」とも呼ばれます。家庭用の空気清浄機でも、高付加価値モデルを中心に、ULPAフィルターを採用する製品が存在します。
それに対し、「主として粒径が、5μmより小さい粒子に対して中程度の粒子捕集率を持つエアフィルター」として「MEPAフィルター」というものも定義されています。これは「中性能エアフィルター」とも呼ばれ、HEPAフィルターよりもやや性能は劣りますが、それでも花粉の集塵能力には十分優れていますので、空気清浄機なら性能面で大きな問題はないと考えていいでしょう。
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三洋電機のサイクロン式掃除機「airsis」で採用されているULPAフィルター
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日立の掃除機「ロボットパック CV-RP3000」「ロボットサイクロン CV-RS3000」でもULPAフィルターを搭載。0.3μm以上のチリを99.999%捕らえるという
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● フィルターの性能だけで空気清浄機の優劣は付けられない
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空気清浄機の性能は、フィルター以外にも風量の強弱やセンサーの有無といった要素もある(写真はシャープの加湿空気清浄機「KC-W80」の発表会より)
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空気清浄機の集塵能力は、搭載されているフィルターの種類に大きく左右されますが、実際の性能はフィルターだけで決まるわけではありません。
確かに、高性能なフィルターを搭載していれば、より細かな微粒子をより高い確率でキャッチできるようになります。しかし、空気清浄機では吹き出す風の強さや気流の流れも重要な要素となります。いくら高性能なフィルターを搭載していても、部屋の空気をしっかり攪拌できるだけの風量が確保されていなければ、満足のいく空気清浄はできないでしょう。また、ホコリや臭いをチェックするセンサー類の有無でも、効率が大きく変わってきます。
空気清浄機を購入する場合には、フィルターの種類だけで決めるのではなく、風量や適用床面積、各種センサーの有無なども確認するようにしましょう。
【HEPAフィルター】の、ここだけは押さえたいポイント
・直径0.0003mmの微細粒子を99.97%キャッチできる高性能のフィルター ・MEPA<HEPA<ULPAの順に性能が高くなる ・空気清浄機の場合、HEPAフィルターを搭載していても、風量やセンサーの有無によって性能は変わる
2008年10月15日 初版
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現代家電の基礎用語 バックナンバー
http://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word_backnumber/
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2008/10/16 00:21
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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