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第16回:ごはんをおいしく炊く技術「圧力炊飯」とは



 圧力炊飯とは、炊飯中の蒸気などを利用することで、炊飯器の釜内部の気圧を高めて炊飯することです。IH式の炊飯器では、この圧力機能を搭載するものが多くなっています。

 しかし、圧力を掛けなくても、釜を加熱すればごはんは炊けてしまいます。ではなぜ、炊飯中に圧力を掛ける必要があるのでしょうか?その理由は、大きく分けると「甘み成分の増量」「炊きムラの抑制」という2点にあります。


米のα化を促進、甘み成分をを引き出す効果

IH式の高級機種では、圧力炊飯を取り入れている製品が多い(写真は三洋電機の「匠純銅 おどり炊き」)
 1つ目の「甘み成分の増量」は、圧力炊飯によって「ブドウ糖」「ショ糖」といった甘み成分をより引き出すことを指します。そもそも炊飯器とは、米を水に浸した状態で加熱し、米の内部に含まれるテンプンを膨張させて、米に柔らかさと粘りを出す「α化(糊化)」という現象を引き起こす機械のことですが、加熱温度を100℃を超えるような高温にすれば、よりα化が促進され、デンプンから多くのブドウ糖・ショ糖を還元することがでいます。

 とはいえ、水は当然100℃で沸騰し、米を炊いている時の釜内部の水の温度もほぼ100℃となり、それ以上高い温度で炊くことはできません。

 そこで圧力炊飯の出番となります。圧力炊飯では、炊飯器内の気圧を高めながら炊くことで、水の沸点を100℃よりも高くしています。例えば、水に1.2気圧がかかった場合の沸点は105℃となります。つまり圧力炊飯時には、100℃以上のお湯でお米を炊いているということになるわけです。これによって、米のα化が促進され、甘み成分がより引き出せることになります。

 圧力炊飯は炊飯時間の短縮にもつながりました。というのも、水温が100℃以上の高温になるため、米が早く炊けるのです。圧力鍋を使って蒸し料理を作れば、普通の鍋で作るよりも短時間で調理できることと同じ原理といえるでしょう。

 ただし、余計に圧力が掛かりすぎると、ごはんが柔らかくなり、ごはんの身が崩れてしまう恐れがあります。それをコントロールするのが、炊飯器のフタに備えられた「調圧ボール」です。これは、穴が開いたフタの開口部に丸い玉を乗せたもので、通常はボールがフタの穴を塞いでいますが、圧力が必要以上にかかりすぎた場合、蒸気が玉を押し上げて圧力を抜く仕組みになっています。


日立「圧力蒸気極上炊き 甘みふっくら RZ-FV100J」の炊飯工程。釜内部に圧力を掛けて気圧を高めているため、100℃を超えた炊飯が可能になった 圧力式の炊飯器では、釜内部の圧力を調節する「調圧ボール」が搭載されている(写真は象印「極め炊き NP-LS」シリーズの調圧ボール)

攪拌効果で長年の課題「炊きムラ」を解消

圧力を掛けた後に1気圧に戻することで、米を攪拌し、炊きムラを抑える効果がある(写真は同様の機能を含んだ三洋電機の「おどり炊き」の解説パネル)
 2つ目は「炊きムラの発生の抑制」です。気圧の高い状態で100℃以上の熱で米を加熱している時に、一気に通常の1気圧まで減圧すると、温度が沸点を超える状態となるため、釜の中では爆発的な沸騰が発生します。この沸騰によって、釜内部の米は一気に攪拌され、釜の中央部とその周辺部の温度が均一化され、ごはんの炊きムラを抑えるというわけです。

 実は炊飯器は、実際に火を焚くのと比べて火力が弱いために、釜に近い部分と釜の中央部とで温度差が発生し、炊きあがり時にムラができやすいというのが大きな弱点でした。しかし、比較的強い火力を実現できるIHヒーターの採用に加え、この圧力炊飯という方法を採用することによって、その弱点を克服した、というわけです。


三洋電機「匠純銅 おどり炊き」機能。加圧→減圧を繰り返し、攪拌効果を高める狙いがある

 この圧力炊飯器を最初に実現したのは三洋電機です。1992年に圧力をかけて炊飯する電気炊飯器を登場させるとともに、2002年に炊飯中に加圧と減圧を行うことで米を強力にかくはんし炊きムラを抑える「可変圧力IH炊飯方式」を実現しました。その後、他社も続々と圧力炊飯を採用するようになっていますが、圧力のかけ方はメーカーによってさまざまです。例えば三洋電機では最大1.2気圧、日立では最大1.5気圧までかかる製品もありました。

 とはいえ、圧力の数字だけでごはんの炊きあがりの善し悪しが決まるわけではなく、高ければ高いほどおいしいごはんになるわけではありません。中には、「圧力を使わなくてもおいしく炊ける」という松下電器産業のように、高級価格帯の製品でも圧力炊飯を採用していないメーカーもあります。

 最後に、圧力炊飯で炊いた米は「もっちり」とした食感になります。この弾力もおいしさのひとつですが、“どちらかというと固めが好き”という人には、圧力炊飯で炊いたごはんはやわらかすぎると感じてしまうかもしれません。そういう意味では、弾力のあるもちもちした食感を好まれる方にはオススメの機能と言えるでしょう。


圧力炊飯で炊いたごはんは、もっちりとした食感が特徴 圧力ありの炊飯器の方が、圧力なしのタイプよりも柔らかく粘りがあるという(写真は象印「極め炊き」説明会でのパネル)



【圧力炊飯】の、ここだけは押さえたいポイント

・甘みや粘りの強い炊きあがりが期待できる
・米の攪拌効果もあり、炊きムラが抑えられる
もっちりとした食感を好む方にオススメ。さっくりとしたごはんが好きな人には不向き

2008年9月3日 初版




関連記事
第15回:炊飯器の加熱方式「マイコン式/IH式」とは(2008/08/27)

URL
  炊飯器 関連記事リンク集
  http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/rice.htm


2008/09/03 13:12
平澤 寿康
1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。

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