● 火を使わず安全。深夜料金や割引サービスで節約も可能
|
照明/空調/調理/給湯/暖房など、家庭のすべてのエネルギーを電気でまかなうことを「オール電化」と呼ぶ(写真はオール電化住宅に宿泊体験できるショウルーム「Switch! House 世田谷」)
|
オール電化とは、照明/空調/調理/給湯/暖房など、家庭で利用される全エネルギーを電気でまかなうことです。多くの場合は、現在ガスをエネルギーとして使用されている給湯器とコンロを、エコキュートとIHクッキングヒーターに置き換えることを指します。
オール電化が注目される最大の要因は、安全性の高さでしょう。オール電化住宅では火を一切使用しませんので、ガスや石油を利用する住宅と比較して火事の発生する危険性が大幅に低減しますし、不完全燃焼による有毒ガスの発生もありません。
すべてのエネルギーを電気でまかなうため、電気料金が高くつきそう……という心配もありますが、実は給湯器など消費電力の大きな機器を、電気料金の安くなる深夜に動作させることで、料金は比較的安く抑えられます。午後11時から午前7時までの深夜時間帯の電気料金は、昼間の3割ほどと大幅に安くなっています。この時間帯に使用すれば、時間帯で料金が変わらないガスと比べて、コスト面で有利になります。
とはいえ、IHクッキングヒーターやエアコンなどは、基本的には日中に使うものであり、安い深夜料金の恩恵は受けられません。こうした日中の電気料金対策として、電力会社では電気料金の割引きサービスを用意しています。
例えば東京電力では、オール電化住宅に対して電気料金が5%の割引となる「全電化住宅割引」や、オール電化住宅でなくても、IHクッキングヒーターを導入している家庭向けに電気料金が3%の割引きとなる「スマイル・クッキング割引」といった制度が用意されています。東京電力以外でも、全国各地の電力会社が同様の割引制度が用意されています。うまく活用することでさらにお得になるでしょう。
|
|
給湯器を電気料金の安い深夜に動かすことで、コストを安く抑えられる(写真はコロナのエコキュート「デザインエコキュート CHP-DH3026A2」)
|
IHクッキングヒーターがある家庭では、電気料金の割引プランを利用することもできる(写真はナショナルのIHクッキングヒーター「KZ-VW33E」の発表会の模様)
|
● 初期導入コストは大きいが、ランニングコストで回収
オール電化の最大のデメリットは、初期導入時のコストです。ガス併用住宅からオール電化住宅へと移行する場合、電気給湯器とIHクッキングヒーターを購入するために50~100万円ほどの費用がかかります。これらの機器を設置するうえでのリフォーム工事はもちろん、電気配線を一般的な100Vからよりパワフルな200Vへと変更する工事も行なわれます。トータルではかなりのコストと手間を覚悟する必要があります。また、停電などで電気が止まってしまうと何もできなくなってしまう弱点もあります。
ただし、エコキュートを導入する場合には、国の補助金制度が用意されています。2008年度の補助金制度では、1台当たり42,000円の補助金が受けられます(補助金額は毎年見直されます)。さらに、200V電源にすることで、適応床面積の広いエアコンや、ビルトイン型のキッチン家電など、100Vでは導入できなかった高出力タイプの家電製品が使えるようになります。
まとめると、火を使わないため安全かつ空気がきれい、長期的に見ればランニングコストが割安になる、家電製品の選択肢が広がるという点が長所になります。
ところで、オール電化のメリットとして「環境にやさしい」と言われることがありますが、この点に関しては使用状況によって大きく左右されますので、一概にどちらが良いとは言えません。例えば、CO2排出量に関しては、確かに火を使わないため家庭では低減するでしょうが、ガス併用時と比べて電気の使用量は増加するため、特に火力発電の場合、CO2排出量は逆に増えることになります。CO2排出量に関しては、電力会社・ガス会社とも、双方にとって最も有利となる条件の下で試算し、自分達の方が有利と主張していますが、現時点で最も省エネ性能に優れる機器を利用している限り、電気・ガスどちらを利用したとしてもCO2排出量に大きな差はないものと考えていいでしょう。
|
|
IHクッキングヒーターやオーブンなど、高出力のビルトイン家電が使用可能(写真はミーレのビルトイン型キッチン設備)
|
オール電化の基本的なメリット。CO2排出量については、発電が火力発電か否かによって変わる(写真はナショナルのエコキュート発表会時のもの)
|
【オール電化】の、ここだけは押さえたいポイント
・具体的には、ガス給湯器とガスコンロを、エコキュートとIHクッキングヒーターに変えること ・ガスを一切使わないので安全 ・高価な初期投資は、割引を受けられるランニングコストでカバー
2008年7月9日 初版
■URL
オール電化 関連記事リンク集
http://kaden.watch.impress.co.jp/static/link/alldenka.htm
■ 関連記事
・ 【特別企画】 最新オール電化住宅 1泊2日宿泊体験リポート(2006/11/06)
2008/07/09 00:02
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
- ページの先頭へ-
|