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シャープの薄膜太陽電池モジュールと濱野稔重 代表取締役兼副社長執行役員
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シャープは、イタリア最大の電力会社であるEnel(エネル)社と、独立発電事業について、2009年春をめどに合弁会社を設立する計画を明らかにした。
独立発電事業とは、自己が所有する発電施設で発電した電気を販売する事業のこと。2012年末までに、南イタリアに複数の太陽光発電所を展開し、合計で189MW(メガワット)を発電・販売する予定だという。
さらに、シャープとエネル社は、欧州の生産会社の3社で、イタリア国内に、年間1GW規模まで拡張可能なセルからモジュールまでの薄膜太陽電池工場を建設し、第1次展開として、年間生産能力480MWの生産体制を整え、2010年の稼働を目指す。現時点では、欧州の生産会社の具体的な名前は明らかにしていないが、12月には3社で、生産を行うための合弁会社設立に向けて合意文書を結び、その時点で改めて公表する予定だという。
「シャープは、太陽電池の原材料の製造、製造装置の自製化、セルやモジュールの生産、システムインテグレーション、発電事業までを含めた、トータル・ソリューション・カンパニーを目指す。生産工場については、2010年までに稼働する予定の堺工場とまったく同じ設備を利用することになる。シャープは、これを技術、運用といった形で、ロイヤリティによって収入を得る形とし、太陽電池事業の新たなビジネスモデルとなる」(代表取締役兼副社長執行役員の濱野稔重氏)
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イタリア最大の電力会社「Enel」社とともに、独立発電事業の合弁会社を2009年春に設立する。2012年末までには、南イタリアに太陽光発電所を展開する予定
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さらに、シャープとエネル社、欧州の生産会社との3社で合弁会社を設立し、イタリア国内に薄膜太陽電池工場を建設、2010年の稼働を目指すという
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エネル社との合弁会社の本社は、イタリアのローマに設置され、総投資金額は約1000億円を予定している。新会社では、太陽光発電所の建設をはじめ、発電およひ売電事業を行なう。新会社の資本金、出資比率などについては明確にはなっていないが、「シャープはマイノリティのものになる」という。また「他の欧州の電力会社からも同様のオファーがあり、検討したい」(濱野副社長)としている。
一方、シャープ、エネル社、欧州の生産会社による薄膜太陽電池工場の建設については、インタリア国内に、2010年半ば頃の稼働を予定しており、工場規模は最大約1GWまでの生産能力を有することになる。
第1次展開として、年間480MWの薄膜太陽電池の生産を計画しており、生産規模は堺工場と同等規模になる。
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濱野稔重 代表取締役兼副社長執行役員
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「欧州、北アフリカなど43か国が参加する地中海ソーラー計画では、2020年までに20GWの発電設備を整備する目標が掲げられている。イタリアは、まさに中間地点であり、製造、物流拠点としても適した場所といえる。また、サハラ砂漠には、2050年までに100GWのソーラー発電施設を建設し、欧州に電力を送り込むという計画があり、こうした需要も期待できる」としている。
現時点では、建設費用やシャープの投資額などについては詳細は明らかにしていないが、「堺工場の投資額である720億円を上回るのは明らか。ただし、当社では、ロイヤリティフィーによる収益を見込んでおり、こうした工場が3つ建設できれば、1つの工場の収益に匹敵するようなモデルとしたい。今後、北米などにも同様のモデルを展開できるだろう」などとした。
合弁会社の出資比率はマイノリティではあるが、シャープとしてはエネルギー事業に乗り出すという新事業創出の一歩となる。今後、欧州地域における複数の発電所の展開が計画されており、中長期的に同社の経営にどんな影響を及ぼすかが注目される。
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シャープの薄膜太陽電池生産工場は、現在のところは日本のほかイギリス、アメリカで展開されている
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太陽電池の生産から発電事業まで、トータル・ソリューション・カンパニーを目指すという
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同社の薄膜太陽電池モジュール
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■URL
シャープ株式会社
http://www.sharp.co.jp/
ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/081127-a.html
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・ 大河原克行の「白物家電 業界展望」 シャープの太陽電池事業戦略を見る(2008/11/18)
・ シャープ、第2世代の薄膜太陽電池の量産出荷を開始(2008/10/02)
( 大河原 克行 )
2008/11/28 00:03
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