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松下電器のパルックシリーズ
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松下電器産業株式会社 照明社は、8月21日、照明用ガラスの環境対応に関する説明を行なうとともに、大阪府高槻市の照明社本社において、ガラス製造の実証設備を公開した。
照明用ガラスの環境対応としては、9月から、蛍光灯電極部用の無鉛ガラスの量産を開始し、10月1日から、自社で生産するすべての蛍光灯の電極部を無鉛ガラスに切り替えることを明らかにした。また、無鉛ガラスを使用し、省エネ性能に優れた蛍光灯には、包装箱に「環境ラベル」を貼付する。
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松下電器産業 照明社・伊藤清文社長
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「業界の先陣を切って、完全無鉛化を図る。2010年以降には、RoHS指令のなかにも、蛍光灯電極部ガラスの無鉛化が盛り込まれる可能性がある。過去10年間に渡って、無鉛化に向けた取り組みを行なってきた成果が、ここにきて実を結んだ」(松下電器産業 照明社・伊藤清文社長)とする。
同社では、昨年10月に「エコアイディア宣言」を発表。2009年度を最終年度とする中期経営計画「GP3計画」において、環境共存への取り組みを推進している。地球温暖化防止についての関心が高まるなか、「照明」は身近な省エネ活動につながる製品として注目されており、同社でも照明事業における新たな環境対応に力を注いでいる。
一般的に蛍光灯の外管には、無鉛ガラスが使用されているものの、電極部については、複雑な形状をしているために高い加工性が求められること、高電気抵抗、気密性の維持が要求されるため、2006年7月に発効されたRoHS指令でも、電極部用ガラスの無鉛化が適用除外されていた。
松下電器では、ガラスの組成設計技術により、ガラスの添加成分として鉛の代わりにバリウムを使用することで、鉛ガラスと同等の加工性と高電気抵抗を確保した新無鉛ガラスを開発。さらに、大阪府高槻市の自社工場内に無鉛ガラスの実証設備を導入して、量産化条件を確立した。また、新無鉛ガラスを用いて、複雑な形状をした蛍光灯電極部の加工温度条件の適正化を行ない、無鉛ガラスによる電極部の加工プロセスを確立することで、電極部の無鉛化を実現したという。
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無鉛ガラスを使用した蛍光灯に貼付される「環境ラベル」
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右が鉛の入った電極部。ちょっと黒ずんでいる。左が無鉛による電極部
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現在、直管蛍光灯、丸管蛍光灯、ツイン蛍光灯の電極部に鉛を利用しているが、これが無鉛になる
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発光管ガラスは低い温度で成形できるソーダガラスを使用。だが電極部は、ソーダガラスでは電気抵抗が低いため鉛を入れる
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石英ガラスは安定性があるが高温での成形となるために蛍光灯には不向き。そこで、低い温度で加工できるソーダガラスが使われる。ソーダガラスの電気抵抗の低さを補うために鉛を使用するが、新技術ではバリウムを使用
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松下電器産業 照明社 照明システムR&Dセンター・安宅とも子グループマネージャー
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「加工した無鉛ガラスは、加工温度領域が低く、加工性に優れており、複雑な形状をした蛍光灯電極ガラスの加工が容易になるほか、電極部ガラスに必要な高電気抵抗特性を有しているので、電極部ガラス内に封着された導入線間での絶縁を維持できる。また、金属と馴染みやすく気密性に優れるため、電極部ガラス内への導入線の封着が容易になる」(照明システムR&Dセンター・安宅とも子グループマネージャー)などとしている。
これにより、同社が年間生産している1億3,000万本の蛍光灯がすべて無鉛化。年間約2,000トンにのぼっていた鉛ガラス使用量がゼロになるという。量産技術を、中国・天津の同社工場に展開するとともに、中国・北京やインドネシアの工場での生産拡大に取り組む。
「他社に先駆けたことで、外販によるビジネス拡大も見込める。今後は、水銀使用量の削減にも取り組んでいきたい。RoHS指令では、7mg以下の水銀使用基準があるが、当社ではトップ水準となる5mg程度に抑えている。これをさらに引き下げていきたい」(照明社・伊藤社長)とした。
さらに同社では、使用済みの蛍光灯ガラスを、自社ガラス工場内で再利用する取り組みを拡大。2010年度には、年間5,300トンの使用済み蛍光灯のガラスを再利用する予定だという。
これにより、ガラス原材料の使用量を半減し、ガラス溶接時に排出されるCO2量を、2007年度比で約12%削減にあたる年間1,090トンの削減ができるという。さらに、数億円の設備投資により、燃焼方式を「空気-ガス」から「酸素-ガス」へと改善することで、年間1,200トンのCO2排出量を削減。使用済み蛍光灯の再利用による効果とあわせて、2010年度には、約25%のCO2排出量の削減が可能になるという。
「中間処理会社であるJFE環境、神鋼環境ソリューション、野村興産など7社との協業により、外部再生カレット(ガラス屑)の品質確保、使用量拡大の2つの観点からの技術革新によって実現した。品質確保では、組成、不純物含有量などの品質基準を決定。一方で、外部再生カレット使用量拡大では、溶融炉に設置している8つのバーナーをバランスよく加熱することで、炉の中央部に高温部を作り、安定した対流を確保。対流不足による泡スジ、ブツの発生を抑制することにより、高品位の蛍光灯を作ることができるようになった。炉を唯一国内に持っている当社だからこそ、実現できたといえる。これまでは、外部再生カレットは、グラスウールやセメント材料など、建設資材へ再生利用されていたが、今回のリサイクル技術により、、ランプtoランプによる循環促進が行なわれることになる」(安宅グループマネージャー)という。
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蛍光灯用ガラスの循環の仕組み
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2010年には、ガラス原材料の使用量が減少し、再生カレットの利用が増加する
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再生カレットの比重を大幅に増やす計画だ
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カレットを増加させると泡スジなどが増加し、強度低下や輝度ムラを引き起こす
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蛍光灯ガラス管一本あたりのリサイクル材料のうち、外部再生カレットの比重は、2007年度にはわずか3%だったものが、2010年度には27%に拡大。これだけで40W直管蛍光灯2,300万本に相当するという。また、工程内から排出される内部再生カレットとあわせて7割が、再生カレットによるものになる。これにより、けい砂などのガラス原材料は、30%に削減。「他社に比べても圧倒的ともいえる再生カレットの使用率となる。原材料が高騰するなか、コストの削減にも若干の効果がある」(伊藤社長)という。
同社では、7月1日に、業界で初めて蛍光管のなかに、クイックランプを搭載したパルックボールプレミアQを発売。「当初計画の3倍を超える受注を得て、順調に立ち上がっている。最低でも100万本以上の出荷ができる」(松下電器産業 照明社・伊藤清文社長)という。また、「蛍光灯全体でも、前年比150%となる、2,000万本以上の出荷が見込める」としている。
また、「各地の名所や祭りの主催者が、省エネに対する認識が高まっており、省エネ電球形蛍光灯の交換が進んでいる。京都の祇園祭や、青森のねぶた祭などでも当社の電球形蛍光灯に交換していただいた」として、省エネを背景にした導入も促進されているという。
照明業界における環境対応の課題として、「省エネ、環境負荷物質削減、リサイクルの取り組みが必要であり、今回の無鉛化、ガラスリサイクルによって、省エネの取り組みに加えて、3つの要素が揃う」とした。
● 工場見学編
それでは実際に無鉛ガラスが生産されている工場の様子を見ていこう。
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照明社がある大阪府高槻市の拠点
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JR摂津富田駅から徒歩5分の距離にある
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JR摂津富田駅
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再生カラットを利用したガラス管生産の実証が行われている棟
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工場内は高温となり、またガラスを扱っているため、見学者には眼鏡が配布される
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それぞれの材料の役割はこの通り
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溶融炉には、けい砂といった原材料や再生カレットのほか、10種類の材料を同時に入れる
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溶融炉は、実証用であり、量産用に比べて10分の1の規模だという。手前は備熱炉
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溶融炉へ材料投入口は2階部分。ここから原材料を投入する
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これが再生カレット
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再生カレットは、箱ごとクレーンで持ち上げられて投入される
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原材料と再生カレットが混ざって、コンベアで運ばれる
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溶融炉部分。約1,500℃で溶解する。室内も35℃から40℃という温度
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スリープドライバー。先端にはセラミックとなっており、ここに溶かしたガラス材料を巻き付ける
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突き当たりがスリープトライバーがある部分。材料を引っ張ることで、空洞のガラス管ができる
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材料を引っ張る部分は管引きエリアと呼ばれる。約30メートルの長さ
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ローラーを伝わって、ガラス管が流れていく。これをドローイングマシンでカットして完成する
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完成した蛍光灯
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■URL
松下電器産業株式会社
http://panasonic.co.jp/index3.html
松下電器照明社
http://panasonic.co.jp/lamp/
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( 大河原 克行 )
2008/08/25 13:52
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