パナソニック、ホームアプライアンス社が滋賀県草津地区でエコアイディア宣言
パナソニックは、2011年10月13日、滋賀県草津市のパナソニック ホームアプライアンス社において、エコアイディア宣言を行なった。
パナソニック ホームアプライアンス社は、2008年6月に、「環境宣言~エコアイディア工場びわ湖~」を発表。同工場を先進的なエコ対応型生産拠点と位置づけ、環境貢献活動を行ってきた経緯がある。
今回のエコアイディア宣言は、これらの活動を踏まえて、新たな段階として環境活動に取り組んでいくことを示したもので、「CO2削減への貢献」、「循環 型モノづくりの確立」、「生物多様性の取り組み」を宣言として取りまとめ、構内に新設した資源循環実証工場やエコナビハウスなどのほか、環境循環商品群を 発表した。
ホームアプライアンス社のこれまでの環境への取り組み | エコアイディア宣言の骨子 |
「CO2削減への貢献」では、エネルギーを効率的に制御するインバーター、エネルギーを有効に活用するヒートポンプ、エネルギーの無駄を抑える断熱技術、エネルギーを作り出す燃料電池技術といった環境コア技術を活用。エコナビ機能のさらなる進化による省エネ商品の追求、生産活動の効率化や創エネ事業の拡大により、2018年には、2005年度基準比で4,000万トンのCO2削減貢献量を目標とする。
CO2削減への貢献がまず必要だという | インバーター、ヒートポンプ、断熱技術、燃料電池技術といった環境コア技術を活用 | エコナビ機能のさらなる進化によって、省エネ商品の追求していく |
「もったいないという理由から10年前の家電製品を利用しているユーザーもいるが、最新の家電製品に買い換えるだけで、大幅な省エネができるという観点での買い換えも考えてもらいたい」(パナソニック ホームアプライアンス社の高見和徳社長)とする。
さらに、エコナビハウスを構内に設置。「今すぐできる!みんなと省エネ」をコンセプトに、エコナビ搭載商品による上手な節電方法を提案するとともに、真空断熱材を建築材に使用する事例を紹介し、断熱性能に優れた住宅を提案する。
「社員はマイスターとし、わかりやすい形で省エネを紹介する。一人ひとりの省エネ行動についても考える場にしたい」とパナソニックホームアプライアンス社の高見社長は語った。
パナソニック ホームアプライアンス社の高見和徳社長 | 上手な節電方法を提案するエコナビハウスを構内に設置 | 環境循環商品群として発表した炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機 |
「循環型モノづくりの確立」では、新たなリサイクル技術を導入。テレビ用廃ブラウン管のガラスや廃家電の樹脂などの再生資源を活用した仕組みを構築。一定量の再生資源を利用した資源循環型商品の開発に取り組む。また、使用時の省エネ化だけでなく、モノづくり時のエネルギー抑制に配慮した循環型モノづくりにも取り組むという。
具体的には兵庫県加東市のパナソニック エコテクノロジーセンター(PETEC)で回収したテレビ用廃ブラウン管のガラスを活用し、グラスウールに再生する新たな工法の実証実験を行ない、2012年2月には草津地区構内に設置するグラスウール生産実証工場で、再生グラスウールの量産を開始する。再生グラスウールは、冷蔵庫やジャーポットなどに利用されている真空断熱材の材料に活用するという。
「これまではブラウン管のガラスは、そのままブラウン管に再生するといった形で再生されていたが、薄型テレビにシフトしたことで、用途がなくなり、約4万トンの在庫がある。これをまったく異なるグラスウールとして利用することができるようになる」と語った。
テレビ用廃ブラウン管のガラスを再生資源を活用できる | 廃家電からのプラスチックの回収量を拡大していく | 再生樹脂を活用した新技術を開発している |
また、PETECで開発した単一樹脂を自動選別する技術や、パナソニックホームアプライアンス社が開発した再生樹脂の劣化を回復させる材料再生技術を活用することで、樹脂の循環使用量を拡大。さらに、パナソニックホームアプライアンス社独自の真空圧空成形や3Dインモールド成形などを用いることで、塗装を不要にしながら高品位な外観に仕上げることができるため、これまで困難だった商品のフロントパネルなどにも再生樹脂を活用していくという。
「樹脂は材料の選別を手作業でやらなくてはならず、4万トンのうち20%程度しか再利用されないのが実態であるが、これを自動化することでさらに比率を高めていきたい」とした。
環境循環商品群として、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、掃除機を投入する計画を示し、「まずは1,600トン程度のグラスウールしか確保できず、真空断熱材換算で30万枚になる。その量では、パナソニックだけの利用となるが、量が確保できるようになれば、家電業界以外にも再生グラスウールを使用した真空断熱材の提供を考えたい。来年春以降に具体的な製品として投入していくことになる。エアコンなどにも使っていくことができるだろう。具体的な製品や数値目標については12月頃にも発表したい」(パナソニックホームアプライアンス社・高見社長)と語る一方、「こうした循環型製品が市場にどう受け入れられるのかも考えていく必要がある」とした。現時点では、ブラウン管テレビ1台で畳半分程度の真空断熱材が50枚生産できるという。
一方、「生物多様性の取り組み」では、これまで取り組んできたびわ湖の環境保全活動を拡大し、草津地区を野生生物が生存しやすい環境に整備していくという。構内の13,000平方メートルの緑地を「共存の森」として整備し、人と生き物が共存する里山再生エリアと、人手が入らないビオトーブを設置するほか、2018年を目標に「エコロジカルネットワーク」を完成。滋賀県が展開するビオトーブネットワーク長期構想や、草津市の自然と人との共生をすすめる施策の推進計画といった行政や地域と連携しながら、生物の生息環境をつなぐ環境を作り上げるとした。
生物の多様性を保全する取り組みも行なっていくという | 人と動物が共存する「エコロジカルネットワーク」を構想 |
パナソニック ホームアプライアンス社の高見和徳社長は、「『環境宣言~エコアイディア工場びわ湖~』では、生産活動におけるCO2排出量削減で、2009年度に2万9,000トンの削減を目標としたが、実績では9万トンに達し、環境性能業界ナンバーワンの商品数は、2006年度の8機種から、2010年度には53機種と約7倍になった。さらに、環境コミュニケーションとして約1万7000人を対象に環境教育を行ない、NPOのびわ湖エコアイディア倶楽部とともに、琵琶湖の葦狩りや一斉清掃を行なった。
今回の宣言は、パナソニックが創業100周年の2018年度にエレクトロニクスNo.1の環境革新企業を目指すうえで、目に見える形でさらに踏み込んだ活動をすることを示したものである。そして、今回のエコアイディア宣言は、ホームアプライアンス社と社会との約束といえるものでもある。アプライアンスNo.1の環境企業を目指し、インド、ベトナム、ブラジルといったパナソニックホームアプライアンス社のグローバルの拠点にもエコアイディアの取り組みを展開していく」と語った。
滋賀県の嘉田由紀子知事 |
来賓として訪れた滋賀県の嘉田由紀子知事は、「滋賀県でも今年4月に、2030年にCO2を半減するというチャレンジな目標を掲げているが、企業が先駆けて環境に取り組んでいくことに感謝している。琵琶湖には、1,000種類の生物が生息し、そのうち60種以上が固有種となっている。滋賀県から世界に対して、エコアイディアを発信していきたい。“企業には想定外という言葉はない”と、パナソニックの中村会長は語っているが、我々も最悪の事態を想定することが必要であり、環境への取り組みにおいても同様の考え方をしていきたい」などとした。
草津市の橋川渉市長 |
また、草津市の橋川渉市長は、「エコアイディアという言葉が世界標準の言葉となり、環境の観点から日本の存在を、世界にアピールすることにもなることを期待している。環境に関する人づくり、地域づくりという観点からもパナソニックの取り組みには注目している」などと語った。
パナソニックの中村邦夫会長 |
一方、パナソニックの中村邦夫会長は、「日本は2011年3月11日を境に、まったく違う国になってしまった。原発に対する信頼を根底から揺るがし、電力不足は今後もボディブローのような日本経済全体に深刻な影響を与えることを覚悟しなくてはならない。私は21世紀は環境産業革命であると語ってきたが、世界的に脱化石燃料へと動き始め、再生可能エネルギーの活用へと動き始めている。パナソニックは、省エネ、蓄エネ、創エネの技術に磨きをかけ、グローバルにリーダーシップを発揮したい。ホームアプライアンス社は、日々の生活に不可欠な製品を担当しており、地球にやさしいエコアイディアに満ちたライフスタイルを、世界に向けて具体的に提案していかなくてはならない」と、今回のエコアイディア宣言の狙いを語った。
ゲストとして登場した吉瀬美智子さん |
また、会場にはゲストとして女優の吉瀬美智子さんが登場。吉瀬さんは「緑が多く、自然豊かなところでエコナビ商品がつくられていることを知った。パナソニックには、これからも自然にやさしく、環境にやさしい商品をつくってほしい。ひとつの製品をつくるのに30数年間かかって作り上げたという話も聞き、感動した。これからも応援していきたい」などと語った。
(大河原 克行)
2011年10月14日 00:00