シャープ、2011年度の業績見通しおよび事業方針を発表
シャープ 片山幹雄社長 |
シャープは、2011年度の業績見通しおよび事業方針について発表した。
2011年度(2011年4月~2012年3月)業績見通しは、連結売上高が対前年度比で0.9%増の3兆500億円、営業利益は同22.9%増の970億円、経常利益は同13.3%増の670億円、当期純利益は同69.1%減の60億円とした。
2011年4月27日に行なわれた2010年度業績発表の席上では、「2011年度の業績見通しについては、企業活動に与える東日本大震災の影響は広範囲であり、予想が難しい。業績に与える影響額を現段階で合理的に見積もることが困難である」(片山幹雄社長)として公表していなかった。
2011年度は、第1四半期に大型液晶パネル工場の投入停止の影響などから大幅な減益となるとしたが、液晶事業の構造改革を推進することで、第1四半期をボトムとした収益改善に取り組むとした。
第1四半期の連結営業利益は20億円に留まるとするが、第2四半期以降、液晶事業の回復とともに、太陽電池やスマートフォン向け液晶パネルの好調が下支えとなり、営業利益が回復するとした。
2011年度の連結業績予想 | 四半期ごとの予想 | 特別損失の項目としては、事業構造改革費用と大型液晶操業損が挙げられた |
白物家電事業を中心とした健康・環境機器部門の売上げ見通しは3.7%増の2,800億円、営業利益が25.3%増の250億円とした。
太陽電池は、売上高が前年比20.5%増の3,200億円、営業利益は280.0%増の80億円とした。
太陽電池の販売量は、36.9%増の1,700MWになるという。
エアコンや冷蔵庫では日本国内におけるエコポイント制度終了後の反動があるものの、節電に対する意識の高まりとともに、LED照明などに対する需要が拡大すると予測している。また、太陽電池も国内を中心とした需要拡大が見込まれるとした。
なお、液晶テレビの販売台数は前年比1.2%増の1,500万台、販売金額は前年比15.4%減の6,800億円を目指すとした。
白物家電事業を中心とした健康・環境機器部門の売上げ見通しは3.7%増の2,800億円、営業利益が25.3%増の250億円となった | 部門別では太陽電池の需要拡大が見込まれる |
また、同社では、液晶事業の構造改革についても公表した。
シャープの片山幹雄社長は、「液晶市場の環境変化によって、30型、40型といった液晶テレビ市場での市場成長率の鈍化、収益性の悪化といった問題が顕在化する一方で、スマートフォンやタブレット端末の普及によって中小型液晶の需要が拡大している。大型液晶の収益改善と、拡大する中小型液晶に対してどう対応を図るかが当社にとっても課題であり、今回の構造改革により、大型から中小型液晶への液晶生産体制の最適化とともに、大型液晶における成長市場へのシフトを図る」とした。
中小型液晶については、これまでテレビ用液晶パネルを生産してきた亀山工場において中小型モバイル液晶への生産シフトを図り、亀山第1工場ではCGシリコンを生産開始することで、スマートフォン需要に対応。また、亀山第2工場における酸化物半導体によるIGZO液晶の生産を開始することで、タブレット端末への需要対応をそれぞれ図るという。高精細や高性能、低消費電力という同社パネルの特徴が生かせるという。
また、大型液晶については、北米、中国市場などで成長している60型以上の液晶テレビの出荷拡大、60型や70型のデジタルサイネージ市場の拡大にあわせて、大型パネルの生産を強化する考えであり、これまで40型を中心に生産していたグリーンフロント堺において、60型以上の生産量を引き上げる。60型以上の生産比率については言及しなかったが、「堺で全生産量を60型以上にシフトして、400~500万台であり、1,500万台の計画に対しては3分の1程度。そこまでは当然いかないが極力増やしていきたい」とした。
一方で、競争が激しい30型、40型のテレビ用パネルの調達については、台湾などの液晶パネルメーカーとのアライアンスにより、外部調達を図ることになる。
「赤字の領域(30型、40型液晶テレビ)で勝っても意味がない。成長市場や、我々が新たな市場を創出できる領域で戦っていく。亀山工場を稼働させたときには、我々が強い製品領域において市場を創出し、業容を拡大した。だが、2008年、2009年は成長が止まった。シャープが新しいものを作っていくという姿勢ではなかったことが反省点である」などとした。
(大河原 克行)
2011年6月3日 17:08