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東海大学、パナソニックの太陽電池で世界最大級ソーラーカーレース3連覇に挑戦

 東海大学は、同大学のソーラーカーチームが、世界最大級のソーラーカーレース「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ2013」に参戦すると発表。パナソニックのHIT太陽電池とリチウムイオン電池を採用したソーラーカー「Tokai Challenger(東海チャレンジャー)」号で、同大会の3連覇に挑戦する。

世界最大級のソーラーカーレース「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ2013」に参戦するソーラーカー「Tokai Challenger(東海チャレンジャー)」

 ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジは、太陽光だけを動力源として、オーストラリア北部のダーウィンから南部のアデレードまで、総延長3,000kmの走破タイムを競う、世界最大級のソーラーカーレース。1987年から開催され、1999年からは1年おきに実施されている。東海大学では1993年大会より参戦。2009年大会、2011年大会では、2大会連続で総合優勝を果たしている。2013年大会は、10月6日から13日まで開催される。

ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジのレース概要。10月6日から13日まで開催される
東海大学は2009年大会、2011年大会で2大会連続の優勝を果たしている(写真は2011年大会のようす)

 今回挑戦する2013年モデルのTokai Challengerには、前回大会に引き続き、出力の高さが特徴のパナソニックの太陽電池「HIT太陽電池」を採用。前回大会で採用されていたHIT太陽電池は、変換効率が22%、出力が1.32kWだったが、2013年モデルでは、変換効率は22.5%、出力は1.35kWに増えているという。

 さらに、軽量化も実現しており、撥水性や砂塵対策、耐環境試験を実施するなどオーストラリアでの使用を想定した開発を行なっているという。

Tokai Challengerに搭載されたHIT太陽電池
HIT太陽電池は、出力の高さが特徴。開発レベルでは、世界最高のセル変換効率「24.7%」を達成している
Tokai Challengerに搭載されるモジュールの変換効率は22.5%。オーストラリアでの使用を想定し、テストを行なっているという
パナソニック エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部 ソーラービジネスユニット 吉田和弘氏

 パナソニック エコソリューションズ社 エナジーシステム事業部 ソーラービジネスユニットの吉田和弘氏は、HIT太陽電池について「限られた面積で、最高のパフォーマンスが発揮できる。高温時の出力も高く、耐水性、耐環境性にも優れている」と自信を見せる。

 太陽電池で発電した電気を蓄えるリチウムイオン電池にも、パナソニック製を採用。アメリカのテスラ社の電気自動車にも搭載されている円筒型の「NCR18650B」を432本搭載しており、重さは規定の21kgよりもわずかに少ない20.952kgとなった。

バッテリーにはパナソニック製のリチウムイオン電池を採用
円筒型の「NCR18650B」を432本搭載する

 また車体の素材には、軽さと強度の優れた、東レの炭素繊維「トレカ」を採用している。

 前回大会からは大会のレギュレーションが変更され、ソーラーカーの車輪が3輪から4輪へ義務化された。また、全長は5m以下から4.5m以下に変更され、十分な視野を確保する大きなコックピットを設置することなども追加された。

 プロジェクトチームはこのレギュレーション変更を受け、Tokai Challengerの仕様を変更。大型化されたコックピットの影が太陽電池に落ちないよう、コックピットを進行方向の左側に寄せた。レースは午後の時間が長いため、右側ではなく左側に寄せたほうが、受ける光量が多いという。さらに、太陽光が透過すること狙い、コックピットのキャノピー(覆い)を透明に変更した。

大会レギュレーションが変更され、車輪が3輪から4輪に義務化された
太陽光パネルに光が当たりやすいよう、コックピットを端に寄せた車体を採用
Tokai Challengerの写真。タイヤは4輪になり、コックピットは進行方向の左側に寄っている

 「全長が5mから4.5m以下に減ったため、太陽光パネルを貼るスペースが少なくなり、設計にかなり時間がかかった。デザインについても、コックピットを中央にするか、片側に寄せるかの比較にも苦労した」(プロジェクトチームの代表を務める、東海大学工学部動力機械工学科3年次生 大久保亮佑氏)

 また現時点での課題としては、透明のキャノピーを採用したことで、コックピット内が暑くなるという問題があるという。

 「現在はキャノピーに赤外線を反射するフィルムを貼っているが、それでも十分ではないため、風を導入する口を作るか、偏光のレンズで光を抑えるなどの対策を行ないたい」(プロジェクトチームのマネージャーである、東海大学 工学部 電気電子工学科 木村英樹 教授)

プロジェクトチームの代表を務める、東海大学工学部動力機械工学科3年次生 大久保亮佑氏
東海大学 工学部 電気電子工学科 木村英樹教授
車体は台車部と太陽電池パネル部に分割されている
コックピットのようす。キャノピーを透明にしたことで、内部が暑くなる問題が発生している

 ライバルチームとしては、前回および前々回大会で2位と、東海大学に続いたオランダのデルフト工科大学、前回および前々回大会で3位だったアメリカのミシガン大学の名前が挙がった。また日本からは、工学院大学、金沢工業大学、八戸工業大学が同レースに参戦予定となっている。なお、デルフト工科大学とミシガン大学は、東海大学と同様、コックピットを片側に寄せたソーラーカーを使用する。

 今後のスケジュールは、9月6日にソーラーカーをオーストラリアへ空輸。10月初旬に車検と予選を終えた後、10月6日に本戦のレースがスタート。ゴールは10月10日または11日を予定している。

東海大学のライバルチーム。過去2大会で東海大学に続いた2チームは、いずれもコックピットが片側に寄ったソーラーカーを使用する
日本からは工学院大学、金沢工業大学、八戸工業大学も参戦。コックピットの位置は中央に設けられている
遠征メンバーは27名。留学生や女子学生、OBなど特別アドバイザーも含まれる
屋根に搭載された太陽電池は非常に薄い
コックピット内部。フロント部に情報表示画面を搭載することも義務化された
キャンパス内を走行しているようす
上からソーラーカーを撮影したようす

正藤 慶一