三洋、“世界初”米から米粉パンが作れるホームベーカリー
「GOPAN(ゴパン)」

ホームベーカリー「GOPAN(ゴパン) SPM-RB1000」と、三洋電機 佐野社長

 三洋電機は、米から米粉パンが作れるホームベーカリー「GOPAN(ゴパン) SPM-RB1000」を10月8日より発売する。希望小売価格はオープンプライス。店頭予想価格は5万円前後。

 米から米粉パンが作れる“世界初”のホームベーカリー。同社では、圧力式の炊飯器や米粉パンが焼けるホームベーカリーをそれぞれ業界に先駆けて発売するなど、米に関する製品に注力してきた。その一方で、米の消費量、自給率は共に年々低下しているという。日本は先進国の中でも自給率が41%(平成20年度)と低く、食料自給率を上げるためにも米の消費拡大は重要な取り組みの1つだという。

 中でも米粉を使ったパンは、欧風化した現在の食生活にマッチしやすいとの理由で注目を浴びている。これまでのホームベーカリーは、米粉を使って米粉パンを焼いていたが、米粉は小麦より材料費が割高、流通ルートが限定的であるという点が課題となっていた。同社では、これらの問題を解決するために、米から米粉パンを作れるホームベーカリー「ゴパン」を新たに開発した。

三洋電機では、圧力IH炊飯器「おどり炊き」など米に関する製品に注力してきた米の消費率、自給率は年々下がっているというこれまでのホームベーカリーは米粉からパンを作っていたが、米粉は割高、手に入りにくいなどの問題があった
製品本体。左からプレミアムホワイト、プレミアムレッド本体上部の操作パネルふたを開けたところ
本体側面米粉パン用のパンケースふたにはドライイーストとグルテンを自動投入するケースを設置するスペースが設けられている

 米は硬く、細かく粉砕するのが難しいため、パン作りに適した米粉を作るには、通常、大型の製粉設備が必要だった。ゴパンでは、米から米粉パンを作るために、米を粉ではなくペースト状にする機構を新たに開発。米を洗米し、水に浸してからミルで粉砕、ペースト状にしてから生地をこねあげるという。

 この機構を実現させるために、本体には粉砕用のモーターとこね用のモーターを2台搭載、1つの軸でそれぞれを逆回転させる「正逆回転機構」を採用する。これはミル羽根とこね羽根が逆回転しながら、工程を進めるというもので、これによりお米の切削と生地のこね段階の全自動化が実現したという。

米から米粉パンを作るために同社では、米粉ペースト製法と正逆回転モーター機構を新たに開発した固い米を粉にするのは家庭用のホームベーカリーでは難しかったため発想を変えて、粉ではなくてペースト状にすることを思いついたという正逆回転モーターは1つの軸で2つのモーターが逆方向に回転する
本体カットモデル。パンケースの下部分に正逆回転モーターが搭載されている正逆回転モーターの上部。軸の横に付いている羽根根で、生地をこねる下部分には、米を粉砕するミルが搭載されている

 米粉パンの作り方は、まず米をごはんを炊く時と同様に洗い、水と一緒に本体にセットする。その上から砂糖、塩、ショートニングを入れ、本体上部の自動投入ケースにグルテンとドライイーストをセットしてスタートボタンを押す。1斤の米粉パンを焼くのにかかる時間は3時間58分。

米粉パンを作る時の材料。米は普通のごはんと炊く時と同じように、洗米し水に浸けるまずはミルが、水と米を切削し細かくしていくその後上のこね羽根根で生地を撹拌する
生地が固まってきたら、後は通常のパンと同じ様に発酵段階に入る焼きあがり

 運転コースとしては、小麦アレルギー対策としてグルテンの代わりに上新粉を使用する「小麦ゼロコース」を搭載するほか、雑穀米、玄米の米粉パンが作れるコースも搭載。また、小麦を使った「小麦パン」「天然酵母パン」「バターロール」にも対応するほか、もちコース、うどん・パスタの生地を作れるコースなど全22種類のコースを用意する。

使う米の種類は特に指定されていない。写真は左から、黒米、タイ米、イタリア米で作った米粉パン玄米や雑穀米にも対応する。左から玄米、雑穀、赤米日本のコシヒカリで作った米粉パン。左から鳥取産コシヒカリ、新潟産コシヒカリ、小麦ゼロコースで作った米粉パン

 同社では、米から米粉パンを作るメリットとして、経済的、ヘルシー、米の消費量増加による自給率の向上などを挙げる。経済的である理由としては、材料費が米粉を使った場合より抑えられる点を挙げる。米粉を使った場合の米粉パンの材料費は1斤約336円であるのに対し、ゴパンでは約148円だとする。

 また、小麦パン300g当たりのカロリーが約861kcalであるのに対し、米粉パンは約780kcalでカロリーが少なく、水分含有率が高いため、腹もちが良いという。さらに、米はどこの家庭にもあるため、材料を揃える手間が少なく、和食のおかずにも合うため、日々の食事に取り入れやすいという利点も挙げる。

米を使った米粉パンを食べる人が増えることで米の消費量が増加し、食料自給率の向上につながるという小麦のパンに比べ、カロリーが少なく、水分含有率が高いため腹もちが良いというメリットもあるという和食のおかずに合うというメリットも挙げる。写真はひじき炒めを米粉パンの上にのせたもの

 本体サイズは、354×278×387mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約11kg。消費電力はミル時で450W、こね時で150W。本体容量は食パン1斤、もちの場合3合。最大13時間のタイマー予約機能を搭載する。本体カラーはプレミアムホワイト、プレミアムレッドの2色。

農林水産省 佐々木隆博 大臣政務官

 会場では、農林水産省 佐々木隆博 大臣政務官も登場し、ゴパンについてコメントした。佐々木氏は「現在推進している食料・農業・農村基本計画の中でも、食料自給率に関する問題は一番の課題となっている。米粉の活用はその中でも重要なモデル事業として捉えているが、米から米粉パンができるこのような製品ができたことは我々にとっても大変心強い」と話した。


三洋電機 代表取締役社長 佐野精一郎氏

 三洋電機 代表取締役社長 佐野精一郎氏は、ゴパンについて「三洋電機の米へのこだわりを体現した製品。米の自給率・消費率を上げるには単なる和食への回帰だけでなく、新しい形の提案をすることが必要だ。製品が普及することで、食料自給率や朝食欠食の問題も改善できると考える」と話した。また、三洋電機はパナソニックとの統合を控えているが、このタイミングで新たな技術を搭載した製品を発表したことについては「今回の製品は、環境や日本の自給率向上につながる期待が持てる製品。我々が強い技術に関しては統合後も堅持し、グローバルな視点でコラボレーションしていきたい」と語った。

 会場では「日本のほかにも米を主食としている地域はあるが、海外での販売予定はあるか」との質問があった。これに対し佐野社長は「予定している」と答え「まずは中国などアジア地域を考えている。将来的には欧米・欧州も視野に入れているが、パンに対する味覚や嗜好が日本やアジア地域とは異なるため、さらなる工夫が必要だ」と答えた。





(阿部 夏子)

2010年7月13日 16:54