家電製品ミニレビュー

三菱電機「雷神 TC-BXA15P」

~吸引力が持続、ニオイも抑制。紙パックの弱点を克服した掃除機
by 正藤 慶一
三菱電機「雷神 TC-BXA15P」

 巷に出ている掃除機は、そのほとんどが「サイクロン式」と「紙パック式」の2種類に分かれる。両者の違いは、吸い込んだゴミを高速回転のサイクロンで集めるか、本体内にセットした紙パックで集めるか、という点にある。

 どちらが良いとは一概には言えないが、高級モデルではサイクロン式が伸びている傾向にあるようだ。ダイソンをはじめとするメーカー各社が、“吸引力が持続する”を謳い文句とするサイクロン式掃除機を発表しているが、各社が独自開発の集塵機構や静音構造を搭載するなど、高機能化が進んでいる。

 一方の紙パック式は、以前から日本に浸透していた集塵方式のためだろうか、主に安いゾーンの製品が多く、サイクロン式のように、“吸引力が落ちない”“運転音が静か”というような、派手な謳い文句の製品はあまりみられない。もしかすると、「紙パック式」イコール「安い、低機能」というイメージを持っている人もいるかもしれない。

 しかし、今回紹介する三菱電機の紙パック掃除機「雷神 TC-BXA15P」(以下、雷神)は、普通のものとは一味違う。紙パック式でも、“吸引力の長持ち”を謳い、かつ紙パック式の弱点である“紙パックのランニングコストの抑制”や“臭いの抑制”にも取り組んだ、紙パック式掃除機の高級モデルだ。


メーカー三菱電機
製品名雷神 TC-BXA15P
希望小売価格オープンプライス
購入店舗ヨドバシカメラ
実売価格34,800円
 


ゴミの吸引力はまったく問題なし。使用後に捨てなくていいのはやっぱりラク

 雷神の本体の第一印象は、ちょっと大きめな紙パック式掃除機といったところ。見た目がメカっぽいサイクロン式掃除機と比べると、レトロな印象も受けてしまう。

 本体サイズは240×375×275mm(幅×奥行き×高さ)で、同じく三菱の普及モデルの紙パック式掃除機「Be-K(ビケイ)」の218×354×223mm(同)と比べると、全体的に大きい。とはいっても、サイクロン式の最高級モデル「風神」は254×401×303mm(同)なので、それよりもコンパクトになる。本体重量は4.8kgで、普及モデルと比べれば重いが、風神とはほとんど変わらない。

 

本体サイズは240×375×275mm(幅×奥行き×高さ)。普通の紙パック式掃除機と比べると、やや大きめだホースは写真のように、本体に立て掛けられるホースを繋ぐ部分には、運転状況を表示するモニターも備える。各モードについては、これから説明する

 使用する前の準備として、まずは本体から集塵ボックス「クリーンBIGボックス」を取り外し、同梱される紙パックをセットする。付属の紙パックは「MP-9」という品番で、パックに脱臭効果が高い備長炭を配合し、またダニのフンの死骸や花粉といったアレル物質の働きを抑制する効果があるという。説明書には、必ず純正品の紙パックを使うことが指示されている。

写真中央の黒くて大きなパーツが「クリーンBIGボックス」。この中に紙パックをセットする本体から完全に取り外したところ紙パックは三菱純正の「MP-9」が推奨される
運転を開始する場合は、持ち手部分のボタン「標準 強/ソフト」または「節電 強/ソフト」を押す。自動モードはない

 まずは1回使ってみよう。コンセントを差し、ホースの持ち手部分にある電源ボタンを押してスタートする。吸い込み能力は非常にパワフルで、ゴミをグイグイと吸い込んでいく。運転のパワーは「強」「ソフト」の2つだが、ソフトでも十分にゴミが取れる。取り回しも特に問題はなく、使いやすい。ちなみに吸込仕事率は最高で530W。

 またヘッドノズルは、前方向のストロークに追従する自走式で、モーターで回転するパワーブラシも付いている。さらに「節電モード」で運転すれば、アイドリング中に自動で運転を、消費電力100W程度に抑えて運転する。このあたりの機能は、さすがは高級モデルといったところだ。



強運転で床の小麦粉を吸い取っているところ。壁際もワンストロークで確実に取れる座布団をソフトモードで掃除しているところ。こちらにも小麦粉を落とし、さらに全体的に粉をまぶしたが、それでもワンストロークでキレイに掃除できる

「節電モード」では、掃除をしていない時に、自動で最弱運転に切り替えるというもの「節電モード」のセンサーは持ち手部分に内蔵されているため、ホースを短くして使っている際にも動いてくれる
雷神のヘッドノズル。舞い上がったホコリもキャッチするというノズルを裏から見たところ。自走式のパワーブラシだブラシは取り外せる。糸や毛がからまった時は、引きぬくだけで絡みが取れる「毛がらみ除去」仕様だ

 ちなみに運転音は、スペックでは約56dB~59dBと、一般的なサイクロン式掃除機・紙パック式掃除機よりも低め。実際に使ってもうるさく感じられなかったが、パワーブラシが床に響くなど、運転音はそれなりにする。真夜中の使用は控えた方がよさそうだ。

 掃除が終わった後は、ダストカップを取り外してゴミを捨てる……じゃなくて、紙パック式なのでそのまま放置して問題なし。これまでサイクロン式に慣れていたので、「使用後はゴミを捨てる」とつい思い込んでしまった。改めて考えると、この使用後に何もしなくていいというのは、かなりラクだ。


大容量で交換頻度を低減。紙パックに2.4L分のゴミが入る「クリーンBIGボックス」

 以上が雷神の基本的な一連の操作方法だが、ここからは冒頭にて触れた、雷神の特徴である“吸引力の長持ち”、“紙パックのランニングコストの抑制”、“臭いの抑制”については、改めて紹介させていただく。

 雷神の第一の特徴は、非常に大きな集塵ボックスだ。集塵容量が従来よりも約2.4倍広い、大型の「クリーンBIGボックス」とすることで、約2.4Lのゴミが紙パックの中に貯められるようになり、多くのゴミが吸い込める。そのため、紙パックの交換回数が減らせるという。

写真右が、我が家に昔からあった紙パック式掃除機の、紙パックをセットする部分。クリーンBIGボックスは、その倍ほどの体積があるように感じられた

 最初は約2.4Lと聞いても、従来とどれだけ違うのかピンと来なかった。しかし、以前から持っていた、約10年前の容量1Lクラスの紙パック式掃除機と比べると、一目瞭然。古い紙パック式掃除機に設けられた、紙パックスペースの何と狭いこと! クリーンBIGボックスは、その約2倍ほどの大きさがある。

 実際に1~2カ月ほど使っているが、紙パックはまだまだ吸い込める余裕があるように感じられた。三菱電機のホームページでは、従来の紙パック式掃除機は、同社の紙パック「MP-9」を年間にを7枚使用する一方で、雷神では1年間に3枚しか使わないという試算を出している。これなら交換の手間も省けるし、紙パックを最後まで有効することで、ランニングコストも低減できそうだ。

 ちなみに、紙パック「MP-9」の実売価格は、5枚入りで1,000円程度。1年に3枚だけしか使わないことを考えれば、それほど高い買い物にはならないだろう。


ゴミを溜めても、吸引力の低下もニオイの問題もなし。

 ゴミが紙パックに大量に溜められるとはいっても、一般的に紙パック掃除機では、ゴミが溜まることで困ることがいろいろある。その1つが「吸引力の低下」。紙パックの風路がゴミで詰まることで、ゴミを吸い込むパワーが落ちてしまう恐れがある。

雷神では、ゴミが溜まってきても風を通す「パワフルワイド風路」を備える。そのため、ゴミが溜まっても、吸引力が落ちない仕様となっている(写真はクリーンBIGボックスを裏側から見たところ)

 しかし我が家では、紙パックにすでに多くのゴミが溜まっているにも関わらず、吸引力が下がったという印象はほとんどなかった。というか、そんな危惧を抱いたことすらない。使用から1~2カ月経った今でも、ギュンギュンゴミを吸い込んでくれる。

 実はこの雷神では、吸引力を維持するための工夫も用意されている。それが、クリーンBIGボックスの内部または側面に、風を通すための風路を確保したこと。紙パックの容量が一杯になっても、吸引力を確保できるという。三菱電機ではこれを「パワフルワイド風路」としているが、我が家の雷神がゴミが溜まっても吸い込めているのは、きっとこの構造のおかげだろう。ちなみに、上に載せた4つの動画は、すべて紙パックにゴミを溜め込んだ状態で使っている。

 ゴミが溜まることによる困りごとの2つ目が「臭い」。一般的な紙パック式掃除機では、紙パックに溜まったゴミからイヤなニオイが発生し、それが排気から出てしまう、なんてこともある。

 雷神ではニオイ対策として、アンモニアのニオイを吸着し、脱臭する「光触媒フィルター」を、本体内に搭載している。さらに、フィルターの効果が持続するよう、通電中に青色LEDを点灯し、フィルターが吸着したニオイ分子を分解するという。その効果だろうか、使っていて悪臭を感じることはほとんどなかった。これは脱臭効果のある紙パックを使っていることも影響しているかもしれない。

クリーンBIGボックスを取り外した本体内部。写真中央に見える黒いフィルターが「光触媒フィルター」だフィルターを取り外したところ。左は排気を通すプレフィルターで、右がパック内のニオイを取る光触媒フィルターフィルターを取り外した後の本体内部。通電中は青ランプが点灯し、光触媒フィルターの脱臭機能を再生する

 ただ、使い続けていくうちに、どことなく“紙パック掃除機っぽいニオイ”を感じることもあった。「ニオイを完全になくす」というよりかは「抑えている」というのが、使ってみて実感したところだった。

 ちなみに排気は、床のチリやホコリの舞い上がりを抑えるために、本体後部から斜め上方向に放たれる構造になっている。

光脱臭中は、本体の「光脱臭」ランプが緑色に点灯する。通電待機中の消費電力は0.8Wだ排気は本体後方から、主に上方に向けて送られる


紙パック式掃除機の根本的問題を克服。紙パック派はもちろん、サイクロン派もゼヒ!

 しばらく使っているが、全体的な感想としては、何不自由なく、便利に使えている。ゴミは紙パックに結構溜まっているが、吸引力の低下も、悪臭もない。パックにはまだ空きスペースがある。紙パックはワンタッチで捨てられると説明書にはあったが、捨てる日はまだまだ先になりそうだ。

 全体的には非常に満足しており、あまりマイナスに感じられた部分はない。が、あえて指摘すると、サイクロン式の高級モデルにあるような、床面の状態によって自動で運転パワーを変えるモードがあれば、なお便利だった。例えばカーペットを掃除する場合、間違えて強運転のままにしてしまって、カーペットが浮き上がってしまうことがあった。

 また、これは個人的な要望かもしれないが、ふとんブラシがほしかった。というのも、私はふとんの手入れは、干すよりも掃除機掛けするのが習慣。他社のサイクロン式掃除機の高級機種では、ふとんブラシは標準装備のものが多いため、本製品でも当然付いてくるものだと思い込んでいたが、付属のアタッチメントは、高い所が掃除できる「2WAYロングノズル」だけ。説明書を読み返すと、別売りのオプション扱いだった。別途購入すれば良いだけではあるのだが、付属品には“高級感”があまり感じられなかったのは残念だった。

同梱されるアタッチメントの「2WAYロングノズル」。高いところの掃除に便利コードリールは足で踏めるデザインになっている

 細かいことを言ったが、この三菱電機の「雷神」は、「吸引力が落ちる」「紙パック代がかかる」「ニオイがする」などの紙パック式の弱点に真っ向から立ち向かい、そして克服した、画期的な紙パック式掃除機だ。“紙パック派”の人はもちろんオススメだが、前述のような弱点を嫌って“サイクロン派”に転向した人にも、一度使っていただきたい。






2012年2月9日 00:00