大河原克行の「白物家電 業界展望」

ビックカメラに聞く、猛暑で売れている家電とは

~エアコンの売り上げは“記録的”、扇風機や美容家電もヒット
by 大河原 克行

エコポイントよりも効果大、猛暑でエアコンが大人気

ビックカメラ新宿西口店のエアコン売り場。今年は“予想を上回る好調ぶり”という

 7月の猛暑によって、「夏物」と呼ばれる家電製品の売れ行きが記録的な販売台数となっている。

 GfKマーケティングサービス ジャパンによると、エアコンの販売台数は、猛暑がピークを迎えた7月第4週には、エアコンが「記録的」といえる結果。前週の約2.3倍、前年同週の約2.5倍、2008年の販売ピーク週(7月第2週)と比較しても約1.5倍に到達したという。

 また、パナソニックの河井英明役員は、「7月のエアコン販売は、これまでにない記録的にものになっている」とその好調ぶりを指摘。パナソニックのアプライアンス・ウェルネスマーケティング本部の中島幸男本部長は、「第1週目に過去最高の34万台を出荷したが、第3週目にはそれを上回る47万台を出荷した。需要に対して、ぎりぎりで供給を間に合わせている状況」と、1カ月の間に、過去最高となる週間出荷台数を2度も更新したことを明かす。

 ビックカメラでも異口同音に好調ぶりを示す。「エアコンは前年同月比2.5倍の販売実績。予想を上回る好調ぶり」とし、「単に冷えればいいという低価格モデルが売れているという状況ではなく、エコポイントを活用して付加価値モデルの購入も相次いでいる。フィルター掃除機能や、センサーによって人を感知して冷房するといった付加価値機能、さらには省エネ性能などの観点から、買い換えのチャンスと見て購入する人も多い。どんな機種が適しているのか、事前にネットなどで調べてから来店する人も少なくない」という。

“今年は冷房が効かない”と、エアコンの買い替えを検討する人が多いという

 また別の業界関係者からは、「昨年に比べると極端な猛暑が続いていることから、今年は冷房が効かないとして、エアコンが壊れたのではないかとして、買い換えを検討する人もいる」という声が出ている。

 エアコンは、エコポイント制度がきっかけになって販売が増加しているというよりも、やはり猛暑の影響によるものが大きい。「エコポイント制度を狙ってエアコンを購入している人は、昨年度の段階で購入をしている。猛暑の影響でエアコンを購入したいと思った人が、エコポイントを利用して付加価値モデルを購入している」という傾向がみられている。


売り場は土日に異常な混雑、窓用エアコンをそのまま持ち帰る客も

 特に、土日の混雑ぶりは異常ともいえる状況になっている。

 ビックカメラ新宿西口店では、エアコン売り場に設置しているカウンターから椅子を撤去し、立ったままでエアコンの設置工事日の打ち合わせやローンの申し込みができるようにし、少ないスペースで多くの接客対応ができるように工夫している。それでも土日は満杯になる状況だという。

 「中には、窓用エアコンであれば自分で設置できるとして、そのまま持ち帰るお客様もいる。これまでは窓用エアコンは、室外機が置けない、あるいは賃貸住宅であるため工事ができないといったケースでの購入が中心だったが、土日に購入した場合には、どうしても休日である翌週の土日に工事をしてもらいたいということになるため、暑さに我慢できずに、すぐに自分で付けられるという利点から購入する例がある」(ビックカメラ)

 窓用エアコンは約30kgもの重量があるが、それでも持ち帰る男性客が目立つという。窓用エアコンも前年同月比で2倍の売れ行きになっているという好調ぶりだ。

接客カウンターからは、椅子を撤去し、効率的に来客に対応する工夫を施した室外機が置けない部屋でも設置できる「窓用エアコン」も人気。中にはそのまま持ち帰る男性客も居るという


扇風機も好調。エアマルチプライアーやグリーンファンなど付加価値製品も人気

ビックカメラ新宿西口店の扇風機売り場

 また、エアコンのみならず、扇風機の販売も好調だという。

 ビックカメラによると7月の販売台数は、前年同月比3倍と、エアコンを上回る伸び率を示しているという。

 「サーキュレーターという製品に対する認知度が高まっていることもあり、扇風機を使うことで、より効率的に室内を冷やそうという考え方が広がっている。また、オフィスにおいては、温度を一定に保っているため、自分の席を涼しくしたいという用途でも扇風機を購入していく例がある」(ビックカメラ)

 扇風機も、エアコン同様、低価格製品だけでなく、付加価値型製品の売れ行きがいいという。

 「これまでの扇風機はオフタイマー機能を搭載していたが、今年の製品では、オンタイマー機能が搭載されるなど、さらに使いやすいものも登場している。また、扇風機の羽のカバーに触れると自動的に止まるといった製品も、展示在庫まで売れてしまうほどの人気ぶり。さらにダイソンの羽がない扇風機(エアマルチプライアー)や、バルミューダデザインの『GreenFan(グリーンファン)』といった、付加価値製品、デサイン性の高い製品の売れ行きも好調となっている」

 さらに、クリップなどを持った机や壁などに据えつけることができる製品も人気を博している。

ダイソンの羽がない扇風機「エアマルチプライアー」など、付加価値製品が人気となっているサーキュレーターの販売も好調だクリップがついた扇風機は、オフィス用途などで人気を博している


ドライヤーやスチーマーなど、意外な売れ行きを見せる美容家電

美肌効果を訴えた美理容製品は、夏の隠れたヒット商品となっている

 一方で、猛暑の影響で意外な売れ行きを見せている製品もある。イオンドライヤーやフェイススチーマーなどがその筆頭だといえよう。

 「太陽の日差しで髪が傷んだり、室内のエアコンによって肌が乾燥したりといったことで、髪や肌をケアする製品が、女性を中心に人気を博している。夏に入ってから売れ行きに拍車がかかっている」と、ビックカメラでは説明する。

 GfKマーケティングサービス ジャパンによると、7月のマイナスイオンドライヤーの販売台数は、前年同月比10.7%増と2桁の成長をみせているという。

 ビックカメラ新宿西口店では、「夏に差がでる美肌道」などのPOPを掲げ、夏場の肌や髪のケアに最適な製品群を訴求。エスカレータ前という目立つ場所にこれらの製品を展示している。

 さらに、女性用シェーバーや男性用の脱毛シェーバーなども売れ行きが上昇しており、これも隠れた夏のヒット商品となっているという。同じくジーエフケーマーケティングサービス ジャパンの調べによると、フェースシェーバーや脱毛器を含む女性用シェーバーは、販売台数ベースで前年同月比で17.0%増となっているほか、販売金額ベースでは61%増という大幅な伸びをみせており、高機能モデルの販売が好調であることを示している。

 猛暑の影響は、エアコンや扇風機といった製品の売れ行き上昇だけに留まらず、隠れた夏のヒット商品を生み出しているともいえそうだ。

傷んだ髪をケアするイオンドライヤーも、売れ行きが拡大している男性用の脱毛シェーバーなども売れているという




2010年8月9日 00:00