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大河原克行の「白物家電 業界展望」
日立の省エネ家電の基幹工場「栃木事業所」を訪ねる

Reported by 大河原 克行

日立アプライアンス 栃木事業所 正門
 日立アプライアンスは、エアコンおよび冷蔵庫の生産拠点である栃木事業所の様子を公開した。

 栃木事業所は、1944年1月に、同社家電製品の基幹工場である茨城県の多賀工場の栃木工場部として設置。1945年1月に多賀工場から分離独立し、1946年からは亀戸工場から移管した冷蔵庫の生産を開始。1952年には国産初のルームエアコンの生産を開始した。2002年には、同事業所におけるエアコンの累計生産台数が2千万台を達成。2003年には、冷蔵庫の累計生産台数が3千万台に達している。

 敷地面積は、96万6千平方メートル(約30万坪)。東京ドーム約20個分の広さを誇る。このうち建屋面積は30万平方メートルで、戦中に設立した工場ということもあり、平屋建ての建物が多いのが特徴だ。従業員数は関連会社を含めて約1,800人。

 「冷やしたり、暖めたりといったものが、栃木事業所の生産品の特色」(日立アプライアンス家電事業部栃木家電本部長・松田美智也氏)というように、同事業所では日立ブランドの冷蔵庫、エアコン、ヒートポンプ給湯器といった製品に加え、これらの製品に使用される圧縮機も生産している。

 冷蔵庫の生産台数は、一日1,750台、月産4万台弱の体制。ルームエアコンは、室内機で日産1,500台、室外機で日産2,400台、ヒートポンプ給湯器で月産1250台の体制となっている。


東武日光線の新大平下駅から歩いてすぐの場所にある 同社エアコンのキャラクターである「白くまくん」が出迎える

栃木事業所の全景。東京ドーム約20個分の大きさ 日立アプライアンス 家電事業部 栃木家電本部長 松田美智也氏

省エネで先行する日立のエアコン

日立のエアコンは省エネ能力の高さを特徴とする。写真は製品発表会での最新モデルのXシリーズ
 日立のエアコンの最大の特徴は、省エネだ。1995年度には2,969kWhだった消費電力を、2008年度には1,293kWhと、約55%の省エネを達成している(冷房能力は4.0kWで、その年度に最も消費電力に優れた代表機種における数値)。この13年の間に、優れた省エネルギー性・省資源性を持った民生機器を表彰する、財団法人省エネルギーセンターの「省エネ大賞」を、実に8度も受賞している。

 省エネ技術への取り組みは先進的で、1975年にスリットフィンの採用により、熱交換性能を一気に40%も向上させたのをはじめ、92年にはスクロール圧縮機を世界で初めてパッケージエアコンに導入。97年には、世界初の「PAM制御」採用によって、ハイパワーと省エネを両立することに成功した。最新機種では、室内機および室外機の熱交換機の高効率化を実現する一方で、2010年省エネ法の指標となるAPF(通年エネルギー消費効率)を大幅に向上させたスクロール圧縮機を採用。Sシリーズは、コンパクト室内機において省エネナンバーワン、Xシリーズでは、寸法フリーの室内機では省エネナンバーワンとなっている。

 「Xシリーズを例に取ると、圧縮効率向上と高効率インバータの採用によって圧縮機/インバータにおけるAPFを4.5%向上した。また、室内機では熱交換器との高効率化と送風系の改善で3.0%、室外機では熱交換器のワイド化で2.0%、さらにその他の部分でも2.0%改善している。合計で、APFは11.5%向上したことになる」と日立アプライアンス空調事業部栃木空調本部空調システム設計部・大塚厚担当部長は語る。

 特に熱交換機では、室内機の補助熱交換器の形状および配置の最適化によって、熱交換器面積を18%拡大。さらに、室外機の熱交換器でも、機械室を小型化することで熱交換器面積を9%拡大。熱交換効率ともに省エネ効率の向上に成功した。


省エネにも威力を発揮する熱交換器。ワイド化を図っている スクロール圧縮機のカットモデル 日立アプライアンス空調事業部栃木空調本部空調システム設計部・大塚厚担当部長

まんなか冷凍が効率化を生む ――冷蔵庫

冷蔵庫の最新モデル「R-X6000」ソフトブラウン(左)とアップルウッド(写真は製品発表会のもの)
 一方、冷蔵庫も省エネでは高い評価を得ている。2年連続で省エネ大賞を受賞し、最新機種の「R-X6000」では、前年度製品の年間消費電力610kWhから、490kWhへと約20%の省エネを実現した。CO2換算では、約49kgの削減したことになる。それでいて、容量は前年の565Lから、601Lへと拡張している。

 この省エネ化には、同社ならではのいくつもの技術が採用されている。

 1つは、業界初のフレックス真空断熱材の採用だ。他社の真空断熱材は、「熱融着コア」と呼ばれる方式を採用し、アルミ箔を加熱・圧縮して成形している。これに対して、日立では、「二重パック構造」と呼ばれる仕組みを採用。アルミ箔を省きラミネートフィルムを使用することで、接着部での熱の回り込みを防止している。さらに、グラスウールを固定しない自由な成形も可能となり、筐体内部の形状に合わせて真空断熱材の成形が可能になった。成形の自由度が高まり、天井部にも密着した形で真空断熱材が取り付けられるため、従来機種に比べて断熱性能は25%向上した。

 また、バルブ構造の最適化や軸受部の精度向上、モーター制御最適化のほか、ピストン連結部に新機構を採用することにより、高出力化と高効率化、および約10%のコンパクト化を実現したコンプレッサーを開発。これらを採用することで、省エネ化を図った。

 さらに「門形構造」と呼ばれる、天井と側面の鋼板を一体化した構造を採用。強度を向上させたことで、壁厚を適正化した。これも、省エネ構造の実現に直結しているという。

 また、日立の冷蔵庫の特徴でもある、本体中央部に冷凍室を配置する「まんなか冷凍」も、省エネ効果を発揮している。

 「本体下部に冷凍庫を置くと、その背後に設置されるコンプレッサーと冷凍庫庫内の温度差は68℃に、また真ん中の野菜室庫内とその背後にある冷却器との温度差は43℃になる。これに対して、下部に配置した野菜室庫内とコンプレッサーのの温度差は47℃、真ん中に置いた冷凍室庫内と冷却器の温度差は22℃となる。温度差が少ない分、断熱壁が薄型化できる。さらに、冷気送風ダクト仕切りの凍結防止ヒーターを削減したり、冷却器と冷凍室の一体化により、断熱材を大幅に削減できるという効果もある。まんなか冷凍は、省スペース、大容量化とともに、省エネに適した構造といえる」(日立アプライアンス家電事業部栃木家電本部冷蔵庫設計部・池田孝史担当部長)


真空断熱材は、アルミ箔を省くことで、接着部の熱回り込みを防止し、断熱効果を高めている グラスウールを固定しない技術を採用しているため、筐体内部の形状に合わせて自由な成形が可能となる
R-X6000のカットモデル

冷蔵庫に搭載される新開発コンプレッサーのカットモデル 日立アプライアンス 家電事業部 栃木家電本部 冷蔵庫設計部 池田孝史担当部長

 このように、冷蔵庫、エアコンともに、日立ならではの技術が随所に採用されており、それが省エネの実現につながっている。そして、これら製品を生産しているのが栃木事業所ということになる。

 では、栃木事業所の様子を写真で紹介しよう。


エアコンの生産工程

エアコンの生産を行う第5工場。南北100メートル、東西312メートルの建屋となっている エアコン用ヒートポンプユニットの組立工程 5Cと呼ばれる生産ライン。こちらでは室外機の生産を行っている

5Cラインの商用試験室。試験用室内機に接続して実際の使用条件で全量テストする 5Bライン。ハウジング室内機のセル生産を行っている

室内機の部品を組立てるライン
掃除ユニットの組立ライン。ステンレスフィルター自動お掃除ユニットを取り付ける これらの行程から、さらに常備部品と呼ばれる様々な部品を取り付けて、完成する(写真はXシリーズ)

エコキュートの生産ラインも第5工場で行なわれる。ヒートポンプユニットの生産ラインに隣接する
完成したエコキュート

冷蔵庫の生産工程

冷蔵庫は、扉部を組み立てる第4工場と、本体・最終組立・検査を行なう第6工場で生産される。今回公開されたのは第6工場 製缶工程では、一枚の板の状態から始まる 日立の冷蔵庫では、天板と側面の鋼板を一体化した門形構造を採用。一枚の鉄板の左右が折り曲げられる

内箱挿入工程、外箱組立工程を経た冷蔵庫のカットモデル。ここから箱発泡工程に入る 内箱と外箱の間に2種類の発泡原液を注入する 発泡原液を注入によって出来上がったウレタンホーム(右)。高い断熱効果と強度を実現する

R-X6000に搭載される、食品の鮮度を維持する「真空チルドルーム」の組立ライン 約50個の部品を一人で組み立てる 総組立ライン。ダクトやダンパー・扉も装着される。このほか、高機能モデルを組み立てる「一人セル組立工程」もある。約2割がセル方式によるもの

内装品取り付け工程。一台ごとに違うモデルや異なるカラーが混在する混流ラインとなっていることがわかる 組立が終わると予備試験、商用試験検査、最終検収検査を経て出荷となる こうして冷蔵庫ができあがる(写真はR-X6000)




URL
  日立アプライアンス株式会社
  http://www.hitachi-ap.co.jp/
  エアコン 製品ページ
  http://kadenfan.hitachi.co.jp/ra/
  冷蔵庫 製品ページ
  http://kadenfan.hitachi.co.jp/rei/

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2008/04/07 00:20

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