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大河原克行の「白物家電 業界展望」
松下電器、触媒反応を用いた新リサイクル技術を開発

~公開された試作機を、兵庫県加東市で見る
Reported by 大河原 克行

松下エコテクノロジーセンターの堤常固社長
 松下電器産業および松下エコテクノロジーセンターは、触媒反応を用いて有機物を無害ガス化し、無機物を取り出す技術の開発に成功した。

 約3,000万円を投じて完成させた試作機を、兵庫県加東市の松下エコテクノロジーセンター(METEC、メテック)に導入。今後実用化に向けて改良を加える。

 松下エコテクノロジーセンターの堤常固社長は、「家電リサイクルにおけるゼロエミッションを実現する切り札になる技術」と自信を見せる。


残り2割の廃棄物に着目

 まず、今回のリサイクル技術を開発した背景から追ってみよう。

 現在、家電製品は、テレビ、洗濯機、エアコン、冷蔵庫の4品目が家電リサイクル法による指定品目となっており、メーカーには、廃棄されるこれら製品の回収、リサイクル義務がある。

 松下エコテクノロジーセンターでは、この4品目を対象にリサイクルを行なっており、テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機をあわせて年間100万台を処理することができる。

 家電リサイクル工場における廃棄物は、約8割が資源として回収できるものの、残りの約2割は廃棄物として焼却消却処理、あるいは埋め立て処分されているのが現状だ。しかも、この廃棄物の大半は混合プラスチックダストで多種プラスチックと金属片の混合物となっている。


松下エコテクノロジーセンター開発部・富田和之部長
 「混合プラスチックダストは、分別できずに残ったものであり、さらにそこから金属片などを回収することは、極めて困難であった。また、焼却施設に運搬し、処理しても、それに関わる物流、焼却などの環境負荷が発生すること、安心できる焼却処理を行なうには、高性能の処理施設が必要となるなど、課題が多かった」と、松下エコテクノロジーセンター開発部・富田和之部長は語る。

 そこで、松下電器産業、松下エコテクノロジーセンターは、技術調査や実証実験の結果、触媒反応による有機物分解方式に解決の糸口を見つけ、このほど技術開発に成功したのだ。

 「油化、乾留、触媒など、様々な方法を検討した結果、焼却をせずに、有価金属を回収し、しかも廃棄物の減容処理が可能という観点からこの方法を選択した」と、富田部長は語る。

 技術開発には、草津電機が持つ酸化チタンを熱触媒に用いた非燃焼型樹脂処理技術を活用。これに、松下電器と松下エコテクノロジーセンターが持つ家電リサイクルにおける高品位材料回収技術を融合させた。


触媒反応による有機物分解リサイクルシステム
塩化ビニルで被覆された配線やコイルなど 触媒反応による有機物分解により内部の銅線だけを回収できる

樹脂被膜金属を入れたボールを機械に投入するところ 樹脂被膜金属を入れたボール 投入される混合プラスチック

酸化チタンの酸化力を利用

 松下電器が開発したのは、熱触媒として酸化チタンを活用。混合プラスチックなどの有機物を無害なガスに酸化し、分解させる工法だ。

 仕組みはこうだ。

 加熱した酸化チタンの酸化力を利用して、樹脂を完全分解し、無害ガス化する。一方、独自の攪拌、搬送システムによって、効率よく樹脂被覆や混合プラスチックを触媒に接触させガス化。残留物として有価金属を回収できるようになる。一方で、塩化ビニル処理で発生する塩化水素は石灰による中和処理も行なうというものだ。

 また、プラスチックを連続投入することで、自らが反応熱を出し、外部加熱なしで分解が進むことになるほか、反応温度である500℃に維持するため、冷却水は温水として別途活用が可能になる。

 「焼却方式では、有機物を熱分解し、発生ガスを燃焼させることから、燃焼時にはどうしても大量の燃料が必要になる。また、発生するダイオキシンを抑制するため、800℃以上の高温炉が必要になる。一方、油化方式では有機物を低温熱分解し、乾留方式では、有機物を低酸素熱分解し、それぞれ熱分解ガスを油として回収するが、ダイオキシンの抑制が難しく、高品位な油の回収が困難という問題が発生していた。熱触媒方式では、500℃の熱触媒でCO2、H2Oレベルまで完全に分解ができるというメリットがある。さらに、自己反応熱で処理が進むため、外部からの加熱が不要で、開発設備には、補助燃料がいらない。そのためCO2削減効果もあるといえる。トータルでのCO2排出量は月1.1トンに留まり、従来の小型焼却炉による処理では月4トンのCO2排出量であったのに比べると、大幅な排出量削減ができる」という。

 さらに、安心、安全を実現するために、インラインモニタリング機構として、HCL(塩化水素)測定装置、CO(一酸化炭素)測定装置をそれぞれ組み込み、異常発生時には警報を発し、設備を即時に非常停止するようにした。

 「通常の運転では、法定基準の10分の1以下で管理している」という。

 さらに、最終排気チェック機構も用意。装置の最終排気口からのガス成分をガス分析装置で監視。ここでは、COおよびCO2に加えて、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)といった大気汚染の原因となる物質の監視も行なっている。


混合プラスチックダストの全廃を目指す

 現在、この技術は、テレビのブラウン管消磁コイルなどの塩化ビニルテープを巻いた配線から、内部の銅線を回収するために活用している。また、混合プラスチックダストも同時に投入し、無害ガス化の処理を行なっている。

 松下電器では、この技術を活用することで、将来的には、松下エコテクノロジーセンターにおける混合プラスチックダストの全廃を目指すという。

 また、松下グループをはじめ、他社のリサイクル関連事業場や、生産事業場への展開も検討を進めていくという。

 松下エコテクノロジーセンターは、マテリアルリサイクルへのこだわりを追求する拠点とされており、廃棄資源から、新たな技術や新たな工法によって、新たな素材を作り出す「資源創出の場」と位置づけている。

 また、研究開発部門を同センター内に置き、リサイクル技術の進化にも積極的に取り組んでいる点も見逃せない。

 今回の技術も、そうした取り組みのなかから生まれたものだ。

 松下グループにおける環境分野を担う先端企業の取り組みの1つとして、この技術の実用化が注目されるところだ。





URL
  松下電器産業株式会社
  http://www.panasonic.co.jp/
  ニュースリリース
  http://www.panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn080226-5/jn080226-5.html?ref=news
  松下エコテクノロジーセンター
  http://panasonic.co.jp/eco/metec/

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2008/02/27 00:09

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