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大河原克行の「白物家電 業界展望」
今後のキーワードは「センシング」

~松下電器の白物家電戦略を聞く
Reported by 大河原 克行

ナショナルアプライアンスマーケティング本部 本部長 高見和徳氏
 ここにきて松下電器の新製品投入が相次いでいる。付加価値製品市場をリードしてきた同社が、さらにその勢いを加速しているといえよう。だが、その一方で、派手な新製品投入とは一線を画す市場において、着実なシェア拡大策に取り組んでいるのも、今年の松下電器の事業戦略では見逃せない部分だ。
 
 松下電器のナショナル アプライアンスマーケティング本部・高見和徳本部長に同社の家電戦略について聞いた。

――2007年度上期の成果はどうですか。

高見氏: 第1四半期および第2四半期は、順調だといえます。いや、出来すぎなぐらいです。業界全体の成長に比べて、ナショナル製品全体では、それをさらに上回る実績となっていますし、とくに、エアコンは、トップシェアを維持し、さらに、昨年に比べてもシェアを上昇させています。


売り上げ好調なCS-Xシリーズ
――エアコンが好調な理由はなんですか。

高見氏: 当社のエアコンの強みの1つに、お掃除機能があります。この機能は、当社が先行して投入し、市場を開拓してきた。そして、毎年、機能を進化させてきています。また、お掃除機能は、当社の掃除機の技術を活用して実用化したものですので、確実に掻き取って、吸い取るという掃除ができる。先行した利点は、この領域において、多くの知財を抑えている点にあります。競合他社は、これを避けてお掃除機能を実用化するわけですから、どうしても無理が出てくる。そこにも、当社のお掃除機能の優位性が発揮できる。

 そして、今年の製品では、中級ゾーンまでお掃除機能を広げました。これがシェア向上に貢献しています。もう1つ、今年の商戦で徹底したことがあります。それは、事前に地域販売店はもちろん、量販店の店員の方々に松下電器のエアコンの強みを、理解していただくための取り組みを強化したことです。今年1月から4月まで、全国、1,300人の店員を対象に、エアコンの説明会を実施しました。昨年は、130人程度でしたから、10倍の規模に拡大しています。売っていただく方に、商品のことを知ってもらうことは、基本であり、もっとも大切なことです。


強みのお掃除機能。左から従来機、新機種のお掃除ロボット
 しかも、これを一斉にやるのではなく、少人数ずつ、あるいは一法人ずつという規模にし、活発な質疑応答もできるようにし、理解を深めてもらえるようにしました。競合他社が今年はすべてお掃除機能を搭載することがわかっていましたから、改めて、この強みを強調しました。また、今年の新製品では、「気流」も大きなポイントですから、これも、実際に体感ルームを用意して、どこまできっちり冷やすことができるのか、また、下から吹き出したときにはどうなのかといったことを体感していただいた。実際、店員の方からは、ナショナルのエアコンは、自信を持って売って大丈夫だという声をいただきましたよ。これがシェア向上にも大きく貢献しています。


製品の見直しに力を入れてきた

――洗濯機、冷蔵庫といった基幹製品の新製品投入も相次ぎましたね。この手応えはどうですか。

高見氏: 冷蔵庫に関しては、これまで松下電器では、大容量化を促進し、扉の位置を低くして使いやすくするということに先進的に取り組んできたが、新製品では、「お客様が一番不満を持っているものはなにか」という点から、もう一度、見直した製品になっています。

 では、なにが求められている機能か。食品を入れるから、庫内は当然、清潔でなくてはならない。ここに改めてこだわった。トレイの汚れなどはお客様が掃除できる。しかし、庫内の冷気はお客様が気になってもやりようがない。新製品では強力な除菌効果のある“光Ag除菌”で、冷気を99.9%除菌し、また“スーパーアレルバスター”でカビやウイルスなどの活動も抑制できる。これからは、クリーン冷蔵庫という考え方で展開していきたいと考えています。


新コンパクトBiGシリーズ
衛生面を強化する機能を多数搭載する
「光Ag除菌」ユニット

ダンシング洗浄を採用した新しい「ななめドラム」。左からNA-VR1200L、NA-VR2200L
 一方、洗濯機は洗い方をまったく変え、「ダンシング洗浄」という新たな洗い方を採用しました。まさにダンスをしているような洗い方です。従来のななめドラム方式では、ドラムを回転させて、ドラムの上から下に、洗濯物を落とす、いわゆる「たたき洗い」方式による洗浄でした。ただ、この方式では、洗浄液の浸透力や、衣類の奥についた汚れを落とすという点では、もみ洗い方式に比べて、やや不利と言わざるを得なかった。今回のダンシング洗浄では、たたき洗い方式に加えて、左右に揺らすことで波を起こし、洗浄するもみ洗い方式の利点を取り入れることで、こうした問題点を解決した。さらに、衣類の絡みを少なくし、シワを最小限に抑えることもできる。これは、見てわかりやすい機能であり、お客様にも、その良さが理解されやすいものだといえます。

 ただ、洗濯乾燥機においては、今年は縦型にも力を注いでいます。


手薄だった市場に力を入れる

泡洗浄機能を強化した縦型洗濯乾燥機
――確かに最近では、ななめドラムの印象は強くても、縦型というイメージはないですね。

高見氏: 洗濯機市場全体から見ると、ななめドラムの構成比は15%程度。縦型が市場の85%を占めているのです。市場全体の占有率を考えると、縦型でどれぐらいシェアを取るかが重要なんです。

 ご指摘のように、ここ数年、ななめドラムに関する技術開発を優先してきましたから、この2~3年を振り返ると、どうしても縦型の技術が陳腐化する傾向にあった。私は、昨年5月の社内会議で、「今年4月以降は、縦型洗濯乾燥機を徹底してやる」という宣言をしました。その時は、かなりきついことをいいましたよ。「洗濯機の事業をドラムだけに頼るな」と。縦型で85%の市場構成比があるのに、そこでの商品開発を置き去りにするのはとんでもない。もし開発しなくても、マーケティング本部としては、縦型を徹底して売る。モノがなくてもやるというんですから、本来ならばありえない話です(笑)。

 それから1年。事業部は、本当にがんばってくれた。縦型洗濯乾燥機において、洗い方とデザインを一新してデビューさせることができた。内心、縦型洗濯乾燥機の技術革新はもう限度に達しているだろうと思っていました(笑)。

 この製品は、とにかく合格点ですね。また、女性をリーダーにして、店頭展示も変えた。これも、化粧品売り場のようなお洒落な売り場に変えることができた。この製品によって、量販ルートで1割強だった縦型洗濯乾燥機のシェアを、2割にまで引き上げたい。ナショナルの実力があれば、2割のシェアは行ける。これは、ここ数年の課題でした。ドラム式では、4割以上のシェアがありますから、全体として1/4以上のシェアが取れる。こうした、これまで手薄だった市場にも今年は力を注ぎます。

――手薄だった市場としては、ほかにはどんなものがありますか。

高見氏: 9月からは、圧力鍋にも力を注ぎます。これまで、年間3,000台程度の出荷実績しかなかったのですが、これを2カ月で3万台売ります。この計画だけを聞いて、事業部はひっくり返りましたが、もともとガスの圧力鍋市場は年間130万台あるんです。そこの1割をとっても13万台です。圧力鍋には、健康、省エネ、食育といった点でのメリットが知られている。さらに、電気ならば安全だという打ち出し方もできる。これまで圧力鍋に関しては、事業としては、ほとんど手つかずだった。実は、試験的な販売も行ないましたが、電気圧力鍋による調理の良さを訴えれば、売れ行きは一気に増加する。チャンスはあると思います。


電気圧力なべ(マイコンタイプ) SR-P32A
 ジャーポットも同じです。年間400万台の市場がありながらも、当社のシェアは1割強。これを9月から量販店を中心に展開し、2割のシェアを目指したい。ナショナルのなかには、総需要が200万台以上もありながらも、占有率が低い製品分野がいくつかあります。こうした製品群は、やり方によっては、2割までシェアは上がる。どの製品を、どういうタイミングで立ち上げるのか、といった点を組み立てていく必要がある。

 当然、新市場開拓にも取り組んでいきます。食洗機は引き続き市場拡大に取り組みますし、オール電化も、重要な新規開拓市場です。オール電化は、事業を2倍に拡大する。とくに、地域販売店ルートにおける販売比率を早期に15%にまで引き上げたい。この目標は、もともと2009年をターゲットにしていたが、これを前倒して、今年から来年ぐらいで達成したい。地域販売店での販売比率は、まだ10%もないですから、これは大きな挑戦です。9月には、4年ぶりに据え置きタイプのIHクッキングヒーターを投入します。まだまだラインアップは増やしますよ。さらに、松下電工との連携によって、エコキュートのサポート陣容も拡大しますし、秋からはオール電化のテレビCMを、初めて展開します。


キーワードはエコ

「ECO ideas」の一環としてWWFと共同で黄海の生態系保全プロジェクトなどにも取り組んでいる
――下期のポイントはなんですか。

高見氏: キーワードは、エコです。昨年までは「エコ&UD」でしたが、今年は、「ECO ideas」として、エコに絞りこんで強力に展開します。松下電器の企業理念として、地球環境との共存があります。これを積極的に打ち出し、エコをベースにすべての活動を行なっていく。5月から7月まで、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの付加価値製品の販売台数に応じて、ベトナムへの植樹を行ないました。この3カ月間で約22万本を植樹しましたが、10~12月にも、もう一度同じキャンペーンを行ない、年間で約50万本をベトナムで植樹します。

 一方、機能面では、今年から来年にかけては「センシング」が重要なキーワードになる。単品ごとにはセンシング技術を採用していましたが、今後、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった製品において、センシングへの取り組みが統一的なものとして出てくる。洗濯乾燥機におけるダンシング洗浄もセンシングの1つです。また、次期エアコンでは、相当な省エネが実現でき、気流やお掃除機能などが噛み合うことで、さらに賢いエアコンに進化します。これも、センシングによるものです。


――付加価値戦略がさらに加速すると。

高見氏: 実は、このままでは、高付加価値家電がいつまでも売れ続けるのは難しいと、私は考えているんですよ。確かにメーカー各社は、技術革新で新たな付加価値を実現しているというが、その価値と、価格のバランスを崩したものが出始めていることを懸念しています。お客様にとって、本当にベネフィットを提供できるのであれば、価格が上がるという動きは納得していただける。

 だが、本当はお客様が必要としないものがついているにも関わらず、それを付加価値というのであれば、単に単価をあげようという動きでしかない。こうしたバランスを欠いたような商品が増えれば、お客様が横を向くのは当然です。当社では、その点を厳しく言っています。価値と価格のバランスを崩したものづくりは、絶対にやってはいけない。やれば、必ず反動がくる。メーカーは、付加価値家電の世界を作ってきましたが、実は、それを壊すのもメーカーです。それだけは絶対にしてはいけないと肝に銘じています。

 それと、もう1つ忘れてはならないのが、ものづくりにおける品質向上です。

――品質問題は、松下電器にとっても大きな課題となっていますね。

高見氏: 様々な観点から、絶対安全を徹底しています。材料から見直すこと、検査工程を増やしたり、強化することにも取り組んでいますが、まず、すぐにできることでいえば、最終検査工程を徹底することです。

 かつて、冷蔵庫を担当していた時に、新製品の立ち上げにあわせ、1,000台を倉庫に入れて、全部梱包を開けるということをやりました。開梱して、もう一度徹底してチェックすると、基本機能にはなにも問題がなかったが、汚れがみつかったり、打痕があったり、静電気でホコリがふき取れていなかったりするんです。最終検査には、担当者も自信を持っていたんですよ。それ以来、工場の意識はガラっと変わりましたね。ただ、私は社内からすごく怒られましたよ。出荷が1週間遅れ、営業からはいつになるんだといわれますし、コスト負担の面でも経営的な痛みが伴う。

 だけど、社内なら怒られるのは私一人で済む。ところが、これが市場に出てから、という話になると、私が一件一件、お客様のところへ回ることなんてできません。だからこそ、品質は工場を出る前に徹底してやらなくてはならない。とにかく、品質は、最優先に取り組んでいきます。絶対的な安心こそが価値につながると考えています。





URL
  ナショナル(松下電器産業株式会社)
  http://national.jp/

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2007/10/02 00:01

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