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そこが知りたい家電の新技術
ナショナル「アラウーノ」

〜新素材で実現した2〜3カ月ブラシ洗い不要のトイレ
Reported by 三浦 優子

アラウーノ
 この1、2年、トイレの世界では相当大きな技術革新が起こっているようだ。各メーカーともに、「業界初」という新製品を発売している。

 その中にあっても、ナショナル(松下電工株式会社)が発売した「アラウーノ」はその斬新さが際立っている。トイレといえば陶器製という常識を打ち破り、有機ガラス系の新素材を採用。その結果、「全自動おそうじトイレ」として、水を流す度に便器が掃除され、なんと約2〜3カ月間、ブラシを使った掃除が不用になるという。

 一体、どんな技術革新が起こったことで、掃除をしなくても済むトイレが誕生したのか。





松下電工 住建事業本部 ドレッシング事業部商品企画開発グループ 酒井武之主任
 2〜3カ月、ブラシ掃除が不要!――アラウーノの宣伝文句を聞いて、即座に反応するのはトイレ掃除に苦労している人だろう。便器は、毎日、水で流している割には汚れがつくのも早い。少なくとも週に1度程度はブラシ掃除をしないと清潔さを保つのは難しい。

 アラウーノの、「2〜3カ月、ブラシ掃除不要」という宣伝文句を聞いても、本当にそんなことができるのかという気持ちになる。いかなる技術が使われているのか。

 「ポイントは便器の素材。陶器ではなく、樹脂を利用したからこそ、約2〜3カ月間、ブラシ掃除不要とすることができたのです」と話すのは松下電工 住建事業本部 ドレッシング事業部商品企画開発グループの酒井武之主任。

 便器に使われている素材は、陶器が一般的だ。上蓋のように重量がかからない部分には樹脂が使われているものもあるが、重さに耐える必要がある下部は、陶器が使われている。

 「ご指摘の通り、樹脂というと耐久性では陶器に劣るというイメージがあります。我々商品企画部でも、最初に開発部門から『樹脂のトイレはどうか』という提案を受けた時には、反対しました」(酒井氏)

 確かに我々のような素人でも、トイレの便器のように長期間利用するものに、樹脂は適さないというイメージがある。酒井氏の言葉からもわかるように、トイレのプロにとっては素人以上に樹脂の便器に不安に感じたそうだ。


松下電工 本社
新素材のベースとなるアクリル素材

 にも関わらず、製品化を実現したのはなぜなのか。それは、「開発部門からの熱心な提案」であった。


松下電工 住建事業本部 住建総合技術センター 材料開発・リサイクルグループ 丹生貴也技師
 実際に開発を担当した松下電工 住建事業本部 住建総合技術センター 材料開発・リサイクルグループの丹生貴也技師は、「アラウーノの開発には、約3年の時間がかかっていますが、そのうち半分の時間を費やしたのが素材でした」と振り返る。

 樹脂自体は、すでに20年ほど前から、家庭内のあちこちで使われている。「例えば、人造大理石といわれているものはほぼ樹脂製と考えて間違いないと思います。洗面台にも樹脂は使われています」(丹生氏)

 しかし、洋式トイレの便器に使うとなるとこれまで以上に強度が必要となる。どうしたら強度を確保できるのか。その強度を実現するために、樹脂に色々なものを混ぜて新しい素材を作る研究が行なわれた。

 その結果、できあがったのが今回採用された有機ガラス系の新素材だ。開発部門のスタッフにとってはまさに渾身の新素材であった。


弱点を強みに変える

左が陶器。右がアラウーノ。樹脂加工のため、つなぎ目など汚れが溜まりやすい部分も最小限に留められる
 当初は、開発部門以外のスタッフには不評だった新素材だが、この素材を採用することでさまざまなメリットが生まれることが明らかになった。

 実は便器用素材のデファクトスタンダードである陶器だが、色々と問題が多い。まず、焼成が不可欠となるため、サイズにバラツキが起こりやすい。

 最近のトイレは、温水便座など機能性が高いものが多く、便器側にはそうしたものを取り付けるための穴が開いている。陶器製の便座は、焼成の際、サイズが縮んでしまって、取り付けの際に穴の位置がずれてしまう場合もある。

 重さも問題である。トイレを設置する場合には、陶器の便器は重すぎるために、運送の途中で誤って落として、壊れてしまうトラブルも度々起こっている。また、そうしたトラブルが起こらないよう、トイレ設置を行なう人員を増やせばその分、設置時のコストがかさむことになる。

 また、最大の問題といえるのが水アカだ。陶器は水アカがつきやすく、それがさらに浸透し、ホコリ、陶器の珪素と結びついて表面を凸凹にしてしまう。その凸凹部分にさらにホコリや汚れが固着してしまうので、それを防ぐためにブラシで掃除する必要が出てくるのだ。

 それに対し、アラウーノは樹脂製なので軽く、成形も容易だ。

 「ただ、本来は樹脂という素材はブラシで掃除すると傷ついてしまうという弱点もありました。その点を開発部門に指摘すると、普通のブラシ掃除では傷がつかない加工を実現するとともに、逆転の発想の提案を受けたのです」(酒井氏)

 逆転の発想とは、アラウーノの最大の特徴といえる「約2〜3カ月ブラシ掃除が不要なトイレ」の実現である。ブラシ掃除をすると傷がつくというのであれば、「そもそもブラシ掃除を極力、しなくてすむ仕掛けにするのはどうか」という意見が出た。そしてそれを実現してしまったのだ。


試作品。樹脂を使っているため、重量は6.9kg 陶器で同様のサイズの便器を作ると28.4kgにもなる 素材の耐久性などをチェックするための部品

 約2〜3カ月ブラシ掃除が不要となったのは、便器の汚れの原因となる水アカがつきにくい樹脂を素材として採用したことが要因の1つ。

 さらに、水を流す際に泡を発生させて汚れを落とす工夫をしている。泡には、5mmの大きな泡と、洗剤を使うことで起こる直径60μmの小さい泡の2種類がある。

 「基本的な汚れを落とすには大きな泡の方が向いているんです。ところが、大きな泡だけでは小さな汚れは落ちません。そこで洗剤を利用することで小さな泡を発生させて、大きな泡では落ちない小さな汚れを落としているんです」(酒井氏)

 実は最初に起こる大きな泡を発生させるために利用されている技術は、お風呂に利用されている技術なのだそうだ。

 「水流を利用して空気を吸い込ませ、泡を発生させるという技術です。ただ、それでは小さい汚れを取るために必要な小さな泡を発生させるのは難しいので、洗剤の力を借りています。洗剤もそのための特別なものでは、日常的に使ってもらうのは難しいと思いました。そこで色々と研究した結果、中性洗剤をそのまま利用するという方法にたどり着いたのです」(丹生氏)


他社よりもちょっと上を行く機能程度では意味がない!

アラウーノ
 ナショナルに限らず、この1、2年は新しい機能を持ったトイレが次々に登場してきている。その要因を酒井氏は次のように指摘する。

 「なぜ新しい機能を持ったトイレが次々に登場しているのか。その最大の要因は、タンクレストイレの誕生です。僕は、タンクレストイレのことを、“トイレ界の薄型大画面テレビ”と呼んでいるんですよ。薄型大画面テレビの登場で、テレビの世界が革命的に変化したのと同じように、タンクレストイレが登場した2000年頃からトイレ業界は大きく変わったんです」。

 確かにタンクがなくなったことで、トイレのデザインも大きく変わった。それまでのおきまりのパターンからスタイリッシュなものへと変化したのだ。

 デザインの変化とともに新しい機能をアピールするのが通常のパターンだが、ナショナルにとっては、「他社製品よりも、ちょっと機能的に上回っているレベルでは駄目!」という意識があったそうだ。それはトイレ市場では、ナショナルが後発メーカーであることに起因している。

 「2006年、大手メーカーが流す水の量を6L以下にしたということで、ニュースなどで話題となりました。しかし、水の量を6L以下にしたトイレはすでに当社では8年前から発売していたんです。ところがそれほど話題にはならなかった。我々は後発ですから、これまでの延長で新製品を作っていては駄目だと思っていました」(酒井氏)

 アラウーノに搭載された機能は、他社製品にはない機能ばかり。しかも、樹脂を素材としたことで、それ以外のメリットも生まれた。成形がしやすいため、デザイン性の高い便器を作ることが可能となったのだ。アラウーノのデザインは、auの携帯電話「インフォバー」などのデザインを手がけた深澤直人氏が担当。機能性とデザイン性を兼ね備えたフォルムを実現している。


出っ張りのないデザインにより、スッキリとした印象 ランプや表示も目立たない位置にある

足下のLEDは夜、トイレに行った際、目が覚めないように配慮されている
便器を照らすLEDもある

 単なる見栄えの良さだけでなく、ナショナルの従来品で20mmあった便座と便器の隙間を5mmにすることで、ゴミが入り込む隙間を極力減らした。汚れがたまりやすい便器のフチ裏もなくして、拭き掃除のしやすい形状となった。

 便器内に本格的なオーディオ機能をビルトインすることができたのも、成形が容易な樹脂素材ならでは。3Dサラウンドを実現したオーディオ機能は、「カタログを見ている段階よりも、体感してもらうと圧倒的にお客様の反応が良くなる機能」だという。便器の足下部分には、LED照明を埋め込み、夜間でも主照明をつけずに安心して用を足すことができるほか、トイレ内の雰囲気がぐっとよくなっている。

 「掃除する手間を極力減らすというコンセプトの商品なんですが、実際に商品を購入したお客様からは思わぬ反応も出ています。『トイレ掃除をすることが楽しくなって、毎日掃除をするようになりました』という声もありました」(酒井氏)

 こうしたオーディオ、照明といった機能には、総合電機メーカーであるナショナルならではのこだわりを感じる。これまでのトイレとは違い、ナショナルブランドが得意とするラウンドで勝負し始めたトイレがアラウーノといったら言い過ぎだろうか。

 「いや、実はアラウーノについては『家電製品です』というアピールをしてみたいと思っています。家電感覚でトイレも導入する時代に入っているのではないか。そんな思いも、この製品を投入した根本にはありますね」と酒井氏は話している。


ここから洗浄液が便器に沿って流れ出すようになっている
ミニジャックがあり、音楽プレーヤーを接続できる

操作パネル
下側のカバーを開くとより詳細な設定が可能 便器洗浄やフタの開閉は基本的な操作は本体上面のボタンだけで行なえる

スタイリッシュなデザインだが商品名は大阪のセンス

 取材の最後に、最初から疑問だったことを聞いてみた。

 実際の商品デザイン、広告を見ると、スタイリッシュなイメージで消費者にアピールしている感があるこの製品だが、商品名を口に出して呼んでみると、その印象は一変する。「アラウーノ……あらうの……洗うの?」とオヤジの駄洒落を思い起こしてしまうのだ……。

 そう質問すると、ナショナル側でもこのネーミングには賛否両論あったそうだ。

 「ウーノ」にはイタリア語の「1」という意味もあり、イタリア語に聞こえなくもないが……やはり、インパクトの強さで、このネーミング採用が決まった。

 「なんといっても、一回聞くと忘れられない商品名でしょう? 松下電工という大阪の会社が作った製品でもありますし(笑)」(酒井氏)

 確かに商品コンセプトとも一致している。作ったのがナショナルだとすぐに結びつきやすい。それに何より、確かに一度聞いたら忘れられない。そういう意味では、商品名まで戦略的なものといえる。





URL
  ナショナル(松下電工株式会社)
  http://www.mew.co.jp/
  アラウーノ
  http://national.jp/sumai/toilet/alauno/

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ナショナル、自動掃除機能で3カ月メンテ不要のトイレ(2006/10/17)


2007/04/03 00:01

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