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ES-FG60F-H
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家電量販店へ洗濯機を見に行くと、横や斜め向きに扉がついたドラム式洗濯機が目立つように陳列されている。乾燥機能を搭載したものも増えており、ドラム式はもちろん、見た目には従来の全自動洗濯機と同じように上に扉がついたものでも、乾燥まで済ませられる製品が多い。
ただ、これらの製品は比較的高価で、あまり洗濯回数の多くない単身者には負担が大きい。洗濯物の量もさほど多くないのだから、干すのもさほど手間ではないだろう。安価できちんと洗えるものが欲しいというニーズも確実に残っているはずだ。
今回は、その間を取ったような形の、「送風機能付き」全自動洗濯機を試してみることにした。“簡易乾燥付き”とも呼ばれる製品で、脱水後に洗濯物に風を送り、より水気を飛ばした状態にするというものだ。乾燥機のように温風を送るわけではないので、完全に乾きはしないが、干す時間を短縮できる。本体価格や消費電力の面では、ヒーターを搭載しない分、さほど高価にはなっていない。
選んだ製品は、シャープの「ES-FG60F-H」。洗濯、脱水、簡易乾燥の容量は6kgと、単身者にはやや大きめ。本機の色はグレー系のみで、容量によって色が異なる。2006年12月末に、都内の量販店にて38,000円で購入した。
● 「節水穴なしクリーン槽」と「Ag+イオンコート」
本機の特徴としてまず「節水穴なしクリーン槽」と「Ag+イオンコート」の2点を挙げたい。

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洗濯槽は穴がない「節水穴なしクリーン槽」。ステンレス製で、見た目にも清潔感がある
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「節水穴なしクリーン槽」は、シャープの洗濯機の特長となっている、穴のない洗濯槽のこと。ステンレス製の洗濯槽は全体に凹凸が付けられているが、どこにも穴がなく、洗濯槽と水槽の間に水が入らないようになっている。
これにより少ない水量で洗え、かなりの節水が期待できる。同容量の他社製品とカタログ上のスペックを比較すると、使用水量が約2割程度少ない。水量が少ない状態で洗うため、洗剤が水で薄まりにくく、洗浄効果も上がるという。
また、洗濯槽の外に水が入らないことで、カビの繁殖を抑えられるという利点もある。洗濯槽の内側は綺麗だが、外側は酷く汚れているという話は聞いたことがあると思うが、本機はそのカビが生える余地がないというわけだ。
もう1つの「Ag+イオンコート」は、最後のすすぎに使う水に銀イオンを加えるという機能。銀イオンは微生物などに対する殺菌作用があり、除菌や消臭を目的とした製品にも数多く採用されている。
「Ag+イオンコート」で洗濯された衣類には、脱水後にも銀イオンが残る。これが、においの原因となる雑菌の繁殖を抑える。汗をかいてもにおいを出にくくしたり、乾きの遅い部屋干しでも生乾きのにおいを抑えるといった効果が期待できる。この効果は、次に洗濯して銀イオンが流れ落ちるまで持続するという。
あまり強力な殺菌力を持っていると、衣類を傷めたり、肌へのダメージが気になるという人もいると思うが、シャープは「衣類や肌へのダメージはほとんどない」としている。実際に使ってみても、通常の洗濯機で洗ったものと差は感じられない。
さらに銀イオンは、洗濯槽にも除菌効果を与える。「節水穴なしクリーン槽」との相乗効果で、洗濯槽を美しく保てる仕組みだ。実際の効果は長く使ってみないとわからないが、後々のメンテナンスの手間が省けるなら嬉しい。
銀イオンの発生装置は本体に内蔵されており、標準コースで1日1回洗濯した場合、約7年間使用できるという。単身者で毎日洗濯する人は少ないだろうし、仮に毎日洗濯したとしても、7年も使えば製品寿命を迎えてもいい頃。洗濯時に機能を切ることも可能だが、常に使用する状態でもまず問題はないだろう。
● 通常の洗濯は1ボタンでスタート。水量も自動選択
こういった機能も重要だが、何より大切なのは基本的な使用感の良し悪しだ。洗濯機の前面にあるボタンを見ると、水量、洗濯時間、すすぎ回数、脱水時間、室内干し(送風時間)が選べる。予約設定は、6時間後と9時間後の2つ。風呂へのホースをつなげば、風呂水も利用できる。「Ag+イオンコート」ボタンもあるが、使用するかどうかの設定が記憶されるので、常時使うなら毎回ボタンを押す必要はない。
あまり多機能だと面倒に思えるが、普通に洗濯するだけなら、上記の部分はほとんど触らない。右のボタンで電源を入れ、洗濯物を入れた後、コースを選んで「スタート」のボタンを押すだけ。少し洗濯槽が回って洗濯物の量を自動で確認し、適切な水量を選んでくれる。その後、水量に応じて洗剤を入れ、蓋を閉めれば洗濯が始まる。ほとんどの場合はこれだけで十分だ。
他にも、3kgまでの洗濯物を短時間で洗う「倍速」や、時間をかけて念入りに洗う「ガンコ」など、複数のコースがプリセットされている。必要に応じて、各コースを利用するか、自分で1つ1つ細かく設定するかを選べる。
なお送風機能を利用したり、「Ag+イオンコート」の機能をON/OFFしたい場合は、「スタート」のボタンを押す前に設定しておく必要がある。送風時間は、1時間と2時間の2つが選べる。
● 銀イオン、穴なし槽との相乗効果が生まれる「室内干しコース」
「室内干しコース」は送風機能、いわゆる簡易乾燥だ。上記のとおり、脱水の後に1時間ないし2時間の送風を行ない、洗濯物の乾燥時間を短縮できる。具体的には、槽を高速回転させながら風を送る。これにより、衣類の水分を約半分まで減らすという。
実際に「室内干しコース」をした後の洗濯物を見ると、洗濯槽の縁に押さえつけられたような脱水のみの場合とは違い、全体にまんべんなく、やわらかく広がっていた。触ってみると、下着やタオルなどの薄いものは、確かに半分程度と思えるほど水気が飛んでいた。
干してから乾くまでの時間も早く、薄手のものは夜干せば朝には乾いていた。しかし、厚手のジーンズなどは、部分的にまだ湿気が残っていた。ただ、脱水後そのまま干せば1日経っても湿気が残っている場合もあるので、それを思えば乾くまでの時間はかなり短縮されているのは間違いない。
逆に気になった点もある。回しながら水気を飛ばすためか、衣類のしわが目立つ。乾いた後も残りやすいので、しわができやすいものは丁寧にアイロンをかけるなどのケアが要りそうだ。
もう1つ気になるのが、「室内干しコース」にかかる時間だ。短くて1時間、長ければ2時間という設定になるため、その前の洗濯時間を含めれば、最長3時間近くにもなる。部屋干しをするのは、日没後に帰宅した後が多いはずだが、そこから3時間となると、うっかり洗濯したことを忘れて寝てしまうこともありえる。最終的に乾いてくれる乾燥機能とは違い、そこから干さなければならないので、ほうっておくと衣類のしわも酷くなるし、においも出てきてしまう。この点が、洗濯乾燥機との大きな違いだ。
経験上、洗濯してから半日も放置してしまうと、もう1度洗いなおそうかと思うくらいのにおいが出てくる。しかし本機には、雑菌の繁殖を抑える「Ag+イオンコート」と、清潔さを保つ「節水穴なしクリーン槽」がある。もしかすると、半日ほど取り出すのを忘れても大丈夫だろうか。これらの機能の本来の目的とは違うと思うが、一応試してみることにした。
2時間の「室内干しコース」の後、半日置いて洗濯槽から取り出してみると、かすかに生乾きのようなにおいがしたが、洗濯が台無しというほどではなかった。そのまま干して乾かした後で衣類のにおいを確認すると、驚いたことに、においがほとんど消えていた。ただ、洗濯後すぐに干したものや、屋外で天日干ししたものと比べると、わずかながらにおいの違いが感じられる。
確かに効果は発揮されているし、「何とか大丈夫」なレベルではあるが、これは洗濯機がほぼ新品という最高の状況でのことだ。そもそも想定外の使い方なので、あまり期待はしないほうがいいだろう。
私も実際、夜に帰宅してから洗濯することが多いのだが、これまで使っていた10年物の洗濯機で洗った衣類と比べると、乾いた後のにおいの違いに驚かされる。どんなに綺麗に洗濯しても、天日干ししたものとはにおいが違ったものだが、本機に変えてからはその差がかなり狭まった。ただ洗濯するだけでなく、その上の清潔さを求める人には、「Ag+イオンコート」を搭載した本機をお薦めしたい。
■URL
シャープ株式会社
http://www.sharp.co.jp/
製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/living/washer/size01/esfg60fh/index.html
2007/01/17 00:02
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