● メタボリックシンドロームにつながる「内臓脂肪量」などが算出できる
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インナースキャン BC-500
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今回紹介するタニタの体組成計「インナースキャン BC-500」は、体重を測るだけではなく、体脂肪率も同時に測定してくれる製品だ。本製品がユニークなのは、それらのデータをUSBメモリに保存し、同梱のアプリケーションを用いてパソコンでバックアップ・解析ができることだ。
体重や体脂肪量は、一般的には日々緩やかに変化していく。毎日体重を測っている人は多いと思うが、月単位・年単位でどれだけ変動があったかを問われると、正確に答えられる人は少ないだろう。
また、メタボリックシンドロームという言葉が昨今、脚光を浴びている。内臓脂肪の量というのは、生活習慣病にとって大きなファクターである。しかし、これまでの体重計には、それらを測定する機能が存在しておらず、また仮にそうしたデータを入手できたとしても、個人でなんらかの診断を行なうことは困難だった。
そうした意味で、体重と体脂肪率から内臓脂肪量などを算出でき、さらにパソコンを用いてさまざまな切り口で分析が行なえる本製品は、時代にマッチした健康管理ツールだといえそうだ。
● 使い方は一般的な体重計と同じ。家族4人分のデータの記録に対応
製品の基本的な使い方は、一般的な体重計となんら変わりない。正方形に近い盤面の両側に足を乗せる場所があり、値を示すウィンドウは中央上部にレイアウトされている。外観も体重計そのままで、特に奇をてらった作りではない。
本製品では家族4人分のデータが記録できるようになっている。前面の5つのボタンのうち、中央の電源ボタンをのぞく4つにはそれぞれ番号が振られており、あらかじめ任意の番号に年齢や身長といったパーソナルデータを登録しておく。その上で、自分の番号をプッシュするという手順を経ることで、データが別の家族のものと混同してしまうのを防ぐのだ。
では実際に使ってみよう。まず、本体前方に並んだ5つのキーの中から、自分の番号をプッシュする。「ピッ」という電子音がし、数秒間が空いてから「ピッピッ」と短い音が2回連続して鳴る。これが準備完了の合図なので、製品の上に乗れば測定が開始される。キーを押さずにいきなり乗っても測定はされないので、注意が必要だ。
測定では「体重」「体脂肪率」の2つが順に測定され、液晶画面に順に表示される。時間としてはおよそ10秒程度で、終わったら再び電子音で測定完了が通知される。
測定が終わったのち、体重と体脂肪率が3回ほどリピートで表示され、その後初期画面に戻る。おそらくデータをリピート表示している間に、USBメモリにデータを書き込んでいるのではないかと推測される。
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液晶画面には各種情報が表示される。PCにデータを取り込まなくても基本的な項目はここで表示可能
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あらかじめ年齢・身長などのデータを登録しておき、前部に装備されている自分の登録番号のボタンを押してから測定を開始する
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● USBメモリ経由でデータをPCに転送し、分析が可能
本製品のキモは何と言っても、データをUSBメモリ経由でパソコンに取り込めることだ。もしこれが、製品本体とパソコンをUSBケーブルで直結して、データを転送するような仕様であれば、パソコンもしくは製品本体をその都度、移動させなくてはならず、非常に不便だったに違いない。記録媒体として可搬性の高いUSBメモリを採用することで、これらのデータの手軽なやりとりを実現した点はユニークだ。
パソコンにデータを取り込んで分析するためには、あらかじめパソコン側に添付のユーティリティソフトをインストールしておく必要がある。初回起動時にユーザー登録の画面が出てくるので、製品本体の設定と同様、1~4の中から個人の番号を登録し、年齢、身長といった情報を入力しておく。
続いてデータの取り込みだ。製品本体からUSBメモリを取り外したのち、パソコンのUSBポートに接続し、データ取込みボタンをクリックすると、データの取り込みが自動的に開始される。取り込みが完了した時点で、USBメモリ内のデータはクリアされるため、そのまま製品本体に戻して引き続き使うことができる。難しいことは何もなく、わざわざ手動でデータをコピーしたり、消したりする必要はない。
ちなみにUSBメモリへのデータの最大保存期間は、1カ月間となっている。これはUSBメモリの容量とはどうやら無関係で、もし4人分のうち1人しか使っていない場合でも、保存期間が4倍の4カ月になるといったことはない。逆に、家族の誰かが1カ月分以上のデータを保管していて“USB FULL”のアラートが表示された場合でも、他の家族のデータが保管できなくなるわけではない。内部でパーティションが分けられているイメージだ。
余談になるが、本製品添付のUSBメモリはWindows PCのエクスプローラ上からは認識できず、PC用にフォーマットするといった操作は行なえない。また、FAT32フォーマットのUSBメモリを本製品のUSBポートに挿入してみたが、認識しなかった。つまり、事実上の専用品で、市販品と交換して使うことはできない。紛失・破損しないよう注意が必要だ。
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データ保存用のUSBメモリ。最大保存期間は1カ月なので、例えば毎月1日にデータを取り込むといったルールを決めておくとよいだろう
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USBメモリは本体上面中央に装着されている
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製品添付のユーティリティ。現時点ではVista対応は不明
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● 異常値が出たら即改善、正常値が出ても過信は禁物
USBメモリ経由でパソコンに取り込んだデータは、期間やグラフ形式を変えながら自在に参照・分析することができる。ここでは例として、筆者個人が1カ月間試用したデータをみていくことにしよう。
筆者個人は、身長と体重のバランスを見る限り、いたって標準な体型である。体脂肪率はやや低い部類で、改善の必要があるとは言えない。ぶっちゃけた話、本製品のレビュアーとしては、あまり面白みのない体型ということになる。
もっとも、1カ月間保管したこれらのデータをPCに移して参照・分析していくと、細かい傾向が分かって面白い。例えば外食した日は体脂肪率の値が高くなっていたり、風邪を引いて満足に食事が取れなかった期間は体重と体脂肪量がガクンと低下しているなど、日々の生活がこれらの値に大きな影響を与えていることがわかる。その日その日で見ているとなかなか気づかないが、グラフの形で前後のデータと見比べると一目瞭然というわけである。
また呼吸や体温調整など、人間が生きていくために使われるエネルギーを表わす「基礎代謝」の基準値を見てみると、体重1kgあたり1日、23.7kcalとなっており、判定は「燃えやすい」、つまり基礎代謝量が高いという結果が出ている。ちなみに厚生労働省の資料によると筆者の年齢における基準値は22.3kcalなので、それよりもだいぶ高い。基礎代謝量が高いということは、脂肪が蓄積しにくく、肥満になりにくいことを意味する。つまり、生活習慣病にはあまり縁がないということになる。
このほか、内臓脂肪も標準の値であり、筋肉量も標準ときている。本製品には目標設定の機能も搭載されているのだが、筆者の場合、現状では設定のしようがなさそうである。
しかし実際には、筆者は中性脂肪やコレステロール値が基準値からやや離れており、ここ数年は健康診断で常にひっかかる状況にある。ウエスト径や内臓脂肪量は問題ないものの、実はメタボリックシンドロームの一歩手前というわけだ。そうした意味では、健康状態のすべてが分析できるわけではないので注意したい。この製品による判定で異常値が出た場合は改善すべきであるが、正常値が出た場合でも過信は禁物だと言えるだろう。
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体重を示したグラフ。判定は「標準」
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体脂肪率を示したグラフ。こちらの判定は「-標準」と若干低め
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体脂肪量も「-標準」という若干低めの判定
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基礎代謝基準値は「燃えやすい」という判定だった。基礎代謝量が多めで、実年齢に比べると若いようだ
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● 家族はもちろん、一人暮らしの方の健康管理に最適
基礎代謝や内臓脂肪量といった用語に詳しくなくても、グラフでそれらの値の変動を見たり、標準値と比較して健康状態を手軽にチェックできるのは、とてもありがたい。過信は禁物と書いたが、一般家庭で使用する分には、食生活の乱れをしっかりチェックしてくれるだけでも十分な機能だろう。
外観がややメカっぽい上、記憶媒体としてUSBメモリを用いているがゆえに、PC周辺機器の亜流であるかのように思われがちだが、実際の製品は小難しさはまったくなく、ホームユースを最大限意識した作りになっている。ちなみにUSBメモリの容量がフルになっても、測定だけなら問題なく行なえるので、USBメモリの存在を完全に無視して使い続けることも可能だ。そうした意味でも押し付けがましくない良心的な製品だと言える。
そもそも体重計というのは、それほど頻繁に買い替えるアイテムではない。転居や結婚、一人暮らしのスタートといったイベントに伴って、新しい製品にリプレースされる類の製品だろう。そうした機会にはもちろんのこと、現在手持ちの製品から買い換える価値も十分にある製品だと思う。
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基礎代謝量は、実年齢の割には高めで、悪くない傾向
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メタボリックシンドロームに直接つながる内臓脂肪量の測定結果は「標準」
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筋肉量は、こちらも「標準」。かくれ肥満の心配はなさそうだ
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体組成もまた「標準」。目標とほとんどズレのない値だ
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それぞれのデータを表形式で表示したところ。日単位のほか、週単位、月平均などでも表示できる
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「豆知識」と題されたコラムも閲覧可能
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判定基準についても、詳細な説明が用意されている
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自ら目標を設定して改善に取り組むこともできる。飽きっぽい方にオススメの機能だ
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パーソナルデータを見るためにはパスワードが必要になる。家族間とはいえプライベートな情報はしっかりと守られている
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■URL
株式会社タニタ
http://www.tanita.co.jp/
製品情報
http://www.tanita.co.jp/products/bc500.html
2006/12/20 00:04
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