今年も気づけば師走。寒さが増してくると、必要になるのが暖房器具だ。暖房器具はテレビやパソコンとは異なり、購入前に何度も家電店に足を運び、機能、性能を見比べて購入に至るというよりも、「前に使っていた製品が壊れた」、「急に寒くなった」といった必要性にかられて購入している場合が多いようだ。
しかし、利用する期間は限られるとはいえ、暖房器具は冷蔵庫、テレビ、照明と並ぶ、長時間利用する家電製品。選び方を間違えると、電気料金がぐんと上がってしまう。また、買ってはみたものの、実際に自宅で使うとイメージ通りの暖かさが得られない、という話もよく聞く。
そんな要素をふまえながら、ナショナルで、暖房器具全般を担当している商品グループ 空質商品チーム 主事の梅垣喜英氏に電気暖房器具の賢い選び方を指南してもらった。
● 戸建てかマンションか。それが問題だ
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松下電器産業 商品グループ 空質商品チーム 主事の梅垣喜英氏
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エアコン、ホットカーペット、こたつ、ストーブ……。これだけ色々とある暖房器具の中から、最適なものを選ぶには、どんな点を考慮して選択すればいいのだろうか。部屋のタイプや家族構成、住居など条件によって答えは違うということだけはわかるのだが。
ナショナルでは顧客からそういった相談を受けた時、「まず、最初に住んでいるのが木造の戸建てか、鉄筋の集合住宅のどちらなのかを尋ねるようにしています」(梅垣氏)という。戸建てと集合住宅では、電気暖房でカバーできる範囲に大きな違いがあるからだ。
「戸建ての場合、住居全体を暖める暖房というより、人に向けた暖房の方が適しています。空間が広い上に気密性が低いので、全体を暖めようとしても、暖気が漏れてしまうことがあるからです。エアコンの性能も毎年上がっていますが、木造の戸建て住宅の場合、まだまだ石油ファンヒーターが活躍する場面も多いでしょう」(同)
そういわれてみれば、戸建ての実家では同じエアコンでも暖房の効果が薄い。すきま風で部屋がしんしんと冷える感じがする。それに対し、現在住んでいる集合住宅はエアコンをつければかなり暖まる。これは、住宅の気密性の違いからくる現象だ。まず、自分の住居に合った暖房器具はなにかを考えるところから、暖房器具選びを始めるというわけだ。
一般家庭用に利用できる電圧、電流量には限りがある。その限られた電力の中でやりくりをしなければならない。木造住宅のように気密性が低い住宅で電気暖房を利用する場合には、暖かい空気が漏れるため、「全体を暖める」ことよりも、「人を暖める暖房」の方が効率的、ということだろう。
それに対して、住宅の気密性の高い集合住宅であれば、よりエアコンが効果的で、部屋全体を暖めることが可能となる。しかも、賃貸住宅の場合、安全性を重視して、「ガスや灯油の暖房禁止」ということも結構多い。そうなると、電気暖房が唯一の頼りになってくる。気密性の高さを生かして、エアコンのように部屋全体を暖める暖房器具を選ぶ方が賢明だ。
エアコンのほかにも、部屋全体を暖める暖房器具としては、パネルヒーターや、セラミックファンヒーターなどがある。パネルヒーターは、エアコンのように暖かい空気を吹き出すのではなく、遠赤外線でじんわりと部屋全体を暖める機器だ。一方、セラミックファンヒーターは、気密性の高い部屋であれば、あくまで目安だが、8畳程度までの暖房が可能という。
まず、主力となる暖房機器を住んでいる環境によって選ぶこと。これが、最適な暖房選びの第一歩だ。
部屋の全体を暖める機器
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ファンヒーター「DS-FK1200」。店頭価格は25,000円前後
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パネルヒーター「DS-P1200-S」。店頭価格は40,000円前後
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8畳用のエアコン「CS-X257A」。店頭価格は200,000円前後
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● 全体暖房と、部分暖房を組み合わせて快適に過ごす
ここまで述べてきたのは、「暖房の主役」の話。つまり、主力となる暖房器具を、家の構造から選びましょう、という内容だった。いわば「暖房の基本」にあたる。さらに快適な暖房を実現するためにはどうすればよいのか。
「1つで全てを済ませるのではなく、いくつかの暖房器具を組み合わせて利用するのが快適に過ごすコツ」というのが梅垣氏の見解だ。
エアコンやファンヒーターのように部屋全体を暖める暖房器具は、足下を暖めるのはあまり得意ではない。エアコンで足下まで暖めようとしても思うようには暖まらない。そこで部屋全体を暖めるエアコンと、足下やおしりの下を暖めるホットカーペットなどを併用することが望ましいのだという。
「省エネのために、エアコンの温度は20℃に設定することが望ましいといわれています。エアコンだけの暖房で、20℃では寒いと感じる人も多いかもしれませんが、足下を暖めることでぐっと快適になります」
人間が快適だと感じるのは、「頭寒足熱」が良いのだという。文字通り、「頭は冷やさず、足下を暖める」という意味だ。特に長時間過ごすとなると、頭の周りがあまりに暑くてはのぼせてしまう。筆者は子どもの頃、暑すぎる部屋で長時間過ごしたせいでのぼせてしまい、鼻血を出したことが何回もある。そういった事態に陥らないためにも、頭の周囲の温度は高すぎず、足下が暖かい状態で過ごすことがベストというわけだ。低めの温度に設定したエアコンで部屋全体を暖めながら、ホットカーペットなどで足下を暖める――まさに「頭寒足熱」である。
ホットカーペットは、床暖房のように工事の必要もない。ナショナルは、今年9月1日、「かんたん床暖」というカバーレスタイプの電気カーペットを発売した。表面に防水加工を施し、食べ物をこぼした場合にもさっと拭くだけできれいになる。
電気カーペットは手軽だが、食べ物をよくこぼす子どもや、アレルギーを持った人のいる家庭などでは、導入にためらいが生じる。しかし、「かんたん床暖」のように表面を拭いてきれいにできる製品であれば、ホコリやダニの死骸などハウスダストも気にせず使えるというわけだ。
このように、電気暖房器具も年々進化している。最新製品の機能をチェックすることで、より理想に近い暖房が実現できる可能性もあるのだ。
部分暖房に分類される機器
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足温器「DF-53-R」。オープンプライス。店頭価格は6,200円前後
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デスクヒーター「DC-PD1-C」。店頭価格は11,000円前後
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ホットパネル「DC-PK2-T」。店頭価格は14,000円前後
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足温器「DF-37-G」。店頭価格は12,000円前後
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3畳用ホットカーペット「DC-3LM200-H」。店頭価格は30,000円前後
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かんたん床暖「DC-2F1-B」。店頭価格は30,000円前後
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● 部屋や家族構成に応じて最適な暖房器具を選ぶ
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梅垣氏おすすめのカーボンヒーター「DS-C906」。店頭価格は12,000円前後
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鉄筋住宅ではエアコンは使いやすいが、全ての部屋にエアコンを導入できるわけではない。また、台所のように作業する時にのみ利用する暖房器具は、「台所専用」というより、必要に応じて移動できるものが望ましい。複数の部屋で利用できるものとしては、どんな暖房器具があるのだろうか。
「移動可能な暖房器具としては、セラミックファンヒーターがオススメです。スイッチを入れるとすぐに暖まりますし、重量もそれほどありませんから」
一方、寝室に向いているといわれるパネルヒーターは、じっくり暖めるタイプの暖房器具。高温ではないものの、部屋全体を暖めることができるので、子どもやペットのいる家庭には向いている。
また、部屋によってはあえて部屋全体を暖めないというのも1つの選択肢だ。勉強部屋は、部屋全体が暖まってしまうと眠気が増す。机の下だけを暖めるデスクヒーター、足温器などピンポイント暖房で、風邪をひかない工夫をしながら緊張感をもって勉強する体制を作るといいという。
昔は冬の勉強はコタツの上という人も多かっただろう。現在でも、木造家屋の場合はコタツくらい暖かさがあった方が勉強するのに向いているといえるだろう。ただ、気密性の高い住宅に住んでいる場合には、コタツでは暖かすぎる。そういう場合には、デスクヒーターや足温器で十分なのではないだろうか。
ちなみに、梅垣氏のおすすめはカーボンヒーター。「価格も比較的手頃で、すぐに暖まります。首振り機構もあるので、ある程度の範囲はこれで対応できます。急に寒くなってきたときに買う一台としては、最適なチョイスではないでしょうか」
住宅環境に応じて、全ての部屋を同じように暖めるのではなく、目的に応じた暖房器具を選ぶことでより快適な生活が実現しそうだ。
暖房器具の種類とその特徴
機器の種類 | 部分暖房/全体暖房 | 消費電力の目安 | 主な特徴
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足温器 | 部分暖房 | 20~60W | 足だけをピンポイントに暖める。消費電力が少ない
| デスクヒーター | 165W | 机の下などに置くと良い。足下だけを暖めるため、勉強部屋や仕事部屋にも向く
| ホットパネル | 280W | キッチンなど、暖房器具を置きづらい場所に有効
| こたつ | 600W | 布団で囲うため、熱が籠もりやすく、効率がよい
| ホットカーペット | 700~1,000W | 足下から暖まるため、室温以上に暖かく感じる
| カーボンヒーター | 450~900W | 立ち上がりが早く、すぐに温まる。全体暖房とまではいかないものの、首振り機構によって、広い範囲を暖めることができる
| パネルヒーター | 全体暖房 | 400~1,200W | じんわりと部屋全体を暖める。極端に熱くなる部分がなく、安全性が高い
| ファンヒーター | 600~1,200W | 温風を吹き付けて暖かくする。エアコンよりも立ち上がりが早い
| エアコン | 300~800W | 部屋全体を温風で暖める。省エネ性能が大幅に向上しており、効率がよい。部屋は乾燥しがち
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● 使用後はもちろん使用中も不可欠なメンテナンス
ところで、暖房器具は春になればしまい込む製品。収納する際には、どんなことを気をつければよいのだろうか。
「電気ストーブなどの製品は、きちんとホコリをとるなど掃除を行なった上で、ビニール袋に入れてさらにホコリが入らないようにしまって、収納しておくのがよいと思います。電気カーペットについては、カバーについては天日干しを行ない、本体はきちんと拭いて収納するのがよいでしょう」
また、ホコリについては、収納する時だけでなく、利用中も頻繁にホコリをとっておくと、省エネにつながるという。
ダニが発生しやすいといわれる電気カーペットだが、最近の製品にはダニが入り込まない工夫やカビ防止加工がついているものが増えてきた。表面部分についても、頻繁にカバーを変えたり、拭き掃除ができるタイプのものを選べば、清潔に利用できるだろう。
エアコンの場合は、衛生面だけでなく、掃除の有無が性能に大きく影響する。表面はもちろん、フィルターの掃除をすると、しないとでは効果に大きな差が出てくるからだ。エアコンの効果を最大限に享受するためには、2週間に1度のフィルター掃除が必要という。それだけマメに掃除するのが必要とは……。「おそうじロボット」搭載エアコンをはじめ、最近、フィルター掃除機能をもったエアコンが登場しているが、そういう機能をもった製品が出てくるのも無理はない。
また、暖房を利用するシーズンは空気が乾燥する時期でもある。暖房を利用すると余計に乾燥するので、加湿器を利用することも多いが、セラミックファンヒーターの中には加湿機能を持ったものも登場している。暖房を利用すると、肌の乾燥に悩まされるという人であれば、こうした製品を使用してみるというのも1つの選択肢となる。
こうして新しい製品を見比べると、新しい機能が色々と付け加わっていることがわかる。暖房製品は慌てて買いに行くのではなく、余裕を持って選ぶのが望ましい。
それも1つの製品で全ての暖房をまかなうのではなく、複数の製品を組み合わせて利用することで、より効果は高まる。メインの暖房、サブの暖房をうまく選んで、快適な冬を過ごしたいものだ。
■URL
ナショナル(松下電器産業株式会社)
http://national.jp/
関連情報
■URL
電気暖房講座(ナショナル)
http://national.jp/college/danbou/
2006/12/04 00:00
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