● 乾燥した空気を潤して、風邪や肌荒れ、静電気の発生を抑制
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加湿器で空気を潤すことで、風邪や肌荒れを防ぐ効果がある(写真はヴィックス「Vicks Model VUT102」)
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加湿器は、室内の湿度を高めるために利用する空調機器のことを指します。あらかじめ本体内のタンクに水を貯めておき、その水を蒸発させて室内に放出することによって湿度を高めます。空気が極端に乾燥する冬期に主に利用されます。
湿度が低く空気が乾燥している状態は、様々なトラブルの元となります。例えば、冬場は静電気を感じやすいですが、これは空気が乾燥していることで静電気が発散されにくくなり、体内などに蓄積されてしまうからです。他にも、乾燥している状態ではウィルスが活発に活動するようになり、鼻やのどの粘膜が乾燥して炎症が起きやすいために、風邪を引きやすくなる、肌が乾燥して荒れてしまうなど、空気の乾燥にはあまりいいことがありません。
しかし、加湿器を利用して室内の湿度を高めておけば、こういったトラブルもかなり軽減できるでしょう。
● 大きく分けて4種類の方式がある
加湿器には、大きく分けて4種類の方式に分類できます。そこで、それぞれの特徴を紹介していきましょう。
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スチーム式の象印「EE-PA25」
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■スチーム式
水をヒーターで加熱して沸騰させ、その蒸気を室内に放出させる方式のものを「スチーム式(または加熱式)」と言います。やかんでお湯を沸かすと、注ぎ口から勢いよく蒸気が噴き出しますが、それと同じ原理と考えるとわかりやすいでしょう。実際に蒸気が噴き出している様子を目で確認できますので、加湿しているという実感が得やすい方式となります。蒸気をそのまま室内に放出させるものと、ファンを使って勢いよく放出させるものが存在します。
スチーム式加湿器は、水を沸騰させて蒸気を放出させるために、加湿能力が比較的高めです。加えて、放出されるのは水(それも蒸留水)しか含まない蒸気となりますから、非常に衛生的という利点があります。
しかし、ヒーターを利用するために消費電力が大きいという点や、水に含まれる不純物が本体内に残って、蒸発皿をこまめに掃除する必要があるという点などが欠点です。蒸気の吹き出し口が高温となるために火傷の危険性があるという欠点もありますが、最近ではスチーム式ながら吹き出し口の温度を低温にした製品が増えていますので、火傷の危険性は以前よりも少なくなっていると考えていいでしょう。
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スチーム式は本体内に入れた水を沸かし、その蒸気で加湿する
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カルキなど水に含まれる不純物が本体内に残り、白い跡になることも
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気化式の三菱「ラクリアミスト SV-DK807」
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■気化式
水をフィルターに含ませて、そのフィルターに空気を当てることで水分を気化し、室内に放出させる――これが「気化式」です。原理的には洗濯物の自然乾燥と同じですが、強制的に空気を当てて、水分の気化を促進させているという点が異なります。
気化式加湿器は、ヒーターを利用せず、ファンによる送風のみで加湿が行われますので、消費電力が非常に少ないという点が大きな特徴です。
しかし、自然気化による加湿のために、スチーム式に比べると加湿能力が大きく劣ります。気化式で加湿能力を高めようとすると、加湿用フィルターやファンを大きくする必要があるので、本体も大きくなります。また、水が気化するときに気化熱を奪いますので、吹き出す風が冷たく感じたり、温度が低いと加湿能力が下がるという点も欠点です。
また、定期的な加湿フィルターの交換が必要となりコストがかかるという点も欠点のひとつです。ただし、最近では交換不要の加湿フィルターを採用する製品が増えていますので、フィルター交換に伴う手間やコストも改善されつつあります。
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「ラクリアミスト SV-DK807」は、目詰まりの心配がないディスク式のフィルターを採用しており、掃除や交換が基本的に不要
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フィルターに空気を当てるファンが大きいため、製品自体もサイズが大きいタイプが多い
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超音波式は、ペットボトルを使った加湿器でよく見られる(写真はシーシーピー「KX-60UP」 )
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■超音波式
超音波振動によって水を非常に細かな粒子にして室内に放出させる方式のものを「超音波式」と言います。
超音波式加湿器は、消費電力が比較的少ないという特徴があります。また、ヒーターやファンを必要としないため、騒音がほとんどしない、本体を小型化しやすいという点も利点です。ペットボトルを利用する小型の加湿器などは、超音波式を採用しているものがほとんどです。加えて、構造が単純なために、安価に販売される製品が多いのも特徴でしょう。
ところで、超音波式には、水だけでなく、ミネラル成分や不純物、雑菌など、水に含まれるもの全てを放出するという特徴がありますが、これは利点にも欠点にもなります。例えば、水にアロマオイルなどの芳香成分を入れておけば、加湿だけでなく室内の芳香にも活用できます。しかし、本体の手入れを怠って雑菌などが繁殖した状態で利用した場合には、その雑菌も一緒に放出されますので、衛生面で大きな問題が発生してしまいます。さらにいえば、水に含まれるミネラル成分が、家具やガラスに付着するという問題もあります。
最近では水に含まれるミネラル成分を除去したり、雑菌の繁殖を抑える機能を持つ製品も登場していますが、もし利用する場合には、雑菌が繁殖することのないように、こまめな掃除を欠かさないように注意しましょう。
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本体内の水タンクに溜まった水を、超音波で振動し、ミスト化して空気中に放出する
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超音波式は本体デザインに凝った製品も多い。写真はペンギンをかたどったデザインの「CS3-0301」(中央産業)
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煙突型の本体からミストがモクモクと湧き出るChimney3 TKM34」(イデアインターナショナル)
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無印良品のハイブリッド式加湿器「HBH-MJ500」
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■ハイブリッド式
ハイブリッド式は気化式がベースの加湿器で、一気に加湿したい場合にはヒーターで熱した温風を吹きつけ、気化を促進するという仕様になっています。
ハイブリッド式加湿器は、湿度が低い場合にはヒーターを利用して一気に加湿、湿度が高くなるとヒーターを切って低消費電力で運転――というように、部屋の湿度の状況に応じて運転モードが切り替わります。そのため、加湿能力と省エネ性を両立できるという点が大きな特徴です。
しかし、複数の方式を組み合わせるために構造が複雑となって、比較的高価な製品が多いという欠点があります。また、ベースは気化式ですので、定期的な加湿フィルターの交換が必要という欠点も存在しています。ただ、この点も気化式同様、交換不要な加湿フィルターを採用する製品が登場していますので、改善されつつあります。
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水を含んだフィルターに風を当てるという点では「気化式」と同じだが、ハイブリッド式はこれに温風を加えることで、より加湿効果を高めている
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ヒーターを使うが、吹き出し口は熱くならない
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エレクトロラックス「EHF705」は、 超音波式とヒーターを併用するという意味で「ハイブリッド式」を謳っている
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【加湿器のタイプ別の長所/短所】
タイプ名 | 利点 | 欠点 |
スチーム式 | ・加湿能力が高い ・蒸留水が放出されるので衛生的 | ・消費電力は大きめ ・吹き出し口から高温の蒸気が吹き出す ・蒸発皿に不純物が溜まるので定期的な掃除が必要 |
気化式 | ・消費電力が非常に少ない ・吹き出し口は熱くならない | ・加湿フィルターやファンの搭載で本体が大きくなりやすい ・室温が下がったり、低温下で加湿能力が低下する ・定期的な加湿フィルターの交換が必要なケースも |
超音波式 | ・消費電力は少なめ ・ファンを搭載せず動作音が静か ・吹き出し口は熱くならない ・コンパクトな製品や安価な製品が多い | ・水に含まれる不純物もいっしょに放出する ・ミネラル成分が家具やガラスなどに付着する場合がある ・内部に繁殖した雑菌もいっしょに放出される |
ハイブリッド式 | ・加湿能力と消費電力のバランスに優れる ・ヒーターを利用するが吹き出し口は熱くならない ・湿度のコントロール機能など、機能面に優れる製品が多い | ・定期的な加湿フィルターの交換が必要なケースも ・価格は高め |
【加湿器】の、ここだけは押さえたいポイント
・湿度を高めるために利用する機器。風邪や肌トラブルの予防に役立つ ・スチーム式はお湯を沸騰させ、その蒸気で空気を潤す ・気化式は水を含んだフィルターに風を当てて加湿する ・超音波式は水を超音波で振動させ、細かい粒子にして空気中に放出する ・ハイブリッド式は水を含んだフィルターに、ヒーターで熱した温風を吹き付けて加湿する
2008年10月30日 初版
■URL
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2008/10/30 00:04
平澤 寿康 1968年、香川県生まれ。1990年代前半にバイト感覚で始めたDOS/V雑誌のレビュー記事執筆を機にフリーのライターとなる。雑誌やWeb媒体を中心に、主にPC関連ハードのレビューや使いこなし、ゲーム関係の取材記事などを執筆。基本的にハード好きなので、家電もハード面から攻めているが、取材のたびに新しい製品が欲しくなるのが悩ましいところ。 |
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