● 「電化」から「健康・環境」へ
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シャープ・片山幹雄社長
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シャープは、2012年度に、健康・環境製品事業で、売上高1兆円を超える規模に引き上げる中期計画を発表した。
プラズマクラスター技術、LED照明技術、ウォーターヒート技術の3つを、「21世紀の主要技術」と位置づけ、これらを核にして、これまでの個人向け需要に留まらず、法人向け事業、海外展開を強化することで、事業拡大を目指す。
同社では、創業100周年を迎える2012年度に、「世界ナンバーワンの液晶ディスプレイで真のユビキタス社会を実現する」、「省エネ・創エネ機器を核とした環境・健康事業で世界に貢献する」を全社ビジョンに掲げており、液晶テレビ、携帯電話、ブルーレイなどを前者に、太陽電池、白物家電事業などを後者に含め、この2つの事業がそれぞれ半分ずつの売上高を占めることを目指す。
決算発表における事業分野別の呼称も、従来の「電化機器」から、「健康・環境機器」へと変更しており、また、今日付けの組織変更でも、白物事業担当部門を、「電化システム事業本部」から「健康・環境システム事業本部」へと変更。「これまでの白物の考え方から一歩踏みだし、21世紀型の事業へと転換する」(片山幹雄社長)としている。
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新製品のプラズマクラスターイオン発生機を前にする片山社長
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9月1日に都内で行なわれた会見では、片山社長が冒頭に、家電製品の現状について、次のように説明した。
「業界出荷額を見ると、1975年には業界全体の62%を占めていた家電製品が、2008年度では約29%に減少し、ここ数年は、規模そのものも減少している。これは他の先進国でも同様の動きとなっている。また、20世紀には、三種の神器といわれたように、家事を、便利、簡単、スピーディにすることが家電製品の開発ポイントとなっていた。だが、21世紀になり、化学物資による空気汚染の問題、食への不安、地球温暖化、原油高や原材料高といったエネルギー不安など、世界に様々な不安が広がってきた。そうしたなか、家電メーカーとして、健康と環境に配慮した製品を開発するのは、むしろ責務といえる」と語る。
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シャープの健康・環境テクノロジー
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シャープが健康・環境テクノロジーとする21世紀の3つの主要技術
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シャープが打ち出す健康・環境タウン構想
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片山社長は、同社が持つ独自技術を2種類に分類。健康分野として「プラズマクラスター技術」「高湿保存技術」「ウォーターヒート技術」「Ag+イオン技術」「バイオセンシング技術」「プロテインチップ技術」を、環境分野として「気流制御技術」「ソーラー応用技術」「断熱技術」「蓄電技術」「熱交換技術」「燃料電池技術」を位置づけている。さらに、双方に活用する技術として、「LED技術」を加え、「これらの技術を活用することで、街づくりレベルで、環境および健康に関する課題を解決していくことが必要。家庭や店舗、オフィス、公共施設、工業地帯などを捉えた健康・環境タウン構想にも取り組んでいきたい」などとした。
さらに、DC(直流)エコハウスの構想にも触れ、「太陽電池や燃料電池で直流発電したものを、現在の家電製品のように交流へと変換するのではなく、ロスをなくした形で利用できる家電製品が必要。シャープでは、一般家庭向けに、太陽電池とDC型省エネ家電との組み合わせによって、環境配慮型の生活を実現する提案していく」などとした。
● 21世紀の中核技術とする3つの技術
片山社長は、「21世紀の主要技術」と位置づける、プラズマクラスター技術、LED照明技術、ウォーターヒート技術についても説明した。
プラズマクラスター技術では、「半導体技術から生まれた空気浄化」とし、放電電極にプラスやマイナスの電圧をかけて、電気的に分解し、水素イオンと酸素イオンを生成。空気中に放出されたイオンは、ウイルスや細菌、カビ、ダニアレルゲンなどの有害微生物などに作用し、空気を浄化することを説明。「27種類の浮遊微生物などへの効果が、11の機関で実証されている」などと、その成果を改めて訴えた。
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シャープが提案するミニDCエコハウス
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業務用プラズマクラスターイオン発生機も新たに投入し、業務利用への展開を強化
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KIREIONブランドを新たにドラム式洗濯機に採用した
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また、これまでの空気清浄機、エアコンなどへの搭載のほか、ドラム式洗濯機、冷蔵庫、LED照明などにも搭載していく予定であることを示したほか、今後、業務用機器にも広く搭載していく姿勢を示した。
「LED照明機器では、プラズマクラスターイオンが天井から拡散しやすく、家庭だけでなく、オフィスや工場でもメリットがある。プラズマクラスターとLEDは、組み合わせた複合効果も期待でき、BtoBでの売り込みも強化していきたい」(片山社長)とした。
今後は、農業、水産分野などでの利用、医療分野での利用のほか、自動車への搭載をはじめとする異業種分野にも展開していく考えだ。
なお、エアコンに採用していた「KIREION」のブランドを、プラズマクラスター技術を搭載した製品に順次搭載していく計画を明らかにし、今回の会見で発表したドラム式洗濯機に「KIREION」ブランドを採用。今後、冷蔵庫などの一部製品を除き、「KIREION」ブランドのラインアップを広げていくことになるという。
LED照明技術については、プラズマクラスター技術同様に、「半導体技術から生まれた照明技術」とし、長寿命、省資源、環境保全、省エネなどのLED照明のメリットとともに、「チップ、デバイス、モジュールから商品まで一貫生産ができる、シャープならではの垂直統合のモノづくりの強みが生かせる」とした。
長寿命化は高所の電球取り替えを少なくできるという点で、今後の高齢化社会向けの技術であるほか、エネルギー問題にも対応できる省エネ製品であるという点も強調した。
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プラズマクラスターイオンとLEDのBtoB展開を加速
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LED照明はシャープの垂直統合のモノづくりの強みが活きる
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健康・環境事業を2012年度には4倍に拡大する
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● ヘルシオの海外展開も
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ヘルシオを海外に展開していく
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一方、ウォーターヒート技術は、ヘルシオに採用されている技術で、水で焼くという独自の方式は、細胞破壊が少ないなどのメリットがあり、これを海外市場や、別の製品にも展開していく姿勢を示した。
健康意識の高まりや、高齢化社会に向けた話題に注目が集まるものの、生活習慣病は1,900万人と増加傾向にある。また、全世界では過体重とされる人口が2006年度に16億人に達し、2015年度には23億人にまで増加すると見られている。
「米国や中国でも過体重は大きな問題となっており、ウォーターヒート技術による健康支援が可能になる」として、今後、ヘルシオを海外展開していく方針を明らかにした。
ヘルシオでは、健康調理を行なうための健康メニューを搭載しているが、これを、ロシア、中国、欧州、北米などのそれぞれの地域に適した健康メニューを新たに搭載して、海外での販売を促進していくという。
片山社長は、今回の発表で、シャープの環境・健康事業の売上高を、2007年度実績の約2,500億円から、2012年度には、4倍規模となる1兆円を超える規模を目指す方針を示した。
そのうち、新規事業におけるグローバル展開で、これら事業全体の2分の1以上を占めるとするほか、BtoBの比率を現在の10%以下から、2012年度には30%以上に引き上げる計画である。
海外向けのデバイスおよびモジュールの販売も拡大する計画で、9月1日付けで特機営業本部を新設して、同部門を通じて、法人向けビジネスおよび海外向けのBtoBビジネスの拡大を図る。2012年度には、同事業で4割程度を占めることになりそうだ。
● 2012年度に売上高6兆円を目指す
そして、今回の会見では、シャープの創業100年目の青写真の一部が明らかになったともいえる。
2012年度に、環境・健康事業で1兆円を目指す同社は、「2012年度には、同様に太陽電池事業だけで1兆円を超える規模を目指す」としており、あわせて2兆円を超える規模になる見込みだ。
だが、全社ビジョンで掲げている「世界ナンバーワンの液晶ディスプレイで真のユビキタス社会を実現する」という部分を担う事業が、現時点では売上高で2兆5,000億円規模に達しており、「省エネ・創エネ機器を核とした環境・健康事業で世界に貢献する、という事業とで半分ずつを担う」(片山社長)という点、さらに、今後の液晶事業の成長などから逆算すれば、環境・健康事業では、今回の発表以上に大きな売上高目標を目指す可能性も捨てきれない。
つまり、今回の片山社長の発言などから想定すれば、2102年度には少なくとも、6兆円以上の売上高が想定され、現在の規模の2倍近くへと、全社売上規模が拡大する計算になる。
「いよいよシャープが、環境や、健康というものに対して、発言できる立場になった。今後、優先課題としてこの事業を成長させたい」と、片山社長は語る。
「液晶のシャープ」として成長を遂げてきた同社が、「環境」、「健康」という新たな方針で、2012年度まで、どう事業をドライブするのか。
9月1日の発表によって、シャープの新たな挑戦の幕が切って落とされたといっていいだろう。
■URL
シャープ株式会社
http://www.sharp.co.jp/
ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/080901-a.html
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( 大河原 克行 )
2008/09/01 18:35
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