松下電器産業株式会社 松下ホームアプライアンス社は、滋賀県草津市の「エコアイディア工場 びわ湖」において、白物家電事業における「環境宣言」を行ない、今後、環境配慮型製品の開発を加速する考えなどを明らかにした。
松下グループは、2007年10月に「エコアイディア宣言」を発表し、企業ビジョンのひとつとして「地球環境との共存」を掲げている。一方、松下ホームアプライアンス社の本社および技術センター機能を、今年3月末に草津の生産拠点に集約。同拠点を白物家電事業の中核拠点と位置づけ、環境対応の先進的拠点として取り組むことになる。
松下ホームアプライアンス社の榎坂純二社長は、「エコアイディア工場びわ湖を中心にした、中長期的な全社活動によって、一歩先のエコを実現する」とし、グローバル企業として地球環境との共存、地域に根ざす企業として地域社会への貢献、地域に暮らす人としてエコ活動の実践を掲げるとともに、「モノづくりのエコアイディア」、「商品のエコアイディア」、「ひろげるエコアイディア」の3点に重点的に取り組みに掲げた。
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松下ホームアプライアンス社 榎坂純二社長
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「エコアイディア工場 びわ湖」のミニチュアモデル。奥には琵琶湖も見える
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「モノづくりのエコアイディア」、「商品のエコアイディア」、「ひろげるエコアイディア」の3点を、環境経営の重点として取り組む
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モノづくりのエコアイディアでは、鋳物、空圧、成形、塗装の4工程を中心に、設計や工法などのモノづくりのプロセス全体を見直し、CO2排出量を2009年度までに、2006年度比2万9,000トンを削減する。原単位では23%の削減となる。
榎坂社長は「生産数量の増加によって、CO2排出量は9万t増加するが、これを含めて、合計で2009年度までに、11万9,000トンを削減することになる。国内では排出量削減は微減とするが、海外では生産を増やしながら、CO2排出量の絶対量を減らしていくことになる」という。11万9,000トンの削減のうち、拠点の統合などで3万2,000トン、空調などの効率化で2万9,000トン、生産効率化で2万7,000トンの削減が可能と試算している。
生産効率化では、エアコン用コンプレッサーの製造において、部品加工洗浄後の乾燥方法を170度の高温乾燥から35度の低温スピン乾燥とすることで、CO2の年間排出量を106トンから4トンへと大幅に削減。冷蔵庫の組立工程では、エア式ドライバーを電動式ドライバーへと置き換えることで、26トンから1トンへと削減した。榎坂社長は「細かい積み重ねだが、これを世界の生産拠点で行なうことが大切」と述べた。
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生産活動におけるCO2削減量を、2009年度までに、2006年度比で23%減となる2万9,000トンとする
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エアコンや冷蔵庫の製造工程でも、CO2の年間排出量の削減を狙った器具を使用する
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また、商品のエコアイディアでは、独自の環境コア技術を搭載した省エネ商品を開発し、これらの商品をユーザーが使うことで、家庭内のCO2排出量削減を目指す。
「家庭での電気消費量は、1980年代から著しく増加している。また、家庭で使用される電気のうち、エアコン、冷蔵庫、電気カーペットなど、ホームアプライアンス社が担当する製品が全体の50%を占める。消費電力を削減するのは、当社の使命」(榎坂社長)。
日本省エネルギーセンターの省エネ性能カタログに掲載されているエアコン、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、温水洗浄便座の5商品については、2009年度中には省エネ性能の高い機種を倍増させるとともに、性能が低い機種を無くすという。
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エネルギーの消費量は、特に家庭で上昇が著しい
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エアコン/冷蔵庫/炊飯器/電子レンジ/温水洗浄便座については、2009年度中に省エネ性能の高い機種を倍増し、性能の低いタイプをなくしていくという
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環境性能を高めるための主な環境技術として、冷蔵庫、エアコン、ヒートポンプ給湯機器、ななめドラム洗濯乾燥機などに搭載し、エネルギーを有効に使う「ヒートポンプコア技術」、冷蔵庫、ヒートポンプ給湯機、ジャーポットなどに搭載する「断熱コア技術」、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムに搭載する「創エネコア技術」の3つをあげ、「エネルギーを有効に使う技術、エネルギーの無駄を抑える技術、エネルギーを創り出す技術という観点で、商品のエコアイディアを実現する。もし、松下の最先端環境コア技術が、日本のすべての家庭に導入されたとしたら、2013年にはCO2排出量は40%削減され、年間約6,000万トンの削減が可能になる。これは杉の木がCO2を吸収する本数に換算すると43億本にあたる。大きな目標だが、強い想いをもって取り組みたい」とした。
ひろがるエコアイディアでは、環境教育、地域コミュニケーション、環境整備、エコマインドの4つの視点から取り組む考えを示し、環境教育では、小中学生を対象に、地球環境を考え、省エネ技術の体感するエコファクトリーツアーなどを行う。地域コミュニケーションでは、地域の清掃活動への参加。社員食堂や従業員の自宅で使用したてんぷら油を回収してバイオ燃料に転換し、トラックや路線バスで活用するといった取り組みも行う。さらに、6月3日付けで、琵琶湖の水質保全と生態系維持を目的に、NPOとして「びわ湖エコアイディア倶楽部」を設立。地域との連携によって、環境問題に取り組む体制を整えた。また、環境整備では、敷地内の緑化を計画。エコマインドでは、環境家計簿やボランティア活動などを実践するという。
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ヒートポンプ・断熱・創エネの3つのコア技術を使えば、2013年には年間約6千万トンのCO2排出量削減が見込めるという
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6月3日には、琵琶湖の水質保全と生態系維持を目的とするNPO「びわ湖エコアイディア倶楽部」を設立した
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工場の敷地内の緑化も推進する
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滋賀県 嘉田由紀子知事
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6月5日午後1時30分から、エコアイディア工場 びわ湖で開催された「環境宣言」の式典には、松下ホームアプライアンス社の榎坂社長のほか、滋賀県知事の嘉田由紀子氏、草津市長の橋川渉氏、松下電器産業の中村邦夫会長が出席。嘉田知事は、「1977年に琵琶湖は赤潮の被害が出てから、環境問題には先進的に取り組んできた。それがまた、2006年から、平均気温が1.5℃上昇し、酸素が底まで届きにくいという低酸素の問題が浮上している。これは琵琶湖の深呼吸と呼ばれるもの。琵琶湖は小さな水の固まりだが、だからこそ、大きな地球環境の変化を予知できる小さな窓ともいえる。滋賀県では、2030年における温室効果ガスの排出量を、1990年比で50%削減することを目指しているが、そのためには、地域や産業界とのつながりも大切。松下電器の取り組みは、製品、製造に加え、地域との連携を掲げている。活動を琵琶湖から日本全体へ、日本全体から世界へと広げていくための崇高な一歩として期待する」と述べた。
また、草津市・橋川渉市長は、「草津市は、愛する地球のために約束する草津市条例を4月から施行し、行政、市民、企業が一体となって環境問題に取り組んでいる。滋賀県、草津市の先行的な環境への取り組みが、まちづくりの手本となって、世界に広がり、地球規模の環境活動へと広がることを期待したい」などとした。
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草津市 橋川渉市長
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松下電器産業 中村邦夫会長
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一方、松下電器産業の中村邦夫会長は、「2010年には松下電器全体で10兆円を目指すが、そのうち、ホームアプライアンス社は1兆円を目指しており、10%を占める。そのホームアプライアンス社の本社機能、技術センターを草津に集約させたことは、世界の家電ビジネスの中心として位置づけたということであり、今後、模範を示していかなくてはならない。松下電器は、ほとんどの製品で電気を使用する。この時代においては、世界中のみなさんから批判を受けないようにするだけでなく、よくやっていると誉めていただくような環境活動をしていかなくてはならない。快適な生活を実現するとともに、地球環境への配慮を両立していくことが求められている。草津が、こうした面においても中心となり、エコ宣言、エコ活動、エコ生活というように地道に取り組んでいく」とした。
また、小学生時代から高校時代まで滋賀県彦根で過ごした中村会長は、「琵琶湖の湖岸で釣りをしたり、自転車で一周したこともある。場所によって、多彩な表情を見せる琵琶湖は、私の自然観を築き上げた原風景といえる」と、琵琶湖への思いを語った。
■URL
松下電器産業株式会社
http://panasonic.co.jp/
ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn080605-2/jn080605-2.html
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( 大河原 克行 )
2008/06/06 17:04
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